第5話 誰か知らないけど裁いときますね②
「お待たせしましたぁ~‼」
先程までとは雰囲気があまりにも違うので反応に困ったが、
「かれんさんて二重人格なの……⁉」
「違うよ~? ながーく真面目に生きてるとね~疲れちゃうんだよ。だからぁ立場によって性格を切り替える事にしてるんだ~!」
「長くって言うほどの年齢には見えないんだけど……」
「まぁまぁ~! そんな事より私の同居人を紹介しまーす! 入っておいで~」
そして一言。
「……か、かぐやでしゅ!」
「…………」
自己紹介で盛大に噛んだその子は、肩の下まで伸ばした黒髪を首のあたりで両サイドにまとめ、胸の下辺りを絞った白のワンピースを着ていた。
「か~わいいーっ‼」
テンションの上がった
「ねぇねぇ、苗字は何ていうの?」
「うぅ……苗字は……」
目線を斜め下にそらしながら、両腕を胸の辺りに当てて
「ほらほら~! かわいい名前なんだから、大丈夫だよ!」
かれんに背中を押されて意を決したのか、ようやく彼女がフルネームを名乗る。
「──
きらきらかぐや。
「魔法少女⁉」
悠斗がそう言った途端、輝夜は顔を真っ赤にして部屋の隅にしゃがみ込んだ。
「だからいやだったのに……」
どうやら気にしていたらしい。
「ちょっと悠斗、何て事言うの……‼」
「ご、ごめんな……かぐやちゃん」
悠斗はとっさに謝ったが、輝夜はしゃがみ込んだまま動かない。
「みんな家まで安心して着けるように、輝夜ちゃんに付いて行ってもらうからね!」
「えぇ⁉ むしろこの子を外に出す方が危ないんじゃ……⁉」
悠斗の心配をよそに、かれんが親指を立てながら言い切る。
「だいじょ~ぶ‼ この子とーっても強いから‼」
「ホントに⁉」
出されたお茶を飲み終えてから、悠斗達は部屋を出ようと立ち上がった。
だがその時、先程から妙に静かだった
「お、おい水月……どうした⁉」
「わたし、なん……だか……くらくらする……」
そして水月が崩れるように倒れ込んだ。
「水月‼」
「水月⁉ 大丈夫⁉」
「当然だ……水月には今日だけで色々な事がありすぎた。私も色々話過ぎたようだ、すまない。これでも私は医者だ、任せなさい」
真剣な口調に変わったかれんに水月を任せ、悠斗達はその背中を見守る事しかできなかった。
◇
水月を運んだ部屋からかれんが出てきた。
それを見るなり悠斗が問いかける。
「かれんさん! 水月は⁉」
「ああ、水月が倒れたのは精神的な負担が原因だ。命に係わるような事はない。目を覚ますまで見守るしかないな」
「……かれんさん、お願いがあるんだけど」
「なんだ?」
「おれ、水月が目を覚ますまでここに残ってもいい? 明日は土曜で学校もないし、その……できればそばにいてあげたいから……」
「構わないよ。莉奈はどうする? 一緒に残るか?」
「悠斗がいてくれるなら……あたしは一度家に帰る。きっと執事が心配してるから」
それぞれの行動が決まり、悠斗は水月が横になっている部屋に入った。
壁に寄りかかって腰を下ろし、今日の出来事に考えを巡らせる。
(おれが魔眼持ちだとか、世界が滅びかけたとか、現実味がなさすぎるだろ……! しかも本当は今が二一〇〇年で世界は再構築された? このまま眠ったら、これが夢だったりした方が……)
そんな考えがよぎった時、気になって水月の方に視線を向けた。
(でも──この出会いだけは、夢になって欲しくないな……)
目覚めぬ水月の横顔を見つめながら、悠斗はゆっくりと眠りに落ちていった。
──翌日、日が沈む頃にようやく水月が目を覚ました。
「水月! よかった……!」
胸を撫で下ろした悠斗と共に、莉奈と
「みんな――わたし生きてる……んだよね……」
自分の名を呼ばれて安堵したように水月が息をつく。
「
不安を口にした水月に輝夜が声を掛ける。
「だ、大丈夫だよ、水月ちゃん……かぐや達がついてるから」
「ありがとう、輝夜ちゃん」
「水月が消えてしまうような事、あたし達が絶対させないから安心してね。とりあえず、かれんさんがお風呂使っていいよって言ってくれてるから、入ってきたらどう?」
「莉奈もありがとう。それじゃあお風呂、入ってこようかな」
◇
服を脱いだ水月が浴室の扉を開けた。
「すごい、綺麗……」
そこはまるで、高級な温泉宿にあるような和風のお風呂になっていて、思わず感嘆の声が漏れる。湯船は手足を伸ばすのに十分な広さで、ほのかに
慎重に、丁寧に、撫でるように髪と体を洗う。
「ん~、まだ確信が持てない」
少し考えて、もう一つ確認することにした。
順調に大きくなっているおっぱいを下から包むように持ち上げ、そして手を離す。
「揺れ方にも問題なし……っと」
ぽよんぽよん揺れるおっぱいを視て、「うんうん」と
「……何やってんだろ、わたし……」
水月の頬が赤く染まった。
「まぁ、安心するためだもんね! 全身くまなく触って確かめておこう!」
〝水月の体・詳細確認作業〟が始まった。
二の腕、良好。
太もも、良好。
くびれ、かなり良好。
腰回り、ナイスバディ。
おしり、かなりナイスバディ。
「──よし、我ながらいい女だ」
腰に両手を当てながら、鏡の前で仁王立ちする水月。
確認作業が終わったので、湯あみをしてから湯船にそっと体を沈める。
程よい熱さのお湯が体を包み込むのを肌で感じ取り、水月はようやく生きている実感を得た。
「ん~っ気持ちいい~! それにしても……こーんなにいい体してるのに、それが見える男はユートだけだなんて……」
口元まで湯船につけて泡を吹かす。
(それも悪くない、のかな……?)
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