■『地球人ガイド』(7) 魔法と属性と魔力酔い、(8) 魔力階位と魔石純度、(9) 状態異常

(7)魔法と属性と魔力酔い


 ゲンチの魔法には九種類の属性があります。

 そのうちの八属性については「(1)魔力」にてご説明した通り、魔石を飲むことで入手が可能です。

 ただし、八属性はそれぞれ相反する属性を持ち、反対属性の魔法は同時に入手ができません。

 反対属性の魔石を飲むと、「魔力酔い」の後、体内で打ち消しあい、場合によっては既に入手している属性もろとも消滅いたします。

 「魔力酔い」については、後述いたします。



 魔石には八種類の色があり、それぞれの色がそのまま属性を表しています。


・精神属性:藍魔石を飲むか、天空父神コル様の信徒になることで入手できます。精神属性の反対属性は肉体属性です。

・肉体属性:白魔石を飲むか、大地母神コーパス様の信徒になることで入手できます。肉体属性の反対属性は精神属性です。

・風属性 :青魔石を飲むか、風の兄神ウェントゥス様の信徒になることで入手できます。風属性の反対属性は土属性です。

・土属性 :橙魔石を飲むか、土の姉神テッラ様の信徒になることで入手できます。土属性の反対属性は風属性です。

・火属性 :赤魔石を飲むか、火の弟神イグニス様の信徒になることで入手できます。火属性の反対属性は水属性です。

・水属性 :緑魔石を飲むか、水の妹神アクワ様の信徒になることで入手できます。水属性の反対属性は火属性です。

・闇属性 :紫魔石を飲むか、末の双子神、死と闇の女神テネブラエ様の信徒になることで入手できます。闇属性の反対属性は光属性です。

・光属性 :黄魔石を飲むか、末の双子神、命と光の男神ルクス様の信徒になることで入手できます。光属性の反対属性は闇属性です。


・無属性 :魔石を飲んでの入手はできません。

 前出の八属性のいずれか一つ、任意の属性エネルギーを圧縮することで無属性エネルギーを発生させることができます。

 なので、一人の人間が入手できる属性は最大四属性、使用できる属性は最大五属性ということになります。


 詳細な魔法については、次項にてより詳しく説明いたしますが、その前に一点だけ、覚えておいていただきたいことがあります。

 それは「魔力酔い」と呼ばれる現象です。



・「魔力酔い」

 魔力を持たない者が初めて魔石を飲んだとき、または既に魔力を定着させた者が自分の所持属性の反対属性の魔石を飲んだとき、「魔力酔い」が発生いたします。

 また、青・橙・赤・緑・紫・黄の魔力を既に持つ者でも、白魔石もしくは藍魔石を初めて飲む際には「魔力酔い」が発生するという報告もあがっております。


 「魔力酔い」というのは、体内にて魔力が安定していない状態です。

 症状といたしましては、魔法を使おうとしたとき何らかの「状態異常」が発生し、それとは別に魔法使用後しばらくの間、飲んだ「魔石純度」に等しい「呪詛」が発動します。

 この「魔力酔い」由来の「状態異常」からは、魔法もしくは一定時間経過にて回復が可能ですが、「魔力酔い」が解消しないうちは魔法を使用しようとする毎に常に同じ「状態異常」が発生するようになってしまいます。

