打倒聖騎士団長マルコス
「……梨花君、何故君が彼を庇うんだ?」
「彼は——ラバン君はまだ何もしてないからです」
「それは僕の
「団長の
「正義……か」
「そうです。聖騎士団は正義を執行する。それだけがモットーのはず。今の団長の行動にはそれが感じられません!」
「梨花君、残念だが——僕は正義なんて曖昧な感情で動かされるわけにはいかないんだ。僕は自分の
マルコスはその言葉と共に梨花に全力でレイピアを振る。
梨花はそれを必死にダガーで受け止めながら問う。
「じゃあ私達が信じた団長の正義と言う言葉は全て偽りだったというんですか!」
「偽りだとも。正義という言葉は使いやすくていい。それぞれにそれぞれの正義という言葉の意味を植え付けられる。例えば梨花君、君みたいにね」
「……るせない」
「何か言ったかな?」
「許せないって言ったの! 団長、いやマルコス! 貴方だけは私がここで仕留める!」
「ほう。じゃあそこの足で纏いと掛かってきなよ。纏めて相手してやる」
俺は会話の最中に詠唱していた闇属性の拘束魔法を唱える。
『闇の魔力よ 我に彼の者を拘束する鎖を!』
《
だが俺の期待とは裏腹にマルコスは捕まらない。
それどころかマルコスの周りに巻きついた黒い蔦がこちらへと跳ね返される。
俺は跳ね返された蔦をなんとか上半身を捻って切り倒す。
そして俺の魔法を見た梨花が同時に駆け出し、ダガーと大剣でマルコスを壁へと追い詰めるが、突如左手に装備された盾によって押し返されていた。
「ラバン君、足の状態は?」
「歩くことは間違いなく、出来ない。だが10分待ってくれれば戦闘をこなすところまで戻せるはずだ」
「ふーん。それがラバン君の
「その辺は後々説明する。魔法で援護するから10分稼いでくれないか?」
「むー、上官である私に命令なんて本当はダメなんだけど——いいよ。援護込みなら10分、団長相手でも稼げると思う」
梨花はそう告げ、マルコスへと突進していく。
俺は
『焔よ 我に竜の力を授け 業火で滅却せよ』
《
『風よ 彼の者に 風神の加護を』
《
攻撃魔法とバフを両方同時に発動する。
マスコスの足元と頭の上から炎を飛ばし、梨花にはスピードが上昇し体が軽くなるバフだ。
足は膝下ぐらいまでは生えてきている。
「おや、梨花さん随分と身軽に攻撃できるようになったんですね。
「さぁどうでしょう、ね!」
梨花が思いきり大剣を振り下ろす。
それと同時にマルコスの背中側で待機させていたダガーを飛ばした。
だがマルコスはそれを予期していたかのようにダガーをレイピアで落とし、盾で大剣を防ぎ切る。
俺の予想ではあの盾がマルコスのもう一つの
そもそも何もないところから盾が出現するなんて
「梨花君の攻撃はわかりやすい、それにラバン君の魔法は僕の盾を貫くにはいささか火力不足だ。それにラバン君は足がない。そろそろ2人とも諦めてくれないか?」
「諦められるわけないです……!」
「梨花君はそんなに正義の在り方が大切なのかな? 僕に誰が正義を語ろうがそれがどんな形をしていようが関係はないと思うんだけど」
「そういうことじゃない! そもそも人を正義という言葉で唆したということが問題なの! 私はそれが許せない」
「うーん。僕にはよくわからないな」
梨花が会話で時間を稼いでくれている間に俺は足が完全に復活する。
少し歩かないと同じ軌道ができるとは限らないが、一か八かやるしかない。
俺は対魔王用の魔法を詠唱する。
『光と闇の神に願う 我が剣、我が生涯 その全てを捧げ どうか彼のモノを打ち果たす力をこの剣に授けよ』
『
「なんだこの力は……。梨花君、いやラバン君か。何をした……?」
「さぁね。ただ俺も人を騙したり嵌めたりする奴のことは嫌いなんで。死んでもらおう」
梨花が後ろに退いたのを見て部屋を追い尽くすほど巨大な武器へと変化した剣を振り下ろす。
漆黒の黒と世界を照らせるほどの光が混じり合った剣はとても幻想的だ。
マルコスはレイピアを捨て盾を両手に持ち、受け止めようとする。
「うぉぉぉぉぉ!」
『落とせ』
刹那、不意に呟かれた言葉でマスコスの両手が切り落とされる。
梨花のダガーだ。
レイピアを持っている間はレイピアで弾かれるだけだったが、両手を防御に集中している、今は通る。
両手を切り落とされ、防御する手段を失ったマルコスは剣の放つ波動に飲み込まれていく。
「甘く見ていたのは僕だったか……」
こうして俺と梨花はマルコスを倒すことに成功した。
◆◆◆
「だから私も連れて行きなさいって!」
「俺は人間とは普段組まないんだ。別の人に頼めよ」
「あんなにぐちゃぐちゃにして尚且つ、マルコスを殺したのに聖騎士団に戻れるわけないでしょ! それに私は人間じゃなくて魔族の生き残りなの」
「え?」
「言ってなかったっけ?」
「聞いてない!」
こうしてエリシアに続きまた厄介な同行者を抱えることになる俺だった。
——
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