ゆめのような世界での記録

カモミール

第1話 目を開けるとそこは?

僕は昔から選択が下手だった。

どちらにすべきか選ぶ時、得体の知れない不安に襲われるから。

だから両親が選んでくれる安全で確実な道を進む。平凡な生き方だ。

昔はやりたい事も無かったし、それが親孝行だと思うから、だからそれで納得していた。


だけど最近はやりたい事ができてしまった。それもちょっとだけ普通じゃないやつだ。

まだ誰にも言ってないし、

こればっかりはどうするか自分で決めないといけない。


はてさてどうしたものだろうか。


…分からないから今日のところは寝るとしよう。明日は学校だし。


おやすみなさい。


♢♢♢♦



ガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトン

ふと気がつくと僕の意識は謎の列車の中にあった。


僕はボックス席の電車、つまり2つの席が向かい合う形式の列車の中にいた。

車内はかなり古く、席は木製で出来ていてかなりレトロな雰囲気を感じた。

好きな感覚は好きだ。


外を見ると先の見えない一面の草原、さらにその上には輝くばかりに美しい星空が一面に広がっていた。


草原の周囲には多くの羊が生息しているようだ。


現代ではそう簡単に拝めないであろう景色を堪能しつつも

僕はそこで初めてなにか違和感のある体の浮遊感とでも言うべき感覚に気づく。



そう感じた。

ユメというのは深層心理が影響しているらしいが僕も心の何処かでこんな景色を思っていたのだろうか。

ただ普段見ているユメの感覚とも少し違っている。もしかしてこれが明晰夢というやつだろうか。


そんな事を考えていると急に空気の変化を感じた。何かの脅威に対して身構える。



ガラッとスライド式の扉が開き一人の車掌のような格好をした女性が入ってきた。

何故か羊を手綱に連れていた。逆の手にはカンテラを持っている。

暗闇で光るカンテラはいっそう恐ろしげな空間をつくりだしていた。

さらにその女性は白髪で異様な紋様の仮面をしていた。

このホラーな光景に思わず

「うわぁっ」

と悲鳴をあげてしまった。これは怖いユメなのだろうか。


「やっぱり。迷える子羊ちゃんが入り込んでたねー。こんばんは」

「メ〜」


ところが、怖ろしく見えたその外見とは裏腹に彼女は気さくに話かけてきた。

見た目と違い明るい性格のようだ。だがなぜか体の震えは止まらなかった。


恐る恐る顔を上げ震える唇や顎を何とか動かしながら話しかける。


「あ、あなたは?こ、ここはどう、どういうところなんですか?」

「わたし?わたしはこの列車の車掌。車掌ちゃんって呼んでね。こっちはペットのシャーフ・フォーチュリー。あなたは?」


 返答しようと考えたがとうとう震えて金縛りにあったように声が出なくなった。


「金縛り?しょうがないなぁ。まぁここは同調するまで普通のユメと変わらないからねー。しょうがないっちゃぁしょうがない」



よく分からない事をいって彼女はパチンと指を鳴らした。


すると、彼女が連れてきた羊、シャーフの毛皮が膨らみ始めた。

そしてぶわっと広がり勢いよく車両全体を埋め尽くした。

「うわわわわっ!」


あまりの突然の事にまた、いや今度はもっと大きな声で悲鳴をあげた。

しかし次第に僕を包む柔らかな毛皮が気持ちよくて凄いリラックスしてきたな。

マザーグースの羽毛布団に全身をつつまれたようにふわふわして気持ちいい。


ああ、癒されるなぁ。これいいかも。


 しかし、僕はリラックスしてくるとさっきから人前?でみっともなく叫んでばっかりでみっともないな〜なんて思いはじめた。


少しずつ冷静になってきて、そして思った。


ちょっと待って。これってホントにユメ?どういう状況なの!?



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