第1話 こんにちは
「君には本当に失望したよ、素直に私の花嫁になればこんなことにならずにすんだというのに」
男は馬の後ろに積んでいた荷物を洞窟に投げ入れた。
「くっ!離せ!」
袋の紐がほどけなかから金髪の女性が現れた。
「まったくアリューンよ君は頑固者だな…さぁ君は今からどうなると思う?」
「…」
「スライムの苗床になるのだよ…ふふふここにはスライムが生息していてな騎士でない君でも知っているだろ?」
「!」
「スライムは人間の女性を苗床に繁殖する」
「お前!」
「ハハハ!さて僕は帰らせてもらう、さようなら愛しのアリューン」
男は馬で足早に去っていった。
「ドリュズ!!!」
アリューンは男の名を叫んだ、しかし山びこのように虚しく響くだけだった。
「私はこのままスライムの苗床にされてしまうのか…」
悲しさに暮れていると。
ズル…ズル…と水を含んだ物を引きずる音が聞こえてきた。
「!」
アリューンは息を飲んだ、逃げようとするが縄が手足を縛り身動き一つできない。
「いやぁ…来ないで…」
アリューンは涙を流し抗おうとするが虚しい。
「ん?どうしたん、あんさん」
「へ?」
スライムがアリューンに対し『言葉』をかけてきた。
「そんな怯えんでも、
「…」
「?どないしたん?」
「しゃ、しゃべるスライム…」
「おう、私はしゃべるスライムや」
「私を苗床に…繁殖しようと…」
「んなことせんわ、私は一人で細々と過ごしたいんや」
「じゃあ…なぜ私に声を?」
「ん?えらい泣き声が聞こえてきたから見にきたんや…あららあんさん怪我しとるやんか」
「あっ」
アリューンは膝に擦りむいたかのような怪我をしていた、おそらく投げられた時についたのだろう。
「ほら、見してみ」
「はい」
「よっこらせと」
「ひぁ!?」
(つ、冷たい!)
「えらい可愛い声出すなぁ」
「あぅ」
(どんどん傷が癒えていく…)
「よっこらせと、どや?治ったか?」
「え、えぇありがとう」
「どういたしまして、そんで?どないすんねん?」
「え?」
「ん?これからどうすんの?帰るんか?」
「…帰る場所なんて無い」
ズルズルとアリューンの横にスライムが寄り添ってきた。
「どないしたんや」
「…私一国の皇女なの」
「凄い偉いさんやんか、そんで?」
「…婚約を破棄したの」
「ほうほう」
「…そうしたら」
「そうしたら?」
「…国外追放されて、さらに婚約者に見つかって」
「婚約者ってあの男か?」
「そう、彼にこの洞窟に捨てられて今に至るの」
「大変やったなぁ」
「…私どうしたらいいの」
アリューンは溢れ出した涙を拭っていた。
「よし!私が一肌脱いだろ!」
「へ?」
「その国に出向いて…」
「…出向いて?」
「カチコミや!」
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