白夢の王さま

 目を開けるとそこは”いつも”と同じ世界。

 僕は”いつも”ひとりだ。

 ひとりだけれど、不思議と恐怖は感じなかった。

 これは僕の夢の話。ここは僕の夢の国。


「もーいーかーい!」


 僕は今日も”いつも”のように大きく誰かに対して呼びかける。

 けれど、何も起きることはない。


「もーいーかーい!」


 僕はもう一度、今度は大きく息を吸って出せる精一杯の声で呼びかける。

 結果は同じ。何も起きることはない。

 もう随分と前から、分かりきっていることだった。


「もういいよぉ!」


 僕はいつかこんな夢をみた。

 目が覚めるとそこは一面が白い海の中。

 思い切り叫んでみよう。ここには僕しかいないのだ。

 叫んだ結果、反響したのは自分の声だけ。

 当たり前だろう?

 だってここには僕しかいないのだから。


「……もういいかーい?」


 誰かに届くことなどない、言葉を吐き続けながら。

 気が済んだところで僕はその場に座り込む。


 夢の中では僕が王さま。

 だけど、この夢の中で僕に気付くものなどない。


「もういいよぉ」


 それは叶うことのない願い。

 気付かれることのない、僕の話。


 僕は”いつも”の今日を終え、眠りにつく。

 きっと明日も、僕は”いつも”を生きる。

 ”いつも”を繰り返すのだ。

 

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