【episode2-愛しき傷跡】


魁人かいとの身体には、大きな傷がある。



沙楽さらと初めて出会った夏祭りの少し前に自動車事故にあったのだ。





鉄の塊は、幼く華奢だった魁人かいとの身体と心に無数の傷跡を残したのである。



痛みを抱えながら生きている彼と初めて結ばれた日に、沙楽は『傷さえ愛おしい。全部が好き。』だと感じた。





魁人と沙楽は互いの心と体を夢中で求め合い、生涯に渡って共にいることを願った。



そして、『この先、何があっても私がこの人の還る場所でありたい。』沙楽は、そんな風に思っていた。 




だが、幼く激しい恋は、夏の訪れとともに呆気なく宇宙に散り、程なくして互いの隣に別の影がある人生を進み始めたのである。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る