43 ほのぼのはまだですか?
「む、止まれ!」
「うるさいですよ!」
「ぐはぁ?!」
まったく、早く村に帰って私のほのぼの空間を取り戻したいというのに、いくら殴り飛ばしても天使が湧いてきます。
しかも、揃いも揃って必ず「止まれ!」って言うものですから、かなりイライラしてきました。
「貴様は、止まれ!」
「だからしつこいんですよ!」
「なにがっ?! ぐべぇ」
転移は出来ませんし……もういいです。全力で突破します。体を浮かせて……どーん!
天使たちを薙ぎ倒して村を囲む結界まで来ました。
「くそ……やめておけ、どうせ人間ごときに破れるようなものではなーー」
「そーい!」
「なんとぉ?!」
バリバリと音を立てて結界が崩れ落ちました。……たしかに、凄まじい強度でしたね。手が痛いです。
村の中にはかなりの量の天使がいますね。みんな戦っています。死傷者はいませんが……バレンタイン、ヤニム、マトン君が苦戦してます。
あとの戦いは……悪魔たちが無双してますね。あと子供たちも。え、子供たち? 何やってるんですか?
しかも子供たちの指揮を取ってるのアダムじゃないですか?!
「マーガレット!」
「フェン! 無事でしたか」
フェンが私の方に駆け寄ってきました。良かったです。無事でしたか。
「ファオランやシラン、シラユキは?」
「大丈夫だ。あらかたの天使は倒したし、シラユキも強い。それよりも、この天使たちはどこから?」
「王国の仕業ですよ。にしても……なんでこう平和が続かないんでしょう」
「マーガレットには力があるからな。そういうこともあるだろう」
「私はただ平和に暮らしたいだけなんですけどね……とりあえず、さっさと平和を取り戻しましょうか」
さて、村にいる天使はかなりの数になります。そして、この天使たちはおそらくですが王の願いを叶えようとしているんでしょう。
村全体を囲むようにして魔法を練り上げます。イメージは、釣りです。村人や建物は壊さないように、天使だけを釣り上げます。
むむ、抵抗が激しいですね。釣り上げられるわけにはいかないと天使たちは逃げ回っています。ですが……ここは力技です。
いきますよー。
「おりゃ!」
「「「「「「うわぁぁぁぁ?!」」」」」」
「大漁ですね!」
ほぼ全員が釣れました。そしてそのまま魔力で作った檻に突っ込んでおきます。よしよし、みんな翼がありますから見た目は鳥小屋ですね。
残ってる天使は3にんでしょうか。バレンタインと戦ってる天使、そしてカブさん、ヤニム、マトン君と戦ってる天使。そして、はるか上空で高みの見物を決め込んでいる天使と一人の人間です。
「バレンタインは……勝てそうですね。邪魔をするなと言われそうですし、泣きながら逃げてるヤニムたちのとこに行きましょうか」
「うおおおおお、誰かァァァァ」
「うふふふふ、まちなさぁい!」
カブさん、悪魔三人衆は既に眠らされていますね。残ってるのはヤニムだけです。
魔法による弾幕が敷かれていますが、ヤニムは全てを交わしています。涙で顔はぐちゃぐちゃですし、避け方もかなり無様というか……けど逃げてるのは凄いです。
たぶん、村の中で一番生存能力が高いですよ。ヤニム。
「もうダメだァァァ」
「ヤニム、よく逃げましたね」
「マーガレット様?!」
そうです、マーガレットですよ。
「なぁに、あなた? あぁ、あの人間が言っていた悪女さんね。残念だけど、私は女の子と遊ぶ趣味はないの。いくら強いと言っても、座天使に適うようなものではないでしょう。すぐに楽になるわ……《天使の子守唄》」
「マーガレット様!」
天使のはなった魔法が私に直撃します。天使はにっこりと笑みを浮かべ、ヤニムは絶望に染った顔をしています。
「……ふぁ」
あくびが出ました。
「え?」
「え?」
「え?」
3人の声が重なります。
「それだけ?」
「何がですか? あぁ、今の魔法ですか……こういう状態異常魔法は魔力の差があると効きづらいんですよね」
なので欠伸が出る程度です。そこまで眠くはなりません。
あと、魔力が大きい方からすると、逆に状態異常魔法は効きやすいんですよね。こんな風に。
「ふわ?! ……すやぁ」
「嘘だろ?! 指を鳴らすだけであの意地悪天使が寝た?!」
よし。これで残るは上空にいる天使たちだけです。行きましょうか。
あ、その前に村に情報を伝えましょう。
「ヤニム、寝てるみんなは直ぐに起きるはずなので、起きたら状況説明をお願いします」
「わ、わかりました」
ヤニムは大丈夫ですね。あとは魔法で声を大きくして……。
『マーガレットです。天使たちのほぼ全ては捕まえましたが、まだ一部残っています。残ったのは私に任せてください。みんな、よく頑張ってくれました』
一人の犠牲もなく、戦ってくれました。本当によく頑張ったと思います。それと同時に自分の不甲斐なさも強く感じますが……今は反省よりも事態への対処です。
上空へ上がると、6枚の巨大な翼を背中に生やした天使と、見覚えのある一人の男性がいました。
「久しぶりだな、聖女。貴様を追放した時以来か?」
「久しぶりですね。王」
バカ王子と同じく、プライドに染ったバカな王です。やっぱりあなたのせいでしたか。
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