第64話
二人はリッチモンドを出て荒野を3時間程歩いていくとギルドから聞いたダンジョンの入り口が見えてきた。ダンジョンに挑戦する冒険者達が仮眠できる様な小屋が建っておりそれ以外にも建物が見える。近づいてみると薬草や水などの雑貨を売ってる店だ。となりには”武器の修理します”という看板もある。
「それなりに冒険者が来るから店もやっていけるんだな」
店を見ながらデイブが言うと隣で頷いているダン。
二人は入り口でカードをかざすと早速中に入っていった。
このダンジョンは未クリアで全体で何層あるかもまだ不明だ。ただ途中まで攻略をしていたケーシーらによると15層でランクSが単体で出てくるフロアになっているらしい。
早速攻略を開始するダンとデイブ。低層には他の冒険者達もいたが彼らの邪魔をせずにどんどんと進んでいき初日で10層まで攻略する。まだランクBクラスだ。
ダンジョン近くで野営をした翌日11層から攻略を開始。15層まで降りると通路にランクSが単体で現れだした。15、16と単体のランクSの層を超えて17層に降りるとランクSが複数体で現れだす。
「ようやく鍛錬開始だな」
地下道の様な通路の先に2体のランクSが固まっているのを見ながらデイブが飲んでいた水を魔法袋に戻す。
ダンは頷くと同じ様に水筒を戻してから立ち上がると
「時間的にこのフロアを攻略したら一旦地上に戻る感じだよな」
「そうだな」
背後のデイブの声を聞いて通路に進み出したダン、後からデイブが続き前方にいる魔獣に魔法を撃って戦闘を開始する。ランクS2体をさっくりと倒して通路を進んでいく二人。途中からは2体ではなく時々3体にも遭遇するが問題なく倒しながらフロアを隅々まで歩いては17層から18層に降りる階段を見つけた。
カードをかざしてから地上に戻ると夕方だった。入り口にいたギルド所属の職員に挨拶をしてリッチモンドに戻っていく。
ギルドに入ると夕刻のピークは終わっていてそれなりの数の冒険者達が隣の酒場で酒を飲んだり談笑したりしていたが、二人が入ってくると視線を一斉に入り口に向ける。
「ノワール・ルージュだ」
「未クリアのダンジョンに挑戦してるらしいな。さっき掲示板を見たら17層までクリアしてたぞ」
「いきなり記録更新か」
そんな声を聞きながら受付でカードを出して精算した二人。
「17層までクリアしてるんだろう?どんな感じだ?」
ここで知り合った冒険者から声が掛かる。
「17層からランクSが複数体出てきてる。2体とか3体とかかな。明日は休んで明後日から18層に挑戦する予定だよ」
酒場に入ってきたダンとデイブ。例によってデイブが聞かれた男に答えている。
「ノワール・ルージュに取ったらランクS複数体でも問題ないだろう?」
「そんなことはない。気を抜けばやられるからな。結果的に倒してるけど手は抜いてないぞ」
隣のダンも。
「一瞬でも手を抜いたらやられる。その緊張感の中で鍛錬すると強くなれると信じている」
ダンの言葉に頷く周囲の冒険者達。実際に目の前の二人の強さを見ている彼らはダンの言葉がその通りだと理解していた。
当人達も言っている。俺達は特別な能力がある訳じゃない。毎日欠かさず鍛錬をし、格上とぎりぎりの戦闘をしている間に力をつけていったんだと。
同時に彼らはこうも言っている。俺達はまだまだだ。魔獣の中にはもっと強いのがうじゃうじゃいる。そいつらに勝ちたい、その気持ちが鍛錬のモチベーションになっている。だから鍛錬は苦にならないんだと。
翌日しっかりと休養を取った二人は再びダンジョンを訪れて攻略を開始した。
18層もランクSが固まっているフロアだ。薄暗い地下道の様な中を進みながら遭遇する3体、ときには4体のランクSを倒していく。
二人の剣の切れ味は格上を倒してスキルが上がるごとに鋭くなっていき、同時に魔法の威力も増していた。
19層に降りるとそこで二人の足が止まる。
「ランクS以上だな。SSクラスか」
通路の先にいる魔獣を見てダンが言うとデイブも隣にきて同じ様に視線を前に向ける。
「SSクラスだな。良い鍛錬になるぞ」
そして二人は19層を進みながら出会うランクSSを片っ端から討伐していく。時にはデイブが前に出て剣をふるいダンが背後から魔法を撃つなど色々なヴァリエーションでランクSSと対峙した。途中で20層に降りる階段を見つけて一旦降りてみたがそこはボスがいるフロアだったので上に戻ると再び19層の中をウロウロしてリポップした魔獣対峙してこの日の活動を終えて地上に戻ってきた。
ギルドに戻るとノワールルージュが19層を攻略しているのは知れ渡っていてギルドでカードを記録するとすぐに声が掛かる。
「20層に降りずに19層をずっとウロウロしているのか?」
併設の酒場でデイブの話を聞いたスピースが素っ頓狂な声を出した。
「そうだよ。せっかくランクSSが無限に湧いてくる場所があるんだ。急いで20層に降りてボスと対戦する必要がないだろう。19層でいろんなタイプの魔獣を相手にするのがいい鍛錬になる」
デイブの言葉に周囲で聞いていた冒険者達もありえないという表情をしている。普通はダンジョンを深く潜ってポイントを稼ぎ、ボス部屋あるのなら当たり前の様にボスに挑戦するものだと思っている。ボスを倒すことがダンジョン攻略だと考えている者がほとんどだ。
そんな中この二人はダンジョンを鍛錬の場と割り切っている。普通の冒険者には無い発想だ。ケーシーは聞きながらだからこそあれほどの戦闘能力が身に付くんだろうと話を聞いては思っていた。そして
「確かに地上でランクSSクラスを探すのは大変だ。どこにいるかも分からないが街の近くにはいないだろうから遠出になるしな。その点ダンジョンなら移動も楽だし、そこにいれば時間とともに再びポップしてくる。いいやり方だ」
「そうだろう?そのうちにボスにも挑戦するけどとりあえずもうちょっと19層で鍛錬かな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます