『冬支度』

やましん(テンパー)

『冬支度』


 やましんが、お買い物から、ふらふらと帰ってきたときでした。



 『にゃんさあ。にゃんさあ。さくさくさく。たたたたた。』



 『お。なんと、しろねこくん。久しぶりい〰️〰️〰️! 痩せたかな。おーい。』



 『まず。やましんだ。逃げるが勝ち。さくさくさくさく。たたたたたたたたあ。』



 『あ、にげた。食べ物持ってないし。まあ、持ってないこともないけど。おせんべいは、毒だろ。あたた、消えてしまった。』



 すると、目の前を、いや、目の下を、真っ黒な太いもしゃもしゃしたものが、路地を横切っていました。


 『もしゃもしゃし。もしゃもしゃし。もしゃもしゃし。食い物あるとこ。ひっこし、ひっこし。やましんちは、あきました。もしゃもしゃし。もしゃもしゃし。』



 『こらまた、でっかい、あやしい毛虫さんですなあ。太いなあ。こいつは、せすじひとり、くんかしら、』  


 ネットをみれば、来春には、立派な、蛾さんになるんだとか。


 『あ、まず。やましんだ。『逃げ出してきた矢先にやましんかな。』逃げろ逃げろ。もしゃもしゃし。もしゃもしゃし。』


 『逃げてるらしいな。ちっとも、早くならないや。ま、ほっとこ。』


 そこに、ご近所の方の自動車が帰ってきました。


 『む。心配しないことにしよう。』



 玄関のほとりに、久しぶりに見る、ごき少佐がいました。


 『やましんさん。年越しの御あいさつごき。本年も、お世話になりごき。寒くなったから、籠るごき。また来年。』


 『ああ、静かにお休み。』


 やましんは、買い物袋を玄関に置きました。


 むかしは、買い物かごを下げてあるくのが、普遍的風景だったのが、いつのまにか、レジ袋に占領されてしまいました。


 最近、復権してきていますが、昔より、買う量が増えたんだろなあ。


 あの、小さな容量の買い物かごで、十分だったのに。


 いつのまにか、みんな、贅沢に慣れたからなあ。


 とはいえ、完成品食糧は、たしかに、助かります。


 『あら。』


 ちらしが一枚落ちています。


 『なに。《ねこママのお店、大忘年会。早割予約20%オフ!》なんと。やるのか! そりゃ、冷蔵庫の守りを固めなきゃ。とはいえ、最近は、四次元空間を通して、中から持ってゆくから。歯が立たないや。今年は、びーちゃん、泊まらないだろな。まあ、年越しそばは、去年はカップ麺だった。ことしは、90ドリムの、格安そばかな。あれで、不味くはないし。おそばだけだけどね。』


 エアコンは暖房に切り替えて、こたつも入れたけど(万年出てるけども)、まだ、真夏のタオルケットのままだし。


 変えるべきお布団は、いまだ、準備してない。


 あきらかに、出遅れているやましんでした。


 日干ししなければなあ。



         😸


 


 

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『冬支度』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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