第15話
そしてなんやかんやと時間をかけて探索をしていく。ダンジョンコアであるハルカとアヤメが言うので危険はないということを信じ、わざと道から外れて森の中も入ってみたりもした。
やはり少々足場が悪く見通しも悪い、採取ポイントがあったとしても素人の自分には見つけられないと思われる。
そして少し歩いてみたらなんと生き物を発見したのである。
それは虫であった。一瞬マジかだと思ったがよく見るとそれはカナブンだった。カナブンだったらまあ私は大丈夫である。
私という人間は大抵の生き物をほぼ見かけで判断する、人であれ昆虫であれだ。例えばカブトムシやクワガタ、カナブンにテントウムシ。
こういったものはぶっちゃけ素手で触っても何も怖く感じないし気持ち悪くもない。
一方でカメムシ、 ハチ、ムカデ、ゲジゲジあとは個人的にはナナフシとかも触りたくない。
こういう連中は無理なのである。
あとはアゲハチョウとか普通に綺麗なチョウチョはいいんだけど蛾は無理だ。
以前、子供の頃見た蛾ででかくて赤い目をした顔を間近で見たことがあってマジ無理だと思った。
そんな感じでひとえに虫は苦手と言っても大したことないものからマジで無理っていうものまで幅広くあるのが自分なのである。
今回見つけたのはカナブンっぽいインセクトで、ちなみにその色はメタリックなブルーという独特でかっこいい色である。
なんとなく指先でツンツンとしてみたくなったがここは物を知っていそうなハルカに質問をしてみよう。
「ハルカ、このカナブンっぽいやつは何なんですか?」
「私もダンジョン内の生物を全てを知ってるわけではないわ、けどまあこれは特に危険はない生き物ねモンスターでもないし、このダンジョンに生まれた普通の虫ってところかしら」
ダンジョンで生まれた普通の虫。
なんか言葉的に変な感じがするけど…まあいっか。
「これも売れたりするんでしょうか?」
「ダンジョンにあるなら大抵の物には価値のつくと言ったのはヒロキさんじゃなかったかしら?」
そうっダンジョンの中の生物ならモンスター以外にも価値がつくのは珍しい事ではない。
メタリックブルーなカナブンとかちょっとかっこいいし。
問題は海外からの虫が日本に持ち込まれて異常繁殖するみたいな事例があることだ、このメタリックブルーなカナブンが実はとんでもないやつで日本の生態系を脅かすなんて可能性も決してゼロではない。
ただまあそこら辺は1匹だけダンジョンセンターに持って行って見せればどうにかなるかもしれないけど。
オスとメスの最低2匹いなきゃ繁殖なんてしないだろ。
スライムかなんかみたいに分裂しますなんてそんな馬鹿な生物とかではないと信じたい。
そして森の中を歩いてみると気づいたことがある、このカナブン以外にもバッタだとかカマキリあるいはそれに近しいような昆虫が割と目につくのだ。
そしてそれらはまあ自分の視界に入ったからと言って気分を害するタイプの昆虫ではないのだ少なくとも私にとっては。
「……もしかしてこのダンジョンに出てくる虫関係って自分の精神に影響してたりするのか?」
「影響はあると思うわ。例えばあなたが大っ嫌いで見るのもいやって虫は一切出てこなかったりだとかね」
「それはとても素晴らしいことだと思います」
見かけで判断したりとか刺されるから嫌だとか。
そういった理由で毛嫌いしてしまうのはすまないと思うけど、やっぱり嫌なもんは嫌なんだよ。
海外にいるようなやたらカラフルな感じとかめっちゃでかいゴキブリやダンゴムシとかさ……無理じゃん。
無理無理、そんなわけで私はハルカの言った言葉を都合の良いものと思いながらもそうであってほしいと受け入れることにした。
やばい虫が出ないと思ってしまえば森の中であろうとずんずん進める。
それはまるで田舎に生まれた子供の頃、一切の恐怖を感じることなく山の中を突き進んでいった頃を思い出した。
イノシシ用の罠に引っかかったりイノシシやクマの足跡を見つけてこれやばくね? とビビったりしたな。そんな過去を思い出していた。
我がダンジョンであればそんなヤバいモンスターさんなんているわけないよね。
「ヒロキ君~ヒロキ君~」
アヤメの呼ぶ声がした。何かと思い返事をする。
「どうかしたのかい?」
「これこれっ! すっごい大きな足跡があるんだけどーー!」
何ですと?
そそくさと向かってみる、見るとそには確かに地面にうっすらと残された足跡があった。
その大きさは人間の自分よりも三倍くらいでかい足跡である。
そしてその足跡の形を自分は今でもはっきりと覚えている。
この足跡……多分熊っぽいやつの足跡だと思うんだけど。
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