本編

 ゴールデンウィーク。通称GWと言われる連休は大人も子供も楽しみにするだろう。

 休日が重なって五日も連続して休みなのだ。週に一、二回しか休みがなく、働き詰めている社会人からしたら正に夢のような期間だろう。思う存分趣味に没頭するかもしれないし、家族サービスとして旅行に行くかもしれない。

 そのGWという休みを使って中学生である私は親友とめいっぱい遊んでいた。遠くの公園へ出かけたり、海や山で自然と触れ合ったり、都会に出てショッピングを楽しんだりと充実した日々を過ごした。

 そして、今日はGWの四日目。明日が最終日なので普段では出来ない事をしようと、私の家に親友が泊りに来ていた。


「さて、次は何するのかしら? 仄音?」


 親友であるロトちゃんは私の名前を呼んで、不思議そうに見つめてくる。

 情けないだが、私は彼女にGWの宿題を手伝ってもらっていた。


「ううん。これで終わりだよ。手伝ってくれてありがとう」


 私は礼を言って、机の上に広げたプリントを綺麗に一つになるように重ねた。忘れないようにきちんと学校指定の鞄に入れる。


「それにしてもロトちゃんは本当に頭が良いね。いつも頼りっきりで何だか申し訳ないよ」


「別に気にしなくていいわよ。友達でしょ?」


「そうだけどさぁ……」


 ロトちゃんは一言で表すと完璧だ。英語で言うとパーフェクト。学校の成績、単純な頭の良さでも、抜きん出ていて人後に落ちない。テストは毎回百点に近い数字を叩き出し、それは体育でも然りだ。これほどまでに才色兼備が似合う中学生は他にいないだろう。

 しかし、そんなロトちゃんにも弱点があった。それは完璧過ぎるが故に、クラスだけでなく、学校で浮いてしまっている事だ。笑顔をあまり見せず、ただ淡々と問題を解いていく姿から『人工知能』という渾名を付けられてしまっている。

 以前、ロトちゃんがテストで百点取った時、クラスの子は「本当はロボットなんじゃない?」と嫌味を言っていた。流石の私は怒って、その子を本気で怒鳴ってしまったのは最近のことである。親友の悪口を言われて怒るのは当然だろう。

 ロトちゃんは人工知能を搭載したロボットではなくて、ちゃんとした人間だ。だから、こうして触ってみるとちゃんと体温があって、血が巡っている。心を感じる事が出来る。


「あの……仄音? その、恥ずかしいのだけど……」


「へ? あ、ご、ごめんね! い、嫌だったよね?」


「いえ、嫌ではないのだけれどびっくりして……」


 どうやら無意識にロトちゃんの頬を触っていたようだ。それも包み込むかのように両手で優しく……

 女の子同士だからそこまで気にする事ないだろうが、私は顔に熱を帯びるのを感じて、すぐさま手を離すと距離をとった。そして、挙動不審気味にチラチラと彼女の様子を確認する。

 それには二つ理由があった。

 一つはロトちゃんに纏わる噂の一つに『百合』というものがある。その百合とは花の百合ではなくて、性に関する百合だ。別名はレズともいうだろう。一体、誰が最初に言い出したのかは分からないが、彼女からしたら甚だ不本意に違いない。


「ロトちゃん……」


 つい、愛おしい彼女の名前を囁いてしまった。

 耳に入ったようでロトちゃんはきょとんと不思議そうに小首を傾げている。

 二つ目の理由、私はロトちゃんが好きという事だ。ライクではなくてラブ。彼女に淡い恋心を抱いてしまっている。

 腰辺りまで伸びている漆黒の髪は絹のように一本一本サラサラで、枝毛が全くない。雪のように白く、汚れや傷が一切ない綺麗で柔軟な素肌。そして、その肌の上には切れ長の黒い真珠のようなつぶらな二つの瞳と、形の整った極上の桃のような色の唇が浮かび上がっている。スタイルも良くてくびれがはっきりとしていて、睫毛も長い。

