チーム・バチスタFINAL~ケトルベルの効用~

URABE

鉄塊が送り付けられてきた


よく「人を見る目がある」という言い方をするが、あれはほとんどの場合、何らかのヒントがある。その人のちょっとした仕草や言動がヒントとなり、そこからの応用で「こうなんじゃないか」となるからだ。


だから正確には「観察力と応用力に優れている」と言うべき。



だが僕の先輩は違う。僕からヒントを得たのではなく、僕という人間の別の一面を引き出すために、とんでもないギフトを送り付けてきたんだ。

あの人は昔からつかみどころのない変わった人だった。僕はどちらかというと可愛がってもらったから「いい人」という表現にしておくが、周囲の評価は満場一致で「変人」だったからなぁ。



そんな先輩からある日、僕の独立祝いと称して「ある物」が送られてきた。

アレが到着した時、配達員の兄ちゃんがハァハァ言いながらドアモニターに現れたから、最初は何事かと思ったよ。それからしばらくしてオフィスのインターホンが鳴り、ドアを開けると汗だくの兄ちゃんが中腰で立っていた。


「お、お届け物です。ちょっと重いんで気をつけてください!」


(炊飯器にしてはデカいし電子レンジにしては小さい。一体なにが入ってるんだ?)


配達員の兄ちゃんから段ボール箱を渡された瞬間、見た目以上のズッシリさに驚く。15キロくらいありそうだ。思わず腰が砕けそうになるがなんとか持ち直す。


――この大きさでこの重さ、本当になんだか想像がつかない。まさかボウリングのボール?!


えっちらおっちらと部屋まで運ぶと、早速開封してみた。


(なんだこのバカデカい釣り鐘は!!)


先輩は本当に変わってる。なんで僕の独立祝いに南部鉄器っぽい巨大な釣り鐘を贈ってくれたんだ。これを見ては煩悩を除け・・・ってか?オフィスは狭いし、こんな重たい鉄塊は邪魔でしかない。かといって移動させるにも俺には重たすぎる。



こうして、この使途不明な釣り鐘(?)はしばらくの間、オフィスのドアストッパーとして存在感を示すこととなった。

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