嫌いにならない古なじみ

シヨゥ

第1話

「まーた嫌われた」

 駆け込んでくるなり古なじみはそう叫んでクッションに突っ伏した。

「今度は誰に嫌われたの?」

「大学の時の後輩」

「好きだったの?」

「気がなかったら3回も2人っきりで出かけるかい」

 投げつけられたクッションが顔に当たる。

「理由はなに? もしかしたらお前がそう思っているだけかもしれないじゃないか」

「『先輩かわいいし、頑張ったんだけど、何考えているかわからなくて、それが怖くて……その……これっきりにしましょう』だってさ」

「なーる」

「分かるんかい!」

 またクッションを投げつけられた。

「お前は感情が表情に出ないからな。かといって体全体で表現するとロボットだし」

「そんな風に思っていたの?」

「取っつき難いなーとは思っていたよ」

「お前までもそんなことを思っていたのか」

 古なじみはまたクッションに突っ伏す。

「まぁ初めの頃はね。まぁ付き合いだしてちょっとしたら、表情が読めるようになって。それからは実は表情が豊かな奴なんだなと思っているよ」

「なんの慰めにもならないよ」

「まぁ安心しなよ」

「なにが?」

「嫌う奴が居たとしても、俺は嫌わないから」

「なにそれ。良い」

「良いってなんだよ。良いって。まぁなんにせよいつでも愚痴りにくればいい。俺はお前が嫌いじゃないからな」

「……あーもう! 調子が狂う!」

 古なじみが勢いよく顔を上げた。

「飲むわよ! そのために来たんだから」

「はいよー」

 好きかと問われたら分からない。ただ離れ難い半身のような存在の古なじみ。誰かとくっついたらそれはそれで悲しいのだろう。そんなことを今から考えても仕方がないことだ。とりあえず今は憂さ晴らしに付き合おうじゃないか。

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嫌いにならない古なじみ シヨゥ @Shiyoxu

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