 そんな可愛らしくて、大人のような矜持を兼ね備えた雰囲気を持つロトちゃんを見て、私は心臓がドキドキとして心を奪われたかのように釘付けになる。いや、奪われたかのようなではなくて、実際に奪われているのだ。

 ロトちゃんを見ているだけでドキドキと胸が高鳴って、一緒の空間にいるだけで必要以上に意識する。手を繋いだ時には身体が火照って、吐息が掛かった時にはくらくらと眩暈を起こす。脳内で常に『恋人同士になれたら』なんて考えているので、やはりこの気持ちは初恋。そう思うと自分の心の中にストンと当て嵌まった。


「えっとね……ロトちゃんは好きな人っている?」


「へ? 好きな人?」


 急な質問にロトちゃんは鳩が豆鉄砲を食ったように驚いている。

 それもそうだろう。私自身、衝動で訊いてしまったのだ。軽挙妄動であり、きっと今の私の頬を朱色に染まってしまっている。


「そうねぇ……」


 ロトちゃんは少し考えているのか、腕を組んだ。

 実際、どうなのだろうか? ロトちゃんは成績や容姿から高嶺の花だ。評判は悪いというのに、何通もラブレターを貰っているのを私は知っている。全て断っているようだが、それは本命がいるという可能性も否めない。


「いる、かしら……」


「……え?」


 待ち望んでいなかった言葉に私は風に煽られた蝋燭の火のように、大きく感情が揺れた。

 一体それは誰? と、問い詰めたかったが名指しではない以上、私に知られたくないのだろう。


「そうなんだ……」


 この感情は恋愛感情で、それが確かだという事を今、身をもって実感した。そうでなければこれほどまで胸が締め付けられて辛い訳がないのだ。

 しかし、同時に心の中に、溢れんばかりの好きという気持ちが溢れ、ロトちゃんに伝えたい。告白したいという気持ちが芽生えてきた。

 気持ちを言葉に紡ぐと、きっとロトちゃんは迷惑に思うに違いない。私の感情は本来異性に向けられるものであり、それを同性である彼女に向けてしまっているのだ。異端だろう。

 けれど、この休みでロトちゃんといっぱい遊んで、色んな一面を知って、もっと好きになってしまった。もう止まれない。拒絶されてもいい。ただ本当の気持ちを伝えたかった。


「ロトちゃん……その……」


 勇気を出して告白しようと思ったのはいいが、心の中は不安で満たされていて、声が震えていて弱弱しく聞こえてしまう。


「どうしたの?」


 いざ告白するとなると怖くなって、ロトちゃんの顔を直視できない。視線が部屋の端っこにいったりきたりしてしまい、緊張から声もまともに出せなかった。

 そんな私の様子にロトちゃんは心配そうな表情を浮かべている。本当にロトちゃんは優しい。こんな愚図で馬鹿な私の事を心配してくれるなんて、もっと好きになってしまう。惹かれてしまう。

 私がロトちゃんを好きになってしまったきっかけは、彼女の笑顔と行動だ。

 ロトちゃんは私が困っている時、手を差し伸べてくれる。そして、他の人には見せない屈託のない笑みを向けてくれるのだ。惚れない訳がないだろう。


「あ、あのね! た、大切な話があるの……」


 思い切って話を切り出したが、変に力が入ってしまって声が裏返ってしまった。が、それでもいいのだ。なんだってこれから行うのは人生で初めての告白。少しくらい不格好でも仕方ない。

