第6話 魔王は上司の鏡です
「まずはだ。ユーナが行くであろうダンジョン、迷宮、神殿、などなどのモンスターを駆逐する。一匹残らず殲滅するのだ。もちろん始まりの街周辺のスライムも当然、例外ではない」
「な、なるほど……。勇者に経験値を与えない、たしかに理にかなってるアイデアですが……し、しかし魔王様。伝説級のモンスターや神獣、聖獣なども我らで討伐するとなると……少々骨が折れるのでは……」
エツィーは不安げな顔つきをする……が、私の真剣な表情を見て、彼は押し黙る。
私は魔王として、言い訳する者は嫌いだ。
私だって挑戦しようと思うし、ダメなら違う策を考えるさ。何も、お前たちに全てを任せるつもりはないのだ。
まずはやってみる、それだけだ。
それに、私はお前たち部下を危険な目に合わせるつもりは微塵もないのだ。
……さっき四天王一人をぬっころしておいて、私が言うのもなんだけど。
と、なんやかんや私が渾身の想いを並べると、エツィーは涙を浮かべ、感激に打ち震えていた。
エツィーはこぼれそうになる涙を拭い、私に向かって言う。
「くぅっ……そこまで我らのことを……。なんと部下想い、思慮深く慈愛に満ちておられるのか……! このエツィー、目が覚めましたッッ! 魔王様が決めたことを尊重し、付き従うのが我ら魔王軍というもの……御意にッッ」
ふふふ……私の言うことを素直に聞いてくれる部下……エツィーは四天王最弱だけど、なんかチョロいとこ……じゃなくて、真面目なところが憎めないヤツだ。
ゴリラっぽいとこは苦手だけども。
しかし、魔王軍は変なヤツらばかりだけど、まとも? な部下っていいなぁ~……
そんなことを考えていたその時だ。
「まおぅさまぁあああああああ!」
バターン! と玉座の間の扉が開く。
漆黒のスーツを着た、さっき消し飛ばしたはずの四天王、ノゾッキー・トサッツーが入ってきた。
「きさまなぜ生きて……んげっ」
ノゾッキーが私の足にしがみつく。そして目を潤ませ訴えかけるように、縋るように言った。
「魔王様! なぜ!? なぜセッシャを燃やしたりするんです!? セッシャは魔王様のために勇者の行動を見張ろうと考えた次第でして! どうしてなんですッ」
「いや、それはお前がユーナの裸がドキドキとか変態なこと吐かしたからじゃん」
「違いますぞ! 魔王様、誤解です! なぜならセッシャが勇者を盗撮することでですね!」
「盗撮……だと……?」
「セッシャとしては魔王様が寂しい夜を一人でお慰みになるためのオカズを調達できると思いまして! それにですね!」
「寂しい……だと……? オカズ……だと……!?」
「動画や画像がバズれば魔王軍の資金もより潤沢になるとおもうんです! なんせ神託の勇者ユーナ、彼女はセッシャとしても、ドキドキするほど可愛らしいと思います! その美しい裸、ぜひぜひシェアしたいですし魔王様ばっかりずるいずるぅい!」
このやろう。
今度こそ闇に葬り去ってやる。
ノゾッキーは、たぶん四天王の中でいちばんダメなヤツだ。
しかも私のためとか言ってたけど、後半全て自分の欲望じゃないか。欲望まるだしじゃないか。
万死に値するわ。
「ですからお願いです魔王様! セッシャめに勇者監視、調査を命じてください! 必ずや魔王様の日々の寂しさを満たすオカズを手に入れてご覧にいれますッ」
「いや……お前……!」
……エキサイティングに欲望を口にするノゾッキーに向けて、私は片手に魔力を集中させて。
「一片のカケラも残すことなく、燃え尽きろ!
「ぐぎゃあああああああッ」
私はノゾッキーを睨みつけながら、煉獄の炎を放つ。
変態四天王の断末魔の叫びが玉座の間に反響していた。
どうしてなんだ。
こんなどーしよーもない変態が四天王だなんて……。
他の者たちも、まぁまぁ濃いヤツらだし……こいつら管理しながらやっていけるのか、私ちょっと自信ないよ。
はぁ。と、ため息をひとつ吐く。
しかしすぐに気持ちを切り替え、私は愛するユーナのことを想う。
彼女のことを考えるだけで、胸が幸せになる。腐った魔王軍四天王のことすら許せるほどに、心に優しい風が吹いて……。
そうさ、私はユーナへの恋を実らすために、全力になるしかないのだ。
私がどうしようもない変態ばかりの魔王軍の頂点だとしても……!
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