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 アーさんの解体術のおかげで美味しい晩御飯が食べられる!


「そう思ってた時期が私にもありました」

「それはそうだろう……調味料が一切ないとは思わなかった」


 仕方ないでしょう。料理などしたことがないのですから、調味料を持って出なきゃという発想にならなかったのです。


「フェンは美味しそうですね」

「我は元々こういう肉が好きだ」

「さすがは狼ですね……にしても、冷えてきました」


 焚き火をしているとはいえ、湖からふく風が冷たいです。家が欲しいですね。


「アーさん、家作れます?」

「悪魔が住む家ってどんなものか想像つくのか? つかないだろう、そういうことだ」


 たしかに、悪魔が家を持っていてそこにのんびり暮らしている様子は想像がつきません。


「頑張ってつくるしかありませんね……とりあえず、今日のところはフェンで暖をとりましょう。フェン、大きくなってください」

「はぁ、仕方ない」


 嫌々ながらも、ちゃんと大きくなって私が寒くないようにしっぽで包んでくれるあたりフェンは優しいですね。王都にいたころにはあまり出会わなかった優しさです。


「アーさんは寒くないんですか?」

「受肉したとはいえ悪魔だからな。人間とは違うのだ」


 そうですか……では私は寝るとしましょう……。


「……寝たか」

「寝たな。して魔狼よ、この人間はなんなのだ?」

「聖女と言っていた。王国に貼ってあった結界を吸収したらしい」

「通りで凄まじい力なわけだ……にしても、あの結界はたしか神と人間の間に生まれた混血の勇者が作ったもの、聖女といえどよく解けたものだ」

「主が特別なのだ」

「む、主と認めているのか。魔狼よ」

「フェンだ。魔界の生まれならわかるだろうアーさん、力こそ全てだ」

「まぁ……そうだな。不本意だが、この人間、マーガレットは我よりも強い。それは事実だ」

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