33 年越し
ついに年越しの時がやってきました。
年越しといえば、美味しい食事にお酒です。ただ、年越しは静かに一年を振り返るものですから、身内を集めて各家庭でパーティを開くのが一般的です。
ノアの村も、その慣習に習ってそれぞれの家庭でパーティが開かれています。マーガレット城に住んでる悪魔たちは、小さな仲良しグループに別れてやっているらしいのでどんちゃん騒ぎではないようです。
しかし、悪魔たちは完全にこっちの世界に馴染んでますね。
私の家には、アーさん、ルールー、シルフィがいます。わりと私と同じ時間を過ごすことがおおい面子ですね。
フェンはお嫁さん探しに魔界にいってます。バレンタインはヤニムとマトン君と一緒ですね。マトン君は魔界に帰るのかと思ったのですが、ここが気に入ってくれてるのなら嬉しいですね。
「一年、お疲れ様でした。アーさん、ルールー、シルフィ」
「お疲れ様だ、マーガレット」
「お疲れ様です。マーガレット様」
「お疲れ様です」
みんな、それぞれ持ち寄ったお酒やご飯を囲んで杯を掲げます。
今日は弱めのお酒にしました。とっても美味しいやつですけどね。
「マーガレット様、我らエルフを受け入れて下さり、改めてお礼を」
「我もだ。悪魔があのようにして平和に楽しく過ごす日が来るとは思わなかった」
「ワタクシ達もです。こうしてまたマーガレット様のお傍で過ごせる日が来るなんて夢にも思わなかったですから」
みんな、真剣にお礼を言ってくれます。買いかぶりですよ。私はただみんなで楽しく平和に過ごしたいだけなんですから。
「お礼を言いたいのはこちらの方です。1人で追い出された私が、こうしてみんなと楽しく過ごせるとは思いませんでした。振り返ってみるとあっという間でしたが、来年もたくさん楽しいことをしましょう」
爆会祭は来年もやりますし、子供も増えるでしょう。もしかしたらまた住人が増えるかもしれません。
普通に過ごしてるだけでトラブルが舞い込んできますからね。
落ち着きがないといえばそうかもしれませんが、私はそんな生活が少し楽しみですね。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「みんな潰れてしまいました」
弱いお酒だからといって勢いよく飲み過ぎですよ。私が珍しくゆっくり飲んでいたというのに。
起こすのもあれですし、少し外に出ましょうか。
うぅ、寒いですね。夏が待ち遠しい感じもしますが、いざ暑くなれば冬が恋しくなるのだから不思議なものです。
どこの家も、静かになってますね。お酒飲みすぎじゃないですか?
「ふぅ……息が白いですね。フェンは元気でしょうか」
こっちの世界はこんなに寒いですが、フェンのいる魔界はどうなんでしょうか? マトン君は雪に驚いてなかったのでこちらと同じような季節があるのかもしれません。
フェンが、一人で寂しい思いをしていないことを祈ります。寂しくなったらいつでも帰ってきて欲しいものです。
「そういえば、最近王都の様子を見ていませんね」
久しぶりに見てみましょうか。王都の上空にゲートをひらきます。ん? なんか開きずらいですね……無理矢理いきますか。えい。
「開きました、あれ? なんか城の広場に兵士が集まってますね」
兵士たちの前には二人の男性と、何人かの女性がいます。何かを喋っていますね。音をもっと拾うようにしましょう。
「我々は! 魔界からのゲートを完全に阻む結界をはった! これにより王都は安全となった。いまこそ、元凶を叩くぞ!」
ゲートを対策しましたか。二人の男性の中で背が高く、かなり顔の整った男性がずっと喋ってますね。あれ、勇者じゃないですか?
もう1人は……小太りの男性ですね。つまらなそうにしています。あれ? あの人、こっちみてません? まさか認識阻害をかけたゲートを認識してるんですか?
試しに手を振ってみましょう。
目を逸らしましたね。あ、あれは気づいてる反応ですね。
「元凶は、トアル湖にいる! 行くぞぉぉぉおぉ」
「「「勇者様に勝利を!」」」
え、ここに来るんですか?!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます