第90話
「あんた達明日からダンジョン攻略するって言ってたね」
「ああ。これからギルドに行って未クリアダンジョンの場所を聞いてくるつもりだ」
デイブが答える。
「しばらくはレーゲンスにいるってことだね」
頷く2人にこの街で止まっている宿の名前を聞くと、
「わかった。またダンジョンで何か出たら持っておいで。いつでも鑑定してあげるよ」
そう言ってテーブルの上に置いていたクリスタル結晶体を手に持ってデイブに渡そうとするが、それを見ていたダン。
「それはウィーナが持っておいてくれよ」
と無造作に言った。
「そうそう。その方がいいな」
ダンに続いてデイブも言う。その言葉を聞いてびっくりするウィーナ。
「あんた達、この価値をわかってるのかい?」
「今聞いたからな。俺達はウィーナを信用してる。それにこの結晶体だっけ?それを一番有効に使えるのはウィーナだろう?もっとじっくりと鑑定してくれて構わないからさ。俺達はこの結晶体についてはサムにも一言も言っていない。最初からウィーナに任せようと決めてたんだよ」
デイブがウィーナを見ながらいうとしばらくの間の後で
「わかったよ。私が責任を持って管理して鑑定しておくよ」
ダンとデイブが店を出ると間をおかずにウィーナは店を閉めてスラム街に足を向けた。汚いバラックの隙間の路地を通り抜けて1軒の大きな家の前にくると門の左右で椅子に座っていた2人の男の内の1人が立ち上がり扉を開けた。
「いるかい?」
「いらっしゃいます、どうぞ」
そうしてその家の一番奥の部屋にはいるとこのレーゲンスのスラムの顔役のユーリーがウィーナを見て机から立ち上がると机を回って近づいてきた。
「こんな時間に珍しいな。急用かい?」
「急ぎじゃなかったら来ないさ」
ユーリーが勧めるテーブルに座るとそれから2時間程2人だけで話をする。ウィーナの話が進むと表情が一変してくるユーリー。テーブルの上にクリスタルの結晶体を置いた時はユーリーが身を乗り出してきた。そして時折ウィーナに質問というか確認をしながらの長い打ち合わせが続いた。そうして打ち合わせが終わると、
「行くタイミングは任せる。事前に鳥便を飛ばしておこう」
ユーリーはそう言ってから椅子に座ったまま大きく伸びをして、
「それにしてもあの2人は一体何者なんだ?」
と笑いながら言う。ウィーナも同じ様に頬を緩めて、
「化け物の様に強いのは間違いないね。そして信義に厚い。NM並みにレアな冒険者だよ」
そう言うと真面目な顔になるウィーナ。ユーリーの目を見て
「それよりゴードンは受けてくれるかね?」
「物が物だ。個人的には十分に受ける価値があると思う。もちろん鳥便には俺の意見も書いておく」
「頼むよ」
ダンとデイブはギルドで未クリアダンジョンの情報を得るとそのまま酒場で打ち合わせをしていた。2人が座っているテーブルの上には果実汁と地図が広げられている。
「このX印が未クリアダンジョンだそしてXの隣に書いてある数字は攻略されているフロアだ」
地図を見ながらデイブが説明する。ダンもその地図を覗き込んでいて、
「街の近くにあるダンジョンは結構攻略が進んでるな」
「その通り。これなんてもうすぐ最下層だろう」
デイブが指差しているX印の横には18と書いてある。18層まで攻略されているということだ。
「となると数字が若いダンジョンを攻めた方がいいのかな」
ダンが言うと
「正直どのダンジョンが難しいのかはこの地図だけじゃあわからない。なのでここの冒険者にダンジョンの難易度について聞こうと思ってるんだよ」
デイブの言葉にそうしようと同意するダン。そうしてしばらくそのまま酒場にいると2人が知っているランクAのパーティがギルドに入ってきた。
「よう」
2人に気がついたトムが手を上げながら近づいてきた。他のメンバーもトムの後ろから近づいてくる。挨拶を返すダンとデイブ。隣のテーブルにトム達が座ると
「今日は郊外の森でランクAを倒してたんだよ。今ノックスが代表で戦利品の換金をしてる」
「なるほど」
トムのパーティメンバーはダンとデイブと知り合って以来2人がやっている様にフィールドとダンジョンをミックスしたローテーションで活動をしていた。以前の様に護衛クエスト中心から鍛錬中心に方向転換をしている。
自分達がもっと強くなりたいという思いがメンバー全員にありそれならノワール・ルージュスタイルでやってみようと言うことになった。
ダンジョンでもランクSのフロアでじっくりと鍛錬を続けていてこのパーティは以前より強くなっているというのがレーゲンスの冒険者の間での評判だ。
アイテムの換金を終えたリーダーのトムが酒場にやってきた。挨拶を終えると早速デイブがテーブルの上の地図を見せて話をはじめた。
「なるほど。未クリアのダンジョンで難易度が高そうなところを片っ端から攻略しようってことか」
話を聞き終えるとトムが言った。そしてメンバーに意見を求める。
「こことここが難易度が高いって言われてるわよ」
僧侶のエマが2ヶ所を指差す。そこに印をつけるデイブ。エマが指差した2つのダンジョンのX印の横には8と9という数字が書き込まれていた。
「確かにな。俺達はまだ攻めてないがそんな話を聞いたことがある」
「あとは遠いけどここかな?5層でランクAが単体で出てきたって聞いた」
そう言ったのは精霊士のリーだ。そのダンジョンには5という数字が書き込まれていた。お前さん達よく知ってるなとトムが言うと
「女性の冒険者同士で結構情報交換してるのよ」
と言うエマ。その後ノックスがここもあるなと7と書き込まれているダンジョンを指差した。
「ありがとう。とりあえずこの4つを順に挑戦していくか」
デイブが言う。隣でダンもそうだなと頷く。そうしてとりあえず4つの中で一番街に近いダンジョンから攻略していくことにした。
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