第92話
「いやだ、死にたくない、誰か、誰か助けてくれぇえーーーーっ!」
黒山はそう叫びながら海を泳いで逃げようとした。
ラグネシアという巨大なレッドドラゴンの登場についに精神が破壊されてしまったのだろう。
ここは我がダンジョン島からかなり離れたところにある。
人が死ぬ気で泳いでもどこにもたどり着けはしない。
「…あの人間を消し飛ばせばいいのか?」
「いやいやその必要はありません」
登場シーンだけで黒山の心をへし折ったのでもう彼女の出番はないのだ。
もちろん黒山には海をテキトーに逃げられてもめんどくさいので逃走も封じておこう。
「なっなんだこいつらっ!?」
黒山が何かに気付き驚いた声をあげる。
奴の周りには海を泳ぐ何者かが黒山を包囲していた、彼らが海面にちょこっと顔を出す。
それはシャチのような姿をした存在だった、いつぞやのスケルトンシップを沈める時に遠目に眺めるだけだったあの精霊たちである。
ハルカに確認したところあの精霊たちの名前はマリンランサーという名前の精霊らしい、体当たりすると様々なものに風穴を開けるほど物理的な攻撃力が高いそうだ。
その上で魔法とかもポンポン使うらしいのでかなり強い精霊らしい、モフリンベアーどちらが戦ったら強いのだろうかと、そんなことを考える私だ。
マリンランサーに包囲された黒山に最早逃げ場などない。
さて最後の仕上げと行くか。
「ハルカ、アヤメ…」
「分かったわ」
「任せなさ~い!」
久しぶりに2人が黒い銃の姿へと変身し、私がそれを装備する。
その様子を黒山は驚愕した顔でみていた、更に驚く事になるがね。
何故なら私はその銃口を黒山に向けたからだ。
2人が銃に変身したのもそうだが直接銃口を向けられた事に黒山はめっちゃくちゃビビる。
「まさか……あの2人も人間じゃなかったというのか?」
「まあその通りですね」
「貴様それで本当に私を殺すというのか? 本気か!?」
それについて私は無言で答える、こう言う時の無言ってかなり怖いよね?
正直言ってここで消してしまった方が後々ことを考えると…そんな風に思わないでもないのだ。
しかしそれでも……ね。
「まずお前には身の程というものを理解してもらわなくてはって事さ……『
二つの銃口から弾丸が放たれる。
その弾丸は黒山から少し離れた場所へ 飛んで行き海面に同時に着弾。
そこに紫色に輝く魔法陣が展開され一体の巨大な龍が現れる。
その長い胴体は黒いの鎖のような形状をしていて無数の黒い刃が全身から生えていた。
そしてその頭はドラゴンのそれを思わせるが頭の先端はとにかく鋭利で巨大な刃のようになっている。
相変わらずの全身凶器な漆黒の龍が現れた。
「ほうっ仮初めの命を与えられた存在を使役するか、なかなかやるな…ヒロキ」
「お誉めに預かり光栄です、ラグネシアさん」
「ネシアで構わん」
「……分かった、ネシア」
どうやら彼女にも少しは認められたらしい、そして黒山は更に狼狽えていた。
「バカな……こんな化け物を操るというのか? お前みたいな人間が…」
「これで理解できましたか? 私たちがその気になれば、黒山…お前程度の虫けらはいつでも排除することが出来るということが」
「いっ一河広樹……貴様ーーっ!」
「もし理解できないというのなら……」
私、と言うか実際はハルカとアヤメのスキルによって召喚された黒い龍はその刃物のような頭を黒山の真横に叩きつける。
その衝撃で海面から何メートルか上空に吹っ飛ぶ黒山。
ヤツは悲鳴をあげながら海面にドボン。
そして浮かび上がると長いこと海面に浮かんでいることもあり青白くなっていた黒山の顔はさらに悪くなっていた。
するとマリンランサー達が黒山の周囲から若干の距離を取った、何故だろう。
「ヒロキさん、あの男…」
「ヒロキ君~あいつ漏らしたわ~」
「…………そうか」
黒山は失禁した。
我がダンジョンの海を汚すとは許せんと思いつつも何て情けなく哀れな男なんだという哀れみの感情も浮かんでしまった。
怒りと哀れみの感情が私の心の中で溢れそうだ、そして黒山はそんな自らの情けなさすぎる現実を受け入れられないのか白目をむいてで気絶した。
そんな私は黒山を見て一言。
「ドラグーン、とりあえず黒山が沈むそうになったらに引き上げて起こして。契約書にサインするって言うまでは助けないから」
ここら辺は厳しくに行こうと思います。
また漏らしても譲らんよ。
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