 また、通常の「呪詛」は対象能力を使用したときに効果が現れますが、「魔力酔い」由来の「呪詛」は魔法使用後、しばらくの間効果を発揮します。


 「魔力酔い」の解消方法は二通りが知られています。

 一つは、「魔力酔い」のきっかけになった属性と反対属性の魔石をさらに飲むことです。

 もう一つは、「魔力酔い」のきっかけになった属性、もしくはその反対属性を司る神様の神殿を訪れ、お布施を収めることです。






(8)魔力階位と魔石純度


 無属性以外の魔力を持つ者は誰しも「魔力階位」が自動設定されます。

 「魔力階位」とは、どれくらいの強さ・種類の魔法を使用できるか、というランク付けのようなものです。

 「魔力階位」が高いほど、使用できる魔法の数も増えますし、魔法の効果を強化することもできます。


 また「魔力階位」が高いほど、死亡時に浮き上がる魔石の「魔石純度」が濃くなります。

 「魔石純度」の濃い魔石ほど、飲んだときに得られる魔力量が増え、場合によっては「魔力階位」を上昇させます。

 ちなみに対応する魔石の存在しない無属性には「魔力階位」も存在しません。


 それぞれの「魔力階位」にて使用できる魔法の説明をする前に、基本的な用語の説明をさせてください。


・効果距離

 初期効果距離は0、つまり接触です。

 精神を1点余計に消費することでおよそ4メートル程度射程を伸ばせます。


・効果時間

 魔法は発動後、瞬間的に存在します。

 ただし、もともと効果時間がある魔法については、統計上「魔力階位」分が効果時間だと言われています。

 効果時間がある魔法のみ、精神を1点余計に消費することでおよそ四分間程度、効果時間を延長できます。


・魔法抵抗

 魔法効果を誰か・何かに付与したい場合、付与対象がそれを望まなければ、せっかく発動した魔法であっても、付与できずに霧散する恐れがあります。

 この他者の魔法に対する防御意識を「魔法抵抗」と呼びます。

 魔法を付与する側は「知力」と「魅力」とが高いほど魔法の付与確率が上がり、抵抗する側は「知覚」と「幸運」とが高いほど「魔法抵抗」の成功確率が上がると言われています。



● 「魔力階位1」

 「魔力階位1」を入手した者は、以下の魔法を発動することができるようになります。

 また、所持属性と同属性の魔法被ダメージについて、1点軽減されるようになります。


・<属性生成>

効果時間:あり

 精神を1点消費して「属性体」と呼ばれる1ダイス相当の属性エネルギーを生成します。

 「属性体」は、効果時間が経過した後、霧散します。効果時間経過前に生成した「属性体」を消滅させることも可能です。

 「属性体」を攻撃に用いた場合、命中させた対象に1ダイス相当の肉体ダメージを与え、その時点で消滅します。

 「属性体」で身を包み防御に用いた場合、被弾した魔法ダメージを1ダイス相当防ぎ、その時点で消滅します。

 「属性体」は、同じ属性の魔力を持つ者に対し、1ダイス相当の「加護」と同じ効果を付与できます。


 「属性体」を防御や「加護」として使用する場合でも、対象がそれを望まない場合、「魔法抵抗」される恐れがあるので注意してください。



※ 魔法の発動方法

 『<魔法>、魔法効果と消費精神値の選択(攻撃・防御・加護)、距離や効果時間を延伸する場合はその内容と追加消費精神値の選択』を強く念じながら、一呼吸で唱える必要があります。

 この唱える内容ですが、決まった呪文はありません。自分のタイミングで自分が集中できる使いやすい言葉を選んでください。

 また、その言葉ですが、慣れてきたら心の中で唱えても効果は変わらないようです。

 ただし仲間に魔法をかける場合は、緊急時を除き発声するのがマナーとされています。


例)<属性生成>で筋力に加護を与える

<属性生成>加護1筋力ナシナシハルク1

<属性生成>加護2筋力ナシナシハルク2

<属性生成>加護1筋力時間延長1ハルク1T1

 魔法効果まではイメージしやすく短い単語でまとめ、消費精神値は単語とは切り離して組み合わせる方法が使いやすいと言われています。

 自分にイメージしやすいものであればハルクでもポパイでもスーパーサイヤでも何でも構いません。

 また、距離=RANGEの頭文字R、時間=TIMEの頭文字T、のように短い記号で付け足す方法もよくお見かけします。



● 「魔力階位2」

 「魔力階位2」を入手した者は、以下の魔法を発動することができるようになります。

 また、所持属性と同属性の魔法被ダメージについて、各属性の「魔力階位」点軽減されるように変わります(魔力階位1と魔力階位2についてその被ダメージ軽減は累積されません)。


・<属性強化>

効果時間:対象外

 <属性生成>発動時に、精神を2点消費し、2ダイス相当の属性エネルギーを生成できるようになります。

 生成した2ダイス相当のうち、1ダイス分を効果距離や効果時間の拡張に使用することも可能です。

 以降、「魔力階位」が上昇する毎に、消費精神量と、作成ダイス量とをあわせて増やすことが可能です。


・<無属性生成>

効果時間:あり

 精神を2消費して「無属性体」と呼ばれる1ダイス相当の無属性エネルギーを生成します。

 「無属性体」は、命中させた相手の肉体負傷を1ダイス相当回復することができます。

 「無属性体」は、命中させた対象に対し、1ダイス相当の「呪詛」と同じ効果を付与できます。


 「属性体」を回復や「呪詛」として使用する場合でも、対象がそれを望まない場合、「魔法抵抗」される恐れがあるので注意してください。



● 「魔力階位3」

 「魔力階位3」を入手した者は、以下の魔法を発動することができるようになります。

 以降の階位では特に記述しませんが、属性被ダメージの「魔力階位」点軽減はずっと効果を発揮します。


・<属性親和>

効果時間:対象外

 同じ属性の魔法に限り、自分の「魔力階位」より低い「魔力階位」の魔法を発動する際、消費した精神量に対し1点分余分に属性エネルギーを生成できるようになります。


・<無属性強化>

効果時間:対象外

 <無属性生成>発動時に、精神を4消費し、2ダイス相当の属性エネルギーを生成できるようになります。

 本来、精神を4消費する魔法は「魔力階位4」にならないと使用できないのですが、<無属性生成>が「魔力階位2」の魔法であるために<属性親和>の対象となり、精神3消費+余分発生の1点で、精神4消費相当の魔法として発動できるのです。

 生成した2ダイス相当のうち、1ダイス分を効果距離や効果時間の拡張に使用することも可能です。

 以降、「魔力階位」が上昇する毎に、消費精神量:作成ダイス量の比が2:1になるように、あわせて増やすことが可能です。


・<複合属性>

 複数の属性を入手されている方のみ使用可能です。

 本来、魔法は自らの「魔力階位」より高い階位の魔法は使うことができません。

 「魔力階位」3の者が一度に発生させることができる属性エネルギーは3ダイス。<属性親和>の効果を含めても4ダイスとなります。

 しかし<複合属性>を用いた場合、自分の所有する別属性のエネルギーを追加することができます。

 極端な話、四属性について「魔力階位3」であった場合、一度に16ダイス分の魔法効果を発生させることができます。


 <複合属性>にはもう一つ、メリットがあります。

 それには、反対属性が魔法衝突時に生じさせる効果について学ぶ必要があります。



※ 「対突ついとつ

 反対属性の属性エネルギーが魔法として触れ合った場合、互いの属性エネルギーを喰らい合うかのように消滅します。

 この消滅を「対突」と呼んでいます。

 前項にて「魔力酔い」について触れましたが、体内の場合、この「対突」と、魔石が生物体内に定着しようとする力とが悪い意味で拮抗し、「呪詛」的に体内に留まり続けている状態だと言われています。

 「対突」時の特筆すべき点としましては、「対突」している両属性の属性エネルギーが急速に失われるという現象です。

 反対属性1ダイス同士が「対突」した場合、そこには「対突」分の倍近いマイナス属性エネルギーが瞬間的に発生します。

 このマイナス属性エネルギーは、属性エネルギーに対してのみ効果を及ぼすものであり、生命体の中にある「魔力階位」には影響を及ぼしません。


 この効果は、魔法により作られた一時的な防御力や「加護」を無効化するためによく用いられます。

 例えば、3ダイス分の属性エネルギーを持つ防御力は、1ダイス分の反対属性エネルギーで無効化できます。3ダイスのうち1ダイス分が打ち消し合い、そこで発生した「対突」効果が、残る2ダイス分を打ち消すからです。

