32 祭りのあとはこたつでゆっくり
「もふもふですねー。フェン」
爆会祭は成功を収め、二日酔いで大量のゾンビが村に湧きましたが、みんな楽しんでくれました。
来賓として呼んだ魔王さんやラムさんもとても楽しんでくれたみたいで良かったです。2人ともこっちに家を建てて欲しいなんて冗談も言ってましたし。
……本当に冗談だったのか怪しいですけど。
何はともあれ、文官達も大きな仕事が終わり、今年の大きなイベントも残るは年越しだけになりました。
年越しが終われば、この地域ならば冬の寒さも弱まっていくはずです。
そういえば、祭が終わって変わったことがあります。それは1人住人が増えたことです。
「ヤニム! 僕を置いて逃げないでくれ!」
「ならもっと足を動かせマトン! 俺は捕まりたくないんだよぉぉぉ!」
そう、新しい住人はヤニムと一緒に子供たちから逃げているマトン君です。
マトン君は魔界でとても忙しく働いていたらしく、ラムさんとしても休暇を取らせてあげたかったようですね。
毎日のように子供たちに訓練をせがまれているのではたしてあれは休暇なのか……いや、ヤニムとも仲良くなってますし、なんだかんだで子供たちとも楽しく交流してそうなので大丈夫でしょう。
「……主。我をもふもふするのはいいのだが、1週間ほどしたら一度距離を取ってもらえるか」
な?! ……フ、フェンに嫌われてしまいました!?
突然です! ただ私はこたつでまったりしながらフェンをもふもふしていただけなのに!
「落ち着け主。そこまで絶望した顔は初めて見たぞ」
「フェンよ、今回はお前の言い方が不味かったのではないか? 落ち着けマーガレット、フェンは嫌いだから距離をとると言ってるのではない」
アーさん、それは本当ですか? 私、いま過去の自分の行動を思い出して必死にフェンに嫌われた理由を探していました。
「……我は魔狼だからだ」
え?
「フェン、絶対に伝わらんぞ。恥ずかしいのはわかるが、はっきり言わないとマーガレットは納得せん」
はい、ぜひはっきり言って欲しいです!
「魔狼にはな……発情期があるのだ」
……発情期? 発情期っていうと、あの発情期ですよね?
「無論、主を襲う気などないし、そこまで欲求が高まるわけでもない。理性で抑えれる程度だ。今までもそうしてきた」
「なら、どうして今回は私と距離をとるんです?」
「……発情期は魔狼にとって番をさがす時期でもある。我も、番を探してみようかと思ったんだ」
なるほど。お嫁さんを探したいんですね。それなのに私の匂いをつけて探しに出る訳には行かないと。
理由は分かりましたが……フェンと触れ合えない時期があるのはとても寂しいです。
「わかりました、フェン。お嫁さん探しということなら私も納得します」
「おお、ありがとう主!」
「ただ……ひとつ、忘れないで欲しいんです」
フェンが首を傾げます。かわいいですね。
ですが、これだけは言っておきたいんです。
「フェンに新しい家族ができたとしても、私は変わることなくフェンを家族だと思っています。それは忘れないで欲しいんです」
「……もちろんだとも」
良かったです、もふもふしてあげましょう。もふもふー。
「もちろん、アーさんも大切な家族ですよ。これからも、よろしくお願いします」
「家族か……不思議と心が温まる気がするな。我も、マーガレットやフェンを家族だと思っているぞ」
アーさんが珍しく素直です! 種族や年齢は大きく違いますが、心は家族です。これからも協力して、平和に仲良く暮らしましょう。
来年からも、たくさんすることがありそうですし!
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