 でも、私とロトちゃんは同性同士だ。恋愛対象にならないのは当たり前であり、告白は失敗で終わるだろう。

 だから玉砕覚悟だった。断られる事を恐れずに、邁進しないといけない。そうでもしないと私は一生後悔してしまう。


「大切な話? 何かしら?」


「あ、あのね! わ、私――」


 ロトちゃんの事を好きだと、愛していると言おうと思った瞬間、ロトちゃんが手で私の口を防いだ。

 どうして言葉を遮るような真似をしたのか? それよりも勇気が空振りに終わった。気持ちを伝えられなかった。その事実に燃え尽きて、どんどん意気消沈してしまう。

 が、もうここまできたのだ。後には引けないので、私はもう一度気持ちを奮い立たせる。


「ねぇ……」


 が、今度はロトちゃんが話し出したので、私の言葉は遮られてしまった。


「まさか、告白なんてベタな事はしないわよね?」


「え?」


 少し不機嫌そうにして言うロトちゃん。

 その発言は図星だったため、私は一瞬で頭の中が真っ白になった。まるでコピー用紙のようだったが、その意味を理解すると真っ青に染まる。


「そ、そんな訳ないよ! こ、告白なんて!」


 ロトちゃんの冷めた目つき。私に向ける初めての一面に怖気ついた私は、つい告白を否定してしまった。

 本当に私は臆病者で馬鹿だ。もっと自分に勇気あって正直になれば、こんな思いをせずにロトちゃんと一緒にいられたのだろう。自分が不甲斐なく思えて、沸々と湧き上がる自分に対しての怒りに、スカートの裾を力強く握った。


「そうよね。学校では私は百合校生と呼ばれているし、本当に勘違いは止めて欲しいわ。第一、同性愛なんて非生産的なのよ」


 愚痴のような感じで言うロトちゃんだが、私にはその発言が深く、私の心を抉るように突き刺さった。だって、そのロトちゃんの発言は、自分は同性愛者ではないと言っているようなもので、それは女性である私を恋愛対象として見ていないとも聞き取れるだろう。


「あ……」


 いつの間にか涙が溢れ出ていて、ぽつぽつと小粒の雨のような雫が、スカートの上に滴って湿らせる。

 まだ告白をしていないのに、完全に振られた訳でもないのに、涙が止まらない。それはきっと私がこの恋は実らないと察したからだろう。


「えっぐ……えぐ……」


 それは分かっていた事だ。それなのに、こんなにも悲しくて、辛くて、まるで心にぽっかりと穴が空いたような喪失感がある。


「どうしたの? 大丈夫?」


 ロトちゃんはこんな私を心配してくれて、慰めるように背中を擦ってくれる。

 泣き顔を見られたくない私は俯いて手で涙を拭っていた。その際、指の隙間から垣間見えたロトちゃんの表情は儚げで、今にも泣きそうだった。

 それはどうしてだろうか? 私の涙が欠伸のように伝染した? いや、そんな事はどうでもいい。それよりも私にはやらないといけない使命があった。


「ロトちゃん!」


 そう、彼女に告白する。そう誓ったのだ。いつまでも逃げている訳にはいかない。遮二無二になった私はロトちゃんを逃さないとばかりに抱き締めた。


「え?」


 唐突に抱き締められたロトちゃんは困惑の声を上げる。

 私の顔はロトちゃんの肩にある状態なので、表情こそは見えないが怖気ついている場合ではなかった。


「私! ロトちゃんの事が好きなの!」


 勇気を出して、否もう自棄になっている。

 兎に角、私は愛の言葉をロトちゃんに放った。私の心の中を支配するのは告白したという達成感に、それを覆うかのように現れる不安。

 ロトちゃんは同性愛どころか、それを嫌っている。先程発覚した事実で、つまり私はこの告白で嫌われる可能性が高い。良くて断られ、悪くて絶交。正に絶望しか待ち受けていない。

 しかし、私は告白した良かったと思っている。胸の内に痞えていたものが取れ、すっきりとして気分が良い。今まで恋愛感情を隠している時は、まるでロトちゃんを騙しているようで気が引けていたのだ。


「そ、それは本当なの?」


「うん……って、ロトちゃん? 泣いているの?」


 肯定した私はロトちゃんの様子が可笑しい事に気がついた。抱き着いているので表情は未だに見えないが、くぐもった声のようなものが聞こえる。

 どうやらロトちゃんは自分で口を抑え、静かに泣いているようだ。いや、分かっている。きっと彼女は私が同性愛者だった事にショックを受けているのだ。

 今まで親友だと思っていた子に、裏切られるその気持ち。私には巧まずして想像できた。


「ご、ごめんね。でも、どうしても、想いを伝えたくて……」


 静寂とした私の部屋。いつもならリラックスできる空間だが、今だけはロトちゃんが泣いているからか、とても重たい空気。それに耐えられなくなった私は項垂れて謝った。


「い、一応、返事を聞かせてもらえるかな?」


 正直、告白の結果なんて断られるのは明白なので、聞きたくはなかった。けれどそれを聴く事によって、私はばっさりとロトちゃんを諦める事が出来る気がしたのだ。


「…………」


 しかし、ロトちゃんは答えない。

 彼女の体温は温かくて、甘い良い香りが匂ってくる。まるで天国にいるかのように至福で、ずっと浸っていたかった。が、あまりにも反応がないので不思議に思った私は離れた。

 刹那、ロトちゃんは私の手首を掴んで立ち上がった。今までの彼女からはあり得ないほどの強引さで、反応に遅れてしまった。


「きゃっ!」


 何を思ったのか、私をベッドに押し倒すとロトちゃんは馬乗りになってくる。動向が分からない私はただ茫然として、彼女を見つめる事しか出来なかった。


「え、えっと……どうしたの?」


 今、好きな人であるロトちゃんに馬乗りにされている。普通は反対だろう。私がロトちゃんを襲って馬乗りにする方が正しい筈だ。

 私は平静を装って分析しているが、内心はまさかの少女漫画のような展開にドキドキとしていた。そんな私を見抜いてか、ロトちゃんは少し頬を朱色に染めていて、ぎこちない手で私の胸に触れた。

 それは服越しからで、揉むような感じではない。本当に触れて、優しく擦る。その程度の愛撫だ。


「わ、私とこういう事をしたいの?」


 ロトちゃんは私の胸を優しく擦りながら、恥ずかしそうに呟いた。上せたように顔を赤くして、その反応を見る限り嫌われた訳ではなさそうだ。


「そ、そうだよ! 私はロトちゃんの事が好きなの!」


 私はもう一度告白をする。ロトちゃんは二回目の告白に酷く動揺して、耳まで赤くなっていた。

 そんなロトちゃんの様子を見ていると私は知りたくなる。純粋にロトちゃんが私の事をどう思っているのか? 私は絶望の淵に落とされて、見上げれば一筋の希望の光。そんな状況に陥っていた。


「ろ、ロトちゃんは私の事をどう思っているの? 本当のことを教えて?」


 思い切って確信を突いてみる。するとそれに煽られたかのようにロトちゃんは感情を曝け出し、私の心の奥底まで響き渡るように耳元で響いた。


「私も……あ、貴方の事が大好きよ……」


 耳を疑った。だって、ロトちゃんは好きな人がいるとも言っていたのだ。

 けれど、彼女の真っ直ぐとした瞳はしっかりと私の事を据えている。その態度が嘘ではなく、現実だと知らしめていた。


「ほ、本当に? す、好きな人がいるんじゃ……」


「ええ、貴女の事よ」


「わ、私?」


「そう。でも告白は受けないわ。仄音には将来、私以上に素敵な男性と巡り合える筈よ。だから冷たくしたのに……まさか本当に告白をしてくるなんて思いもしなかったわ」


 ロトちゃんは悲しそうな表情で告白を断ると言っているが、裏腹に私は心が希望で満ちて喜びで胸が躍っていた。だって私とロトちゃんは両想いだったのだ。それは何よりも素敵な事だろう。


「酷いよロトちゃん……自分の気持ちに嘘を吐いていたんだね?」


「そうなるわね。ごめんなさい。でも、これも貴女のためなの」


「許さない。絶対に許さないよ」


 私はロトちゃんを押し倒して馬乗りになる。いとも簡単に形勢は逆転した。

 ロトちゃんは私と恋人にならない意志を見せてくるが、本当は私の事が好きなのだ。それなら、私はロトちゃんが恋人になってくれるまで攻めるまで。両想いだと判明したので、この気持ちを抑える必要はない。


