第7話 初めての経験

「やっ!」


 帰り道で僕たちは車掌ちゃんと遭遇した。電車の整備が終わったためこちらに星を見にきたらしい。


「本当に綺麗な星空だねー。そうそう、絵本作家になりたいんだってねー。この景色を見てるとわかるけど君はいい感性してるから私も才能あると思うよー。頑張って」


? 僕は首をかしげた。もしかして


「聞いてたの?」


「まぁ一応そういう事になるのかな。私はここの車掌であると同時にここの管理者でもあるからねー。ここ周辺で起きてることは大体把握してるよー。だからそのつもりでね」

「メェ〜」


何でもありだなこの子。見られて困る事はしないようにしないと。


「あと君の考える物語。私にも聞かせてちょうだいな」


それも聞かれてた。でも…

丁度いい機会だと思った。

いいさ。ここで僕の可能性ってやつを試してやろう。

さっきのネムとの会話で僕は今ようやく少し吹っ切れてテンションが上がっているのだ。最高にじゃ無いかもだけどハイッてやつだ。

それに僕はネムの言う通り物語だけを考えられる環境に少しワクワクもしているのだ。

やってやろうじゃないか。


「じゃあ電車を出発させるから戻ろうかー。それじゃシャーフ、頼むよ。」

「メェ〜〜」


シャーフも同意したようだった。


シャーフが、草原の草を食べ始めた。するとシャーフの体はたちまち大きくなり、僕たちが乗るのに丁度いいサイズになった。


「じゃあシャーフに乗って戻ろう。」

「おっけー」

そう言ってネムは僕の服を掴んでポイッと放り投げるように僕をシャーフの背中に乗せた。


車掌ちゃんもシャーフに飛び乗り、ネムも後に続いた。

本当に便利な羊である。


「メェ~~~~」


鳴き声を上げ、シャーフは勢いよく走りだした。

「うわわわわっ」

すごいスピードで走るシャーフに振り落とされそうになりながら僕は必死でしがみつく。


すごいすごいすごい。

星の輝く雄大な景色と広大な草原の中、羊に乗って疾風のように駆け抜ける。


こんなの絶対現実じゃ体験できない


やっぱりこの世界に来れてよかったなぁ。


そうしてシャーフの背中にまたがって僕たち3人と一匹は

草原を駆け抜け、電車に戻ったのだった。



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