隣の席の彼女は不眠症で、今夜にでも僕を食べたい
ヒロウミ
《プロローグ》 高岡乃慧琉は眠れない
高岡さんの大きな胸が、僕の腹の辺りをかすめる。高岡さんの細い指が僕の肩を強く掴む。高岡さんの柔らかい唇がつぅと僕の首筋を這う。
僕は自分の下半身が強烈なまでの高熱を帯びていることに気付いて慌てた。
「た、た………高岡さん…」
誰もいない夕暮れの教室で、まるでテディベアのごとく椅子に座らされた僕の上に跨る彼女。思わず彼女の名前を呼んだが、目を細めた高岡さんは「ダメ」と僕を一喝した。
「
高いけど落ち着きのある、とても同い年の女の子とは思えない程の艶かしい声が鼓膜を揺すぶる。
「の……乃慧琉さん、これは、」
「黙ってじっとしてて」
「いや、でも……!」
「いいから」
有無を言わせない彼女の整った鼻筋が、僕の鎖骨の辺りで止まる。すぅと息を吸うような音が聞こえて、僕はぞわりと背筋を震わせた。
「一ノ瀬くんって、何でこんなにいい匂いがするんだろう」
そう呟いた彼女は僕の胸に顔を埋めたまま、静かな寝息を立て始める。鼻腔をくすぐるのは、彼女から漂う石鹸とバニラが混ざったみたいな甘い香り。
「…………………」
グラウンドから部活を行う生徒達の元気な声が聞こえる。僕は高岡さんや、これを見た他の誰かへ変な誤解を与えないように、彼女に一切触る事なく白旗を振るみたいに両手を広げて時間が経つのを待った。
どうしてこんなことに…。
宙を仰いだ僕は今にもはち切れそうな心臓と下半身を落ち着かせようと、天井の模様を凝視したまま考えていた。
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