 6ダイス分の属性エネルギー防御でも、2ダイス分の反対属性エネルギーで無効化できます。

 魔法発動に要する精神消費量の差を考えると、防御側はとてつもなく不利ですよね。

 ですから、「対突」対策で<複合属性>が使用されることが多いようです。「対突」が打ち消すのはあくまでも反対属性効果のみだからです。



 「魔力階位」にはまだ4、5、6、7と上がございますが、この地球人ガイドはあくまでもゲンチ初心者のために作成されたガイドであるため、魔法の説明はこのへんで終了させていただきます。

 「魔力階位4」以上について詳しくお知りになりたい方は、地球人ギルドにて定期的に行われている『魔法講習会(中級編)』へご加入ください。

 魔力階位を上げる方法についても、そちらでご案内させていただきます。

 なお、『魔法講習会』は完全予約制となっており、また一定人数の加入が確定してからの開催となりますことをどうかご理解ください。


 また、以上の説明は、あくまでも『魔石を飲んで魔力を得た人間が使えるようになる魔法』に終始しております。

 もともと魔力を持つ存在はそれぞれ「魔力階位」を有し、大抵はその生物特有の魔法を所持しています。

 魔法の使用には細心の注意と、『相手にも使われるかもしれない』という緊張感、そして常に『自分の知識がすべてではない』という冷静な判断力を持って接してください。






(9)状態異常


 状態異常とは文字通り、通常ではない状態になることです。

 魔力により生じた状態異常は、「魔力身分証」の登録名の横に表示されます。

 状態異常には、精神系・肉体系と二種類があり、それぞれ藍魔法・白魔法の高「魔力階位」の治療魔法により、回復することが可能です。

 また「魔力酔い」や「魔王」に起因しない状態異常であれば、時間経過により自然回復します。



● メジャーな精神系状態異常

・睡眠:強力な睡魔に襲われ、眠り続けます。この状態異常の者は食事や薬の経口摂取が不能であるのでご注意ください。

・恐怖:特定のものに対し異常なまでの恐怖を覚えます。恐怖の対象を近づけようとする者には襲いかかるほどの状態です。

・混乱:無意識のうちに、本人が望んでいない行動を取ってしまいます。よく報告があるのは戦闘中に攻撃と回復を間違えることです。

・狂気:破壊衝動にかられ、周囲全てに攻撃します。攻撃優先順位はまず動くもの、次に自分に似た形状のもの、と言われています。

・魅了:対象に夢中になり、その対象を「最も大事な愛する相手」のように錯覚し、その仲を裂こうとする者に対し害意を覚えます。

・忘却:対象について、過去の記憶が封じられた状態です。対象についてのみ、現在新たに得た情報・交流も時間経過と共に新たに封じられ続けます。

・禁視/禁聴/禁嗅/禁味/禁触:知覚機能の一部が脳へ情報として届いていない状態です。肉体状態異常でないため、特定対象についてのみ情報が遮断される場合もあるようです。

・集中:肉体的な能力に制限をかける代わりに精神的な能力を高めた状態です。


※統計的に、恐怖や魅了の対象になるものは「魔力酔い」では『最初の発動前に特に強く意識していたもの』である場合が多いようです。



● メジャーな肉体系精神異常

・麻痺:肉体が麻痺し、思うように動かせなくなった状態です。

・有毒:肉体へ定期的にダメージを与える毒が体内に入り込んだ状態です。

・掻痒:全身が苦しいくらいに痒くてたまらない状態です。

・泄意:我慢できない尿意や便意が腹痛とともに訪れている状態です。

・淫猥:肉欲的な性愛衝動にかられた状態です。

・酩酊:酷く酔っ払った状態です。

・悶絶:一時的に一切の行動が取れなくなった状態です。

・暴走:精神的な能力に制限をかける代わりに肉体的な能力を高めた状態です。



※ 状態異常の解除薬については、以下での入手も可能です。

・精神系状態異常:天空父神コル様の神殿

・肉体系精神異常:大地母神コーパス様の神殿

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