第12話 お弁当
夏コン前に行われる、休みの日の練習はお昼も挟むため、お弁当持ちである
朝は8時に集まり、夕方の18時頃に解散で、その後はグループになってだべりながら帰るのがいつものことだった
その日はコンクール会場により近い環境下での練習をするために、大体育館にて練習をしていた
とはいえ、基礎練から始まり、パート練習、グループ練習、全体練習、とやることはたくさんあるため、基本的に忙しかった
パーカスの悪いところは、口を使わないから味がついている飲み物を自由に飲めるところだと、仁先輩を見て思った
くま先輩もなみ先輩も周りに気を遣って、水ではないにしろお茶を飲んでいた
仁先輩は、水と称してポカリスエットをごりごり飲んでいた
それを知っている2年の先輩方は仁先輩に嫌味を言っていた
愛のある嫌味で、誰も傷つかない
お昼ご飯を食べる段階になり、何故かサックスパートがパーカスのところに来た
「なみちゃん、くまちゃん、一緒に食べていい?」
3年のバリサクイケメン女子の小久保先輩だ
菅井先輩と王子先輩、奈良先輩も一緒で、
私はいっぱいの先輩とお弁当を食べられることに喜びを感じていた
無言で隣に座ったのは、奈良先輩だった
左は仁先輩、右は奈良先輩
見るからになにかの夢小説かのようで、仁先輩に恋をしている先輩からの目が怖かった
「ん?」
奈良先輩が私の方を向いて、疑問を投げた
私は無意識のうちに奈良先輩の方へずれて座っていた
仁先輩に恋する先輩達の目は落ち着き、私はほっとした
私は周りにばれたくなかったこともあり、学生手帳にメモ書きで奈良先輩に伝えた
「(仁先輩の隣に座ってたら、女の先輩に悪いから奈良先輩の方に寄りました。嫌なら避けてください。ごめんなさい…(´;ω;`))」
女の子らしさを出したかった私は、顔文字も付け足して見せた
奈良先輩は全てを察してくれて、何も言わずにそのままでいてくれた
むしろ、奈良先輩が胡座に姿勢を変えたことでより近くなった気もした
せっかく母のお弁当を楽しもうとわくわくしていたけれど、少し味がしなかった
膝と膝が少し当たってる状態で、お互いにそのことに対して何も触れずにご飯を食べるのだ
意識しているのは私だけのようで、ぼーっとしていた
「なぎちゃ、どうしたん?」
箸が止まっていたことを指摘されて、慌てて手を動かした
隣にいる奈良先輩は微笑んでいた
ささやかな幸せを味わえるこの時間が、終わるのあっという間だった
帰り道は夏でも19時を超えていたことから暗かった
奈良先輩は少しゆっくりなペースで私を自宅まで送ってくれた
「じゃあ、またね」
「おつかれさまでした!ありがとうございました!!」
好きとかじゃないけど、一緒にいたい
なんか変なの、奈良先輩のこと見れないや
お風呂の中で1人反省会をした
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます