第25話 地雷

ようやくロンドン転勤の面接が終わった。


彼女はただそれが無事に終わったことにほっとした。結果は二週間後に出るらしいから、今考えても何もならない。最近あまり彼と会えなかったので、埋め合わせようと思って、彼のためにおいしいごはんでも作りたかった。そう思いながら、晩ご飯のメニューをもとに、スーパーへ行って新鮮な食材を買った。彼は珍しく残業することになったので、彼女は自分で彼の家に入った。


料理をする途中、彼女の携帯が鳴った。こんな夕方の時間帯に、親しい同僚のA子さんからの電話は珍しいことだ。


「どうしたの、この時間帯に電話をかけてくるなんて?」

「あのさ、SNSを見た?」

「SNS?いや、何か面白いことでもある?」

「うちの会社のモテ男とあの積極的新人ちゃんのことで大騒ぎになったよ。」


彼女は彼のことを指していたことが一瞬分かった。彼女の中に嫌な予感と不安が一瞬湧いてきた。


「その二人が何をした?」

「どうやら、この前にみんなで夏休み旅行行って、二人きりの場面を誰かに撮られて、そのままアップロードした。どう見ても彼女が彼に告白したように見えるよ。まあ、XXさんのSNSで見られるから、そこに行けば分かる。」

「ありがとうね、こういうくだらない情報を提供してくれて。今忙しいから、電話を切るね。」


ジョークで返事したが、彼女は必死に自分の動揺を隠そうとした。震えていた手で別の同僚のSNSをアクセスした。


問題のビデオのタイトルは「イチャイチャカップルの誕生?」だった。ビデオをアップした同僚はその夏休み旅行の参加者の一人みたいで、その二人の主人子がペンションから抜け出したところを目撃して後をつけたらしい。新人後輩ちゃんが楽しいそうに公園みたいなところで彼と話をしていた場面から始まり、途中で彼が抱きしめられたことも映っていた。問題なのは、彼はそのままじっとして、新人後輩ちゃんを抱きしめなかったが、離れようともしなかった。そして最後、かなりの時間が経って、二人は仲良さそうに公園を出た。ビデオには音声がないので、二人の会話内容を聞かれことはなかった。


彼女は激しく動揺した。頭の中に、いろんが疑問が浮かび上がった。


どうして新人後輩ちゃんがあの旅行に参加したことを言わなかった?

どうして抱きしめられても離れようもしなかった?

二人で何を話した?

まさかその後輩と浮気した?


丁度その時、A子さんからのメールが入った。


「ちなみに、あの旅行でもう一つの事件があったそうよ。彼は知らない女を連れてきて、旅費まで出してくれたみたい。説明によると、地元の親友が上京したばかりなので、友達もあまりいないし、気晴らしのため連れてきた。でも、みんなはそういう言い訳をあまり信じていないようで、まして新人後輩ちゃんの件もあったから、彼のモテモテがまた話題になったよ。これ、その時の写真だよ。罪深い男でしょう~ハハ!」


全然笑い話ではなかった。この噂の主人公は自分の彼氏だから。でも、こういうことを大きな声で叫べない。


また「自業自得」という言葉が思いついた。そうだよね、自分が秘密交際をしたかったから。周りにいる女たちが彼がフリーだと思い、遠慮なく手を出そうとした。それも見ても、何もできなかった。


送られてきた写真は何枚もあって、集合写真と個別ショットがあった。写真から見ると、その地元友人の外見は完全彼のタイプだそうで、親密ぶりも友人のように見えなかった。だから、みんなは彼の説明を信じてもらいなかったということ納得。


彼はまた自分が嫌がっていたことをした。その上、嘘までを言った。何度も言ったのに、知らないわけにはいかない。わざと?それとも偶然?


新人後輩ちゃんの件も、その地元親友の件も、どう考えても偶然では説明できなかった。彼の言動をどんなに信じたくても、もうできない。このガードがない隙だらけのモテ男にどうしたらいい?


彼の説明を一応聞いてから判断しようと思ったが、内心の怒りとざわざわで息が苦しかった。


残りの料理を手早く作り上げて、リビングにあったソファに座り、彼の帰りを静かに待っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る