第23話 勇者様御一行

イストルテへの道中は、全てマロン一人でモンスターを狩っていた

最初は俺やレンゲも手伝おうとしたが、その都度


「私がやりますよ」


と、いつもの満面の笑みで言ってきます。

はい、怖いです。パネェっす聖女様。


マロンは勇者からの伝達に対し、それはそれは殺意があるようで、何を聞いても詳細は話してくれない。

聞こうとしようにも、あの笑みに深掘り出来る勇気は誰にも無い。


毎日毎日、鮮血の聖女を見ながら夕食を食べ、10日後にはイストルテへ到着したのだ。

イストルに着くと、一旦王宮へ行き部屋を借り、その後は冒険者ギルドへ向かった。

冒険者ギルドに行くと受付嬢から言伝を聞いた。

どうやら俺たちより先に勇者様御一行が来ていたらしい。

それも、わざわざパーティー全員で。


それで言伝だが《俺がついたらすぐに連絡しろ。マロンは早く戻ってこい》だ。


「さてと、アホ勇者はほっといてもいいのですが、後で面倒なので、ちょっと殺りにいきますか」


「いやいや、勇者を殺っちゃ駄目だろマロン。とりあえず落ち着け」


マロンは指を鳴らしながら、殺意を秘めた笑顔で話している。

うん、勇者が絡むと聖女が壊れるね。


「じゃあ、どうします?当然今のパーティーは解散しませんし、ほっときます?」


「いや、とりあえず一回あって、戻らないって直接言えばいいんじゃないか?」


マロンは心底嫌そうな顔をして


「やっぱり会わないとダメですかね。アホ勇者の顔なんて見たくも無いんですけど…」


「後で絡まれるのも面倒だし、ここでスパッと切っておいた方が良いと思うぞ」


「…はい、しょうがないですね。じゃあ、あのアホ勇者の所に行きますか」


「場所はわかるのか?」


「ええ、王宮で聞けば宿はわかるので、一旦王宮に向かいましょう」


「ああ、そう言えば勇者と聖女の宿は国が準備するんだったな」


「はい、では行きましょうか」


マロンは終始嫌そうな顔をしながら、王宮で聞いた勇者の泊っている宿に向かった。

宿につき、呼び鈴を鳴らすと、中からは王子様風のイケメンが出てきた。

まあ、おそらくこいつが勇者なんだろうな。


「やあマロン、久しぶりだな。さあおいで、中に勇者様御一行のメンバーもいるから。準備が出来たらすぐにエンデシアに戻るぞ」


「勝手な事は言わないでください。私は今、この三人とパーティーを組んでいます。貴方のパーティーには戻りません」


「何を言ってるんだ?そんな有象無象集団とパーティーを組んで何をしたいんだ?勇者様御一行は今、俺と大賢者、究極魔導士、拳聖、竜騎士、剣王のメンバーが揃っている。聖女が戻れば英雄職が全員揃う。これなら魔王だって倒せるはずさ。だから、戻ってくるんだ」


「有象無象じゃありません。それに貴方のパーティーなんかより私たち〈ファミリエ〉の方が強いと思いますよ。なので戻る価値がありません」


「そんな奴らが俺たちより強いって?そんなバカな事あるか。どう見ても俺一人より弱いだろ」


「貴方は本当に見る目が無いですね。でしたら〈勇者様御一行〉と〈ファミリエ〉で模擬戦をして、どちらのパーティーが上か決めますか?」


「ああ構わないぞ。では負けたら素直に戻ってくるんだなマロン」


「ええ、私たちが負けることがあれば、今後貴方の言う事は何でも聞きますよ」


「ふん、じゃあこれからギルドに向かって模擬戦の会場に行こうか。今すぐでも問題ないよな?」


「私も早く終わらせたいので、今からで構いませんよ」


そう言って〈勇者様御一行〉と〈ファミリエ〉はギルドに向かい模擬戦の会場へと入っていった。

途中でマロンに「勝手に決めてごめんなさい…」と謝られたが、俺たち三人は特に気にしてない。

というか、俺も勇者が嫌いになった。

うん、マロンの嫌な顔も分かるようになったよ。


「さて、模擬戦のルールはどうする?俺一人とマロンたち全員の1対4でやるか?」


「いえ、全員対全員で構いませんよ」


「こっちは六人いるんだぞ?舐めてるのか?」


「ええ、舐めてますよ。なんなら私以外の三人はサポートで、実際に戦うのは私だけでもいいですよ」


「ふん、ふざけやがって。後悔しても知らないからな」


そう言うと、〈勇者様御一行〉と〈ファミリエ〉の熱い熱いバトルが始まった。

うん、実際は全然熱くないけどね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る