己が身を犠牲にして幼馴染を事故から救い、死んでしまった主人公。次に目覚めるとそこは異世界で、彼は奴隷だった。
両親を戦争で失った少年として転生した主人公はやがて、オークションに出品される。そこである人物に見初められることで、待っていたはずの悲惨な奴隷生活を回避し、甘く温かな日々が始まる…。
三人称で進む物語なのですが、会話文が多くら硬さや読みにくさのようなものが無いため、どこまでも読みやすいです。そうしてスルスルと読めてしまう本作最大の魅力は、作品全体にある“包容力”ではないでしょうか。
主人公が幼いこともあって、登場人物たちは多くが年上で、美少女揃い。そんな彼女たちが主人公を溺愛してくる。そんな甘々な日々には言いしれない包容力があって、読んでいてほっこりしてしまいます。
一方で主人公はその愛にただ甘やかされるだけではありません。きちんとそれが当たり前ではないことを自覚し、恩に感じて、応えようと努力する。幼いながら四苦八苦する姿はとても応援できます。前世の“想い人”を一途に思い続けたい。けれども精神や思考、記憶がこの世界で生きてきた少年の体と合わさっていく…。そんな苦悩もどこか人間臭くて、とても好感が持てました。
登場人物たちもみんないい奴。それでいてきちんとクセがあってキャラクター性があり、主人公に優しく接してくれる。彼ら彼女らから伝わってくる主人公への親愛こそ、先に上げた本作を包んでいる“包容力”の正体なのでしょう。
もちろんファンタジーらしく剣と魔法もありますが、序盤は特に人々との触れ合い。また、この異世界を知ることに重きが置かれています。そのおかげで世界や人々に親近感を持った状態で、ややきな臭い“これから”に興味と期待を持つことができると思います。
ストレスなく、主人公含めた登場人物たち全員の愛を感じながら読み進めることのできる温かなストーリー。転生時の意味ありげなアナウンス。自覚は無いものの周囲が認める秘められた主人公の剣才、そして、将来。
年上ヒロインたちとの甘やかな日々と共に描かれる主人公のこれからは必見。続きが楽しみです!