男湯で交流を深める(意味浅)
初日は移動とクラス単位での観光?みたいなものであっさりと終わった。
俺たちの学校は京都駅からそれ程離れていないホテルに宿泊する。ホテルというより旅館だな。
結局、サクライと話せたのは行きの新幹線の中だけであったが、こうして少し親しげに呼べるようになっただけでも大きな前身である。人類にとって。
部屋は割と大部屋で、実はクロキとも同室になってはいるが、いつものメンツもいるので余り話せてはいない。
夕食も終わり、順次入浴するよう御達しが発せられた。大浴場のようだ。
「クロキ、いま暇?風呂いこうや」
ダメ元で誘ってみたが意外に快諾してくれた。
大浴場と言いながら露天風呂もついていて、自然の中に居る風に造られてはいたが、都会の中にあることもあって、結構良いものだった。フゼイがあるな。
身長こそあまり低くないものの、身体の線は細く、肌も白い。運動部の自分とは結構違うもんだと思う。…お湯に浸かりながら考えることではなかった。
「イケダくんは…どういう成り行きで」
と、クロキはそこで止まってしまったが、"どういう成り行きで班員に選ばれたのか"ということだろうか。
「…アスカとは、あ、コンノのことな。アイツとはクラスで元々仲良かったし、サクライとは委員会が一緒だから。」「それで誘われたんじゃないか?」
一部事実を隠してはいるが、嘘ではないのでいいだろう。
クロキも「成る程」、と納得しているようである。
「俺は逆に聞きたいんだけど、何でアスカがお前とサクライを誘ったん?」「席が隣ってだけだし、サクライに関しては接点ゼロだったろ」
少々卑怯だとは思いつつ、探りを入れてみる。
「や、俺もそれはよくわからんくて…。折角の旅行だし、今までとは違ったタイプと絡みたかったのかな」
二人みたいに明るいタイプでもないし、ともっともらしい理由を話しながらも、クロキのポーカーフェイスが若干動揺している様子を俺は見逃さなかった。
毎日サクライのポーカーフェイスを(盗み)観て鍛錬している俺を舐めるんじゃない。
「アスカ、お前のこと結構気に入ってるのかもな」
「どうだろ…、暇つぶしに相手されてるだけな気もする」
「んな事はないと思う。アイツ見た目は軽そうだけど良いやつだから、"人間的"に」
"そういえば"協定を結んでいたことを思い出し、サラッと推してやった。
しかし、アスカへの話題は淡々とこなしていく辺り、やはりサクライへの関心が強いと見て取れる。
「でもクロキとサクライは初対面だし、気を遣っちゃうよな」「俺は"同じ委員会だから"分かるけど、サクライもあんまり話してくれるタイプじゃないからさ。」
でもめっちや良い子だけどな!
「でも、表立ってないだけでホントは凄く優しい感じするけどな」 「えっ」
「なんとなく、直感でだけど!新幹線のときなんか」
「あー、わかるわ!アスカみたいに直接的に優しいのも良いけど、そこはかとないのも良いよな!寧ろそこがグッとくるというか」
少し焦ってフォローを入れるクロキを差し置いて、熱いレビューを差し込んでしまった。
「グッとくるかはわからんけど、UNOの時もさ」
「あぁー、確かに!それは俺も思ってた」
同じ好きな物や好きな事を語り合うのは楽しいものだ。気になる女子のことなら尚更だ。
「実はサクライのこと良いなって思ってんだよ」と口走りたい思いを堪えて、サクライ談議に華を咲かせた。
クロキ、やるやん。
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