第13話 終着駅
列車の窓から少しずつ光が差し込んで来た。
もうきれいな星や夜空に浮かぶ魚は見えなくなっていた。
ただ、ガタン、ゴトンと列車の進む音だけが響くのだった。
もう少しで着くのだろうか。
果たして僕は僕の望む終着駅に、たどり着けるのだろうか。
これ以上何をすればいいのか、もし、たどり着けなかったら…
「じたばたしなさんな。やることはやったでしょ。後は自分を信じてあげなよ」
そう僕を励ましてくれたのはネムだった。
飲む? そういって、ネムは紅茶を淹れてくれた。
「…そっか。そうだね」
いただきます。
そう言って僕はその紅茶を飲む。
あったかいな。不思議とすごく落ち着いた。
そのまま僕たちはお互いの事を語った。
お互いの現実とユメの世界の事。
好きな物語、面白かった経験、好きな絵、歌、好きな食べ物。
自分の将来の夢のこと。
そんなとりとめのないことを語り合って笑いあったのだった。
まだ時間はあったのに
不思議と終着駅について僕は質問しなかった。
何故かそれで十分な気がした。
少しずつ空が明るくなってくる。
少しずつ列車の速度は下がり、
プォーっと音が鳴ったと思うと、ブレーキ音と共に、
列車は止まったのだった。
「間もなくユメの最果て、ユメの最果て、終点ですー。この度はユメ列車、
ドリーム号をご利用いただきありがとうございました。お降りのお客様はお忘れ物のなさいませんようご注意くださいー」
最後のアナウンスが鳴るころには僕の不安は一遍もなかった。
△△△▲
僕は列車を降りる。
風がすごい気持ち良い。空気が澄んでいるのが肌で分かった。
思わず深呼吸をする。
僕は振り返って車掌ちゃんに尋ねる。
「ここは僕の、望む終着点なのかな。僕はたどり着けたのかな。ちゃんと」
車掌ちゃんは帽子と怪しい仮面を整えて、言った。
「さあ、それは私には分からないけど、でも振り返ってごらん」
「え?」
僕は振り返る。
見ると山の端から丁度朝日が昇るところだった。
夜の闇を洗い流すように奇麗な太陽の光が世界を照らしていた。
本当に見事な日の出だった。
「わぁ、すごい、すごいきれいな日の出」
僕は思わず感嘆の声を出す。
車掌ちゃんはうん、うんと頷いていった
「こんなに奇麗な景色ならきっと大丈夫なんじゃないかな」
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