26 娯楽
交易が始まりました。交易といっても、ラムさん個人とのものですが。
ラムさんは魔界の四天王であり、領地をもっているので個人との交易と言っても得られるものはたくさんあります。
その最たるものが今の目の前にある黄金ですね。
「すごい量ですね……そんなにビービートルの蜜が高級品だとは」
ルールーもこの量の黄金には驚いています。本当は通貨を目的にしていたのですが、魔界の通貨を貰ってもこまるのでわかりやすい資産として黄金を貰いました。
これでこのノアもお金持ちです。
「黄金は十分なので、他の物との取引を始めようと思うんですが、何がいいです?」
「「「酒! 甘い物! 美味いもの!」」」
満場一致ですね。みんな食に興味を持ちすぎでは? まぁ私もその意見に全力で賛成しますが。
「じゃあ、次はそのようにしましょう。ルールー、あとはお願いします」
「わかりました!」
よしよし、交易は順調ですね。
平和にほのぼの暮らす。その目標はだいたい達成していますが、一応はここの代表としてみんなの暮らしを良くしていかなければなりません。
養わなければならないってことです。私も、よりよい生活をしたいですから。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
さて、交易が始まってから少し時が流れて、冬も半ばというところまできました。相変わらず寒いですし、雪も積もっていますが、だいぶ慣れてきています。
子供たちは、このまえ雪合戦に負けたことが悔しかったのか更に高密度の訓練を行っています。
勿論、雪合戦で子供たちの陣地をとったヤニムも参加しています。いや、参加させられているが正しいでしょうか……。
「マーガレット様ァァァァァ助けてぇぇぇぇぇぇぇ」
死なないように祈っておきますよヤニム。祈ることは得意です、聖女ですから。
子供たちはそんな感じで元気ですね。元気すぎるくらいです。
大人たちは……冬の間は農作業が出来ないので仕事がだいぶ減っています。
真面目な人が多いので、何かしらの仕事を見つけて働いてる人が多いんですけど、それでも少し時間をもてあましています。
時間を持て余す、すばらしい生活だと思うんですけどね。この村の人達は勤勉で真面目です。
「けど、娯楽が欲しいという要望が多いですね」
悪魔たちのように個人で娯楽を見つけて楽しむという事もありますが、多分この要望を出した人達は大衆的な娯楽を求めているのでしょう。
ちなみに、私の家に要望箱というのが設置されていて、そこに定期的に匿名の要望が入っています。
「ルールーとシルフィ、アーさん、フェン、バレンタインを呼びますか。みんなで娯楽を考えましょう」
みんなを私の家に集めます。私の家はこういった少人数の会議を行うために作られた部屋がありますから、そこで行います。
テーブルはコタツにすることが可能で、お菓子や飲み物の持ち込みも大丈夫です。楽しく、落ち着いて話をできるようにしています。
「はい、今日の議題は娯楽です。なにか意見がある人いますか」
「私とバレンタインの試合はどうだ?!」
「嫌です」
バレンタイン、残念ながら却下です。
「では、悪魔たちによる料理大会はどうだ? 最近、かなり腕前が上がってきているようだ」
「それ、面白そうですね」
悪魔たちは趣味として料理をしていますから、そのおかげで腕前が上がっているのでしょう。たしか、アーさんは悪魔たちの料理勝負の審判を何度もやっているので、味が上がっているのを身近に感じているのでしょう。
今度、私も審査員に呼んでもらいましょう。美味しい料理、食べたいです!
「料理大会……良さそうですね。候補のひとつにしましょう。他にはありますか?」
「ワタクシはマーガレット様の祈祷会がよろしいかと!」
「却下です」
なんで私と一緒に祈るのが娯楽なんですか。むしろ祈りを娯楽と考えるのは不遜でしょう。
「フェンはどうです?」
「……我は、この前の雪合戦のような行事がいいと思うぞ。やはり、みんなで何かをするというのは楽しい」
フェン、いいこと言いますね。ご褒美にもふもふー。
最近もふもふをあまりしてない気がします……いや、こたつで一緒にいる時はフェンを抱いてお昼寝することもあるのですが、外ではあまり触れ合っていません。話が逸れましたね。
たしかにあの雪合戦は子供たちの成長も見れましたし、ルールがあれば種族や年齢の差を超えて楽しめます。いいかもしれませんね。
「じゃあ、爆会はどうだ?」
「「「爆会?」」」
私とルールーとシルフィの声がそろいます。魔界組はとくに疑問に思っていないようですから、向こう独自の祭りかなにかでしょうか?
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