幽霊と普通の少女の話
私誰 待文
上
例えば家族とか友人、大切な人を残して爆殺されたくはない。対人関係でなくとも、資産がまだ残っているとか、パソコンのデータを消しそびれたとか、そうした即物的な欲望だとしても、
だとすれば、何者が爆弾の処理に向いているのか?
答えは、僕のような人間である。
「はぁ……」
僕のように、幽霊と呼ばれる存在が。
幽霊はすでに死の先にいる存在。ゆえに万が一失敗したとしても、
僕は今日もいつ成仏するか分からない漠然たる不安を
はずだった。
『どうしたんですか?』
僕のため息を聞きつけたらしく、どこからかやってきた少女の声が聞こえてきた。
『顔色が悪いようですが』
それはそうだろう、とツッコミたくなる気持ちを、一瞬の理性で何とか押し込めた。
どうやら彼女には僕が見えているのか。今まで幽霊として生きてきた(この表現が正しいかは分からない)中で、初めて生者に存在を
『これからお出かけですか?』
少女の真珠玉じみた
「そうだよ。いまから時限爆弾を解除しに行くんだ」
『あらそうなんですか!』
無邪気な声音だった。まるで自分が危険な場所にいくとは
『いいですねー。爆弾解除が終わった後は、何をされるんですか』
後? 僕は思わず聞き返してしまう。普通、危険な任務に
「あの、一応
先の見えない洞窟を
しかし彼女は、きょとんとした表情を浮かべた。
『えっ、幽霊ですよね? 違いますか?』
「
これで一歩前進だ、少女は僕を幽霊だと確信した上で解除後の予定を聞いている。
「あー、それで何だっけ? 後? 幽霊に先も後もないよ。人知れず爆弾をただのガラクタにしたら、また時限爆弾を探しつつ浮遊するだけ」
『
「幽霊が何して遊ぶのさ」
『美味しい食べ物を
「幽霊が何かってちゃんと知ってる?」
僕が何となく真意を
『幽霊さん。あなたって、どうやって時限爆弾を解除するんですか』
「えっと、その前にまず確認したいんだけど、君はどうして僕のことを幽霊だって思ったのかな?」
『違かったからです』
「何が?」
『今まで私が爆殺してしまった人とは、何か違うと思ったからです』
……なんだって? 今、少女は何て答えたんだ?
あまりに分かりやすく
『私、爆弾なんです』
〈続く〉
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