第9話 宿題なので黒歴史作ってきますね③
魔眼を使いこなす方法──己で生み出した黒歴史ワードを大声で叫ぶ。
「無理だよね。フツーに考えてムリ。そういえばかれんさんて、魔眼持ちじゃないんでしょ? この前『私のはちょっと違う』って……」
かれんが意味ありげに言っていた事を、
「何で
「そうだね~、それも話しとこっか」
一呼吸開けてかれんが答える。
「実はぁ、人類って一度地球滅ぼしてるんだーっ」
「「 ⁉ 」」
「えへへ~っ!」
「えへへ~、じゃねぇ────っ‼ 何『てへぺろ♡』みたいなノリで地球滅ぼしたとか言ってんの⁉」
「まぁまぁ~、ちょっとシリアスな話になるから、今の内にふざけとこうかなーって」
そう言ってかれんは、遠くを見つめるような目で話し始めた。
「──遠い昔……遥か彼方の地球で──」
「ちょ、星がウォーズする映画のオープニングみたいな事言わないでー‼」
◆
科学技術は想像を絶する程発展していた。しかしそれにより地球の環境は悪化の一途を辿る。
海洋汚染が進み、温暖化は止まらず氷河をじわじわ溶かし、海の水位は上昇して陸地を浸食していった。動植物は環境の急激な変化に対応できずに多くの種が絶滅、もしくは激減した。
その結果、世界の人口に対して食料も住む土地も足りなくなっていく。
この先に待っていたのは戦争という地獄だった。
貧困国は先進国に対し、食料援助や移住の受け入れを求めたが、先進国は自国を優先して申し出を拒否。それを受け、貧困国は勝機がないのを知りつつも武力行使に出た。
この一つの争いは、状況を静観していた他の国々の理性を狂わせていく。
他国の犠牲を
他の惑星への移住も先進国を中心に計画されていたが、地球の資源を使い果たした事と、戦争による関係悪化により断念。
最後の手段として人類は、身体を捨てて精神のみの存在となる研究を進めた。
────精神体化が成功したのは七人だけだった。
他は全て失敗して死亡、もしくは精神体化に
精神体化が成功したか確かめる方法は、確立させる余裕もないほど追い詰められていた為、成功している筈だと信じるしかない状況でもあった。
精神体化が成功した七人は〝
人類が文明を築き始めた段階になると、七人は自身の精神を宿すための老化しない身体を作って地球へ降り立った。
そして人類が、滅んだ旧世界と同じ過ちを繰り返さないよう導く存在──〝
旧世界では魔力子の発見には至らなかった。その為、科学がどれだけ発展しても滅びの道しか進めなかったのだろう。
精神体化が成功した七人も、魔力子を操作しているという認識はなく、『不思議な事ができるようになった』程度に認識していた。精神を体に宿してからも魔力子の操作は可能だったが、精神体の時よりもできる事は限られてしまっている。
それでも、七人の〝戒めの使徒〟達はひっそりと、永遠のように長い時を懸けて世界を見守ってきた────
◆
「──その〝戒めの使徒〟が私、
初めて見るかれんの──穏やかで、どこか寂しげな表情に──
「私たち戒めの使徒は……もともと顔見知りってわけじゃないからぁ、みんな好きなとこに行こうってなって、今はどこにいるか分からない人が多いんだ~。でも名前と、みんなが何をどんな順番で創造したかは知ってるから、教えとくね~!」
かれんは分かりやすいよう紙に書いてくれた。
創世二位 〝
創世三位 〝自然の創造主〟
創世四位 〝天体の創造主〟
創世五位 〝動物の創造主〟
創世六位 〝人間の創造主〟
創世七位 〝??の創造主〟
水月が瞬きするのも忘れたようにかれんを見る。
「かれんさん凄い人だったんだ……」
「この創世七位の『??』ってなんなの?」
莉奈が眉をひそめながら訊いた。
「この人は何も創ってなかった……かなぁ~」
「何も?」
「精神体の時はそう感じたんだよね~、それで地球に降りた時はやる事があるからって、すぐどっか行っちゃったんだぁ~」
「かれんさん、二一〇〇年の天が大地で覆われたのは『人為的に引き起こされた』って言ってただろ? じゃあ戒めの使徒の誰かが犯人だったりするの?」
「ん~そうは思いたくないけどねー。でもあんなのできるとしたらぁ、やっぱり使徒の仕業かなーってなるよねぇ~」
「かぐや達が昨日戦ったあの……ナ、ナムタルさんは? ナムタルさんの仕業だったりしない……かな?」
「そうだよねぇ~あいつも怪しいけどぉ……ま、今は考えても分かんないし! まずは黒歴史ワード、考えてね~っ!」
(くぅ……うやむやにできるかと思ったのに……っ)
いっそ世界滅んでしまえ、と思う悠斗達だった。
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