「ん! んちゅ……」


「んんっ!」


 ロトちゃんの唇を奪い、自分の唇と重ね合わせた。そして、そのまま深くて激しいキスをする。私は自分の舌をロトちゃんに口内に滑り込ませて、舌を架け橋にして唾液を送った。その間、舌と舌を蔦のように何度も絡み合わせる。

 私にとってファーストキスだ。それは、前に聞いていたのでロトちゃんも同じ。だから、どこかで得た知識を見様見真似でやっているのだが、とても気持ちがいい。まるで脳内に直接快楽を得る薬を注入されているようで、頭が痺れてぼーっとしてしまう。


「んんん!」


「ん……ちゅ……むむ……」


 ロトちゃんは最初こそ戸惑っていたが、今では蕩けて誰にも見せられないような顔になっている。

 そんなロトちゃんに満足した私はキスを一度止めた。


「ぷはぁ……どう?」


 私はロトちゃんに感想を聞いてみる。私の唇と彼女の唇は涎で出来た銀色の糸でつながっていた。


「よ、良かったわ。でも、私は……うぅ……」


「えぇ!? ご、ごめんね! いきなり嫌だったよね?」


 感想を言うとロトちゃんは泣き始め、慌てた私は謝った。

 いくら両想いで興奮を抑えられなかったとはいえ、今まで親友だった子にディープキスは激しすぎたのだろう。


「ち、違うの! さっきも言ったけど仄音にはきっと私よりも素敵な人がいるの。私と結ばれたら駄目なのよ」


「それは違うよ! ロトちゃん以外に素敵な人なんて存在しないよ!」


 間髪容れずに私は彼女の考えを否定する。それは本心からの言葉だ。

 私とロトちゃんは同性同士。それは可笑しくて、何度でも言うがマイノリティ。けれど私はロトちゃんの事が好きだ。世界中の誰よりもロトちゃんの事を愛している。その意思は何があろうとも絶対に変わらない。


「ロトちゃんは私のことを大切にしてくれているよね。それはとても嬉しいよ? でもロトちゃんの気持ちはどうなるの? 私とどうなりたいの?」


「私は……」


「ロトちゃんは……私の、恋人になってくれますか?」


 敢えて他人行儀な口調でロトちゃんに訊いた。

 すると逡巡としていたであろうロトちゃんは自分の瞼を裾で擦ると唇をぎゅっと結んで――


「ええ、喜んで!」


 彼女の表情はとても屈託のない笑顔で、見ていた此方も嬉しくなる。私とロトちゃんの想いは互いに通じ合ったのだ。今までの中で一番嬉しい出来事と言っても過言ではない。


「ロトちゃん……嬉しい!」


「えぇ、私も嬉しいわ。この選択が正しいのかは分からないけれど、選んだからには絶対に後悔はさせない……もう一度キスしましょう」


「え? んむ!」


 急にキスを求めてきたロトちゃんは私の返事を聞く事無く、上体を起こすと私を抱き締めて、ベッドに転がった。そして、そのままどさくさに紛れてキスをしてくる。


「ん……んん……」


 私とロトちゃんは抱き締め合いながら、深く激しく、極上の肉を貪るように求め合った。舌は絡めて、足も絡め、手は互いの背中で、まるで一つになるかのように引っ付き合った。

 私は今、とても幸せだ。初恋は叶わないものというけれど、私は叶ってしまった。ロトちゃんは私の事を好きだったようなので、もっと早くに告白してこうなれば良かったと、少し後悔する。


「仄音……愛しているわ……」


「うん。私も……これからも一緒だよね?」


「ええ、勿論よ」


 愛を言葉にし合うと、それを確かめ合うようにまた唇を重ね合う。

 もはや身体だけでなく、心も一つになり、互いの鼓動を感じていた。

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