特別な意味

CHIAKI

第1話 出会い

彼女はいつも忙しいかった。


この会社に入ってから一年未満だが、すでにマネージャーのポストに抜擢され、異例のスピードで昇進した。だから、仕事面では同期や先輩たちの中に特に目立ち、話題の人物だった。


彼は彼女より一か月遅れて会社に入った。違う部署に配属されたが、彼女のことを入社してから間もなく気になり始めた。きっかけは何か、今になっててもう覚えてない。一度も正式にお互いに紹介されなかったので、どうやって彼女に話しかければいいかずっと悩んでいた。


彼女も彼のことをなんとなく意識していた。きっかけは多分、他の同僚から聞いた話で、お互いの趣味が被ったことだろう。でも、一度も彼と話をしたことがないので、いきなり自分から自己紹介なんて出来なかった。


二人はこんな平行線の状態を続けたまま、突然の出来事で転機を迎えた。


ある日、同僚の数人は仕事が終わったら、映画を見に行こうよという誘いがあった。その映画は何かの国際的な受賞作で、最近話題になったものだった。彼女はいつも残業に追われていたが、この日は丁度定時までに仕事を片付けたので、その誘いに乗った。みんなで会社のロビーに集まっていたところ、彼女は彼も一緒に映画を見に行くことを初めて知った。


そして、彼はいきなり彼女にアプローチし、自ら声をかけた。


「初めまして、OOOOです」

「初めまして、XXXXです」


とても普通で素っ気ない挨拶だったが、これは二人にとってすべての始まりであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る