第28話 臨時メンバー追加

「おいマロン、お前達の中に広範囲攻撃を出来る奴はいるのか?」


エンデシアへ向かう途中、急にレオンが話しかけて来た。


「私は対象が限定的ですし、レンゲちゃんは拳聖なので基本的には1対1ですね。エルクも魔法は使えないので1対1ですし、リナちゃんはそもそも戦闘系では無いです。広範囲攻撃は誰も出来ませんね」


「魔界はかなり多くのモンスターが出現するぞ。最悪数百の魔族が出現する時だってある。そんな状況で一体づつ倒していくつもりか?」


「うーん、それは正直面倒ですね」


「だったら、こいつを連れて行け。これでも広範囲魔法は得意だぞ。ミラ、マロン達について行って、魔王討伐に行ってこい」


「えっ!?私ですか?こんな化け物集団に私が入って何の役にたつって言うんですか?」


「マロン達のパーティーメンバーが接近戦に偏り過ぎてるからな。お前だって英雄職。究極魔道士なんだ。戦力にはなるだろ?」


「いやいや、決闘時を思い出して下さいよ。私、おしっこ漏らしただけで何もしてないですよ」


あっ、マロンみたいに聖水ゴリ押しみたいな誤魔化ししないのね。

自分でおしっこ漏らしたとか言っちゃうのね。

ほら、マロンがあの時の事思い出して、少し紅くなっちゃったよ。


「いや、大丈夫だぞ。俺達の力があればミラは即戦力だぞ」


「エルク様、私なんか役に立つと本気で思ってます?」


ミラは緑の髪を三つ編みにし、視力が悪いのかメガネをしている。

別に美人って訳でもないが、愛嬌がある顔で非常に可愛らしい。

服装はThe魔法使い。

黒のトンガリ帽子に黒のローブ。

そんなミラが、俺の顔の目の前まで顔を近づけて聞いてくる。


「いや、近い!あと何で様付けなんだ?」


「あっ、ごめんなさい。勇者様に決闘で勝っているので、勇者様と同等以上の力があるなら様付けは当たり前です」


ミラは1歩後ろに下がって話を進める。


「それでは、再度質問です。本気で私が役に立つと思ってます?」


「ああ。英雄職なんだろ?即戦力以外ありえないだろ?」


「でも、私おしっこ漏らしただけですよ?」


「あれは仕方がないぞ。マロンだってもら…」


「エルク。私がどうかしましたか?」


あっ、マロンさんマジギレだ。

その笑顔、マジパネェっす。

あっ、俺が少し漏らしちゃったよ。


「聖女様がどうかされました?」


「いや、マロンは何でもない。レンゲは拳聖。レンゲの威嚇は物凄く強力だからしょうがない」


そんな事を言っていると、目の前にAランクモンスターが30体ほど群れで現れた。


「そうだな、即戦力かはこれで確認出来るんじゃないか?取り敢えずこの紙破って広範囲に効果のある初級魔法でも使ってくれないか?」


「一応それなりに魔力は高いですが、広範囲の初級魔法でAランクモンスターは討伐出来ませんよ?」


「まあ、取り敢えず紙破ってやってみてくれ」


「はあ?」ビリッ


『サンダーショック』


サンダーショックは通常、敵全体に電気での攻撃を与え、全体に、麻痺を与える程度の魔法だ。

Cランク以下のモンスターであれば、ミラのサンダーショックだけで討伐も出来るが、当然Aランクモンスターは少しの時間麻痺させる程度だ。

そのはずだった。

しかしミラから放たれたサンダーショックは敵全体に雷を走らせた。

雷で撃ち抜かれたAランクモンスターは、例外なく全て一撃で消滅していった。


「えっ?何ですか?今のは?」


ミラがキョトンとした目で自分の手を見る。

勇者パーティーの面々もいつもとは明らかに違う魔法の威力に驚いているようだ。


「これが、俺の力の一つ。全ての能力値を10倍に上げている」


「「「「「「10倍!?」」」」」」


あっ、うん、そう言えば10倍って異常だったね?50倍とか100倍もあるから、若干感覚がおかしくなってたかな。

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