第2話 

 『ダンジョン』このスキルはやはりこの不思議過ぎる謎世界であるダンジョンと関係があるスキルだった。


 スキルの保有者が自分自身のダンジョンを異空間に生み出ことができ、その入り口は好きな場所に出現させたり消したりも可能なスキルというものである。


 『ダンジョン』……マジでダンジョンを生み出すことができるスキルだって言うのか。

 これはとんでもないスキルだ。


 なぜならダンジョンとは言ってしまえば金のなる木である。

 モンスターという人外の化け物がいてめっちゃくちゃ危険というのは事実だが、その危険に飛び込んで行くだけの価値のある場所だからだ。


  地球上には存在しない様々や資源、それがダンジョンには無数にある。

 更には驚くべきことにそれらを採取できるポイントというのはある一定の期間。

 それも長くてもせいぜい数日だ。

 その期間を置くと取り尽くした資源が元通りに復活してるのだ。


 しかも同じ場所に。

 つまりダンジョンとはモンスターの危険さえどうにかできれば無限に資源を得ることができる夢の楽園なのである。


 しかもこの『ダンジョン』というスキルの効果によるとそのダンジョンにどんなモンスターが出現するにしてもスキルの保有者である私に危険が及ぶ可能性はかなり低いとか。


 もう身も蓋もない話だが本当に私がモンスターに襲われないなら資源は取り放題。

 もはや私は一生働かなくても生きていける夢のスローライフが可能になるかもしれないのである。


 何ということだ。

 いろいろなものを失って色々悩んで。

 そして覚悟を決めた自分のダンジョン探索者人生。

 そのスタートラインにて自分の人生で必要なものを全て手に入れてしまったのかもしれない。


 詳しいことは実際にこのスキルを使ってみないと分かないだろう。

 だが一つだけほぼ確実なことが言える。


 それは私はこのダンジョン研修が終わった後。

 多分…探索者をやめるであろうということだ。


「ダンジョンにはゲームみたいにトラップもある、モンスター以外にも注意するべき場所があるので……」


 ダンジョン探索者として必要なことを教官が何やら言っているがそのほとんどが耳に入ってこない。


 今の私はこの『ダンジョン』というスキルの情報を少しでも得ようとスマホ操作に夢中であった。


「ちょっとそこの人…話を聞いていますか?」


 すんません貴女の話なんて欠片も耳に入ってきません。

 ぶっちゃけも帰っていいですかと言いたいの必死に堪えれてるような状態であります。


 その後約二時間かけて探索者について必要な最低限の知識を実戦形式で学んだ。

 なんか雑魚モンスターと戦わされたり武器の扱い方をレクチャーされたりした。


 本当に疲れた。

 デスクワークや営業での外回りとは使う筋肉が違いすぎて。

 明日……いや明後日には筋肉痛が来るなこれは。


 そして雑魚とは言えモンスターと無理矢理戦わせたあの教官の女性職員。

 顔は憶えたからな。

 もしも私が勝ち組になったら覚えてろよ……。まあ何もしないけど。


 だがそんなものは全てダンジョン出て三分もすれば私の脳内から消えた。


 そうっそんなくだらないことよりもこのスキルについて私は学ばなければいけないな。


「……どうやらの私の時代が来てしまったか」


 そんな頭の悪いセリフが自然と口をついて出てしまう。

 いかんいかん心躍りまくる内心を何とか隠しながら平静を添う。


 そして私は鼻唄を歌いながらダンジョンを後にした。


「……あの人、スマホでやたらとスキルとダンジョンって検索してたけど……まさかね……」


 その時の私は残念ながら気づかなかった。そんな傍から見れば明らかに変な感じになっている私を見つめる1人の人間の視線に……。

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