第31話 魔界へ

俺の飛行魔法に合わせ、ミラのトランスで背中に翼を創り飛行すると、飛行速度が約2倍まで上がった。

速度を優先した為、旋回など細かい操作は出来ないが、一直線に飛行する分には問題ない。


「あっという間につきましたね。エルクとミラさんの初めての共同作業で移動時間短縮ですね」


「エルク様と共同作業…」


なんだか、ミラがモゾモゾしているが、そこは一旦置いておこう。


「おい、エルクにマロン、ここが最果ての国エンデシアだ。で、これが俺様のギルド<勇なる者>だ」


エンデシアの中央に位置する場所にギルドは構えられていた。

他の国であれば王宮がある位置である。


「本当に、この国はギルドを中心とした国家なんだな」


「まあな。元々国なんて無かったところにギルドを作り人が集まり国となったからな」


「はあ、このアホ勇者、アホなんですけど勇者なんですよね。カリスマがあるのか、何故か人が寄ってくるんですよね…」


マロンが時々、レオンの事をゴミでも見るような目で見ている。

レオンの行いは俺たちも見たが、レオンとマロンの間にはもっと深い何かがありそうだな。


「さて、では私たちはさっそく魔王討伐に向かいますね。アホ勇者、門はどこにあるんですか?」


「まったく、人の事をアホアホ言いやがって…ギルドの最北端にある深い崖の下だ。飛行魔法も使えるし、お前たちならすぐに行けるだろうさ」


「わかりました。情報には感謝します。では、私たちはそこに向かいますね」


マロンはレオンに向かい、深く頭を下げていた。

その後は、俺とミラで再度飛行魔法を使用し、レオンの言っていた崖の下まで移動し、魔界への門の前にやって来た。

門を潜ると、そこは瘴気の充満した魔界だった。

魔界に入るとすぐに、目の前に数百の魔族が現れた。

魔族を前にしても誰一人怯むことも無く堂々としている。


「まずは私ですね。対多数の為に今回臨時で参加させてもらっているのですから」


ミラが一歩前に出て杖を構える。

当然俺とリナでバフはかけた状態でだ。


「さすがに数が多いですね…では『魔法クリエイト』」


そう唱えるとミラは目をつぶり、魔法を創造する。

創造が終わったのか、目を開け魔族の方に目を向け


『サウザンドミックスレイン』


ミラがそう唱えると、数百いる魔族の上空から雷や氷塊、隕石や炎柱など、複数属性の最上級魔法が無数に降り注いでいる。

全ての魔法が降り注いだ後には蟻一匹残らないような惨劇となっていた。


「ミラ、ちょっとやりすぎなんじゃないか?」


「えっと、バフの効果がここまでとは思っていなくて…」


「これじゃあ歩いて魔王城に向かうのは難しそうだな。ほとんど足場なんて残ってないし。仕方ない、飛行魔法で向かうか」


そう言って俺たちは飛行魔法で魔王城を目指すのだった。

途中何体か魔族は現れたが、そのたびにマロンが一撃で切り伏せていた。

本来、肉弾戦の担当はレンゲのハズだが、マロンが切りたくて仕方がないようだ。

そんな事で、魔王城まで特に問題も無く進むことが出来た。

魔王城に到達すると、門の前には2体の魔族が待っていた。


「私は四天王、淫魔タルト」

「俺は四天王、吸血鬼シエン。お前たちを魔王様のと…」


四天王が話し終わるよりも早く、レンゲが2体の魔族に対し防御無視のワンパンをくらわしていた。

それにより、四天王の2体の腹には風穴が空き、一瞬にして息絶える事となっていった。


「あっ、何か言ってた?」


「いや、気にするなレンゲ。そのまま魔王のところまで向かうぞ」


そう言って、俺たちは四天王2体の骸の横を通り過ぎ、魔王のいるところを目指した。

途中の魔族はいつも通りマロンが切り捨て、すぐに魔王のいる部屋に到達したのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る