第12話 彼女とショッピング (3日目)
僕も少し自分の話をした。どうして今の大学に来たとか家族のこととか。そんなことを話したときに、しまったと思った。彼女が思い悩まされていた1つの原因は、家族がいないことだった。どういった経緯で彼女の家族がいなくなっていしまったのか、生きてはいるのかどうかも僕は知らなかった。彼女の胸の中の傷を掘り返すようなことになってはいないだろうか。僕は彼女の顔色をうかがったが、彼女は別に何も気にしていない様子だった。
僕は彼女の抱える何かを聞くべきだろうか?今ではなくとも、もっと関係が深くなったら聞く必要に迫られるのだろうか?何かを喋ろうとするたびに、彼女の何かわからない傷を刺激しないようにするのは難しい。それに、彼女の抱える傷を理解してあげることが、僕たちの関係をより深めるのに必須な気がしていた。しかし、それを実際に彼女に聞く勇気を持ち合わせている僕でもなかった。僕はこの問題を考えるのを、とりあえず後回しにすることにした。少なくとも今聞く必要はないだろう。いつか然るべき時が来たらその時に聞こう、そう決めた。
時間はまだ12時30分だ、まだまだ今日はこれからである。休日に朝から外出するとかなり多くの場所を回ることができる、僕の体力が持つ限りは。
「この後のご予定は?」
「そっちは行きたいところはないの?」
「ん~」
僕は考え込んだ。最近服を買っていなかったので、僕は服屋を見たいと言った。僕たちは商店街に向かうことにした。この町はバスで移動するのがとても便利だ。どこに行くにもたいていバスが通っていて、市バスは料金が均一なのでどんな距離乗っても200円ちょっとである。僕たちはファミレスから近くのバス停に向かった。
バス停について5分ほどでバスが来た。後方の扉から乗り込んだが、席があまり空いていなかった。いつだけ空いていた席を見つけた。
「座りなよ」
「いいよ別に」
彼女に座るように勧めたが、彼女は座らなかった。僕たちはつり革につかまってバスに揺られた。15分ほどで商店街のバス停に着いた。バスの料金を小銭で払って降りた。
商店街は予想よりも多くの人でにぎわっていた。しばらく歩いていい感じの服屋を見つけて、僕たちはそこに入った。
僕は基本ストリート系のファッションを好む。女性があまり好きそうではない服装をよくしている。完全に自分ウケだけを目的としたファッションだが、彼女が好きそうな服装に変えようと思っていた。
「どんな感じの服装の男子が好き?」
「ん~、別に自分が着たいやつ着れば?」
「参考までにだよ」
「シンプルなやつ」
やっぱり女性はシンプルな服装がいいようだ。オーバーサイズのニットでも着ておけば間違いないだろう。僕は白と黒のニットを試着した。
「どう?」
「無難な感じ」
まあこれでいいか。僕はその2着を買った。
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