ラウンロイド

第57話

 ラウンロイドへの道は以前も歩いている。そしてその当時ランクBだった2人は今はランクAだ。道中には2人の障害となる様なものは全くない。


 途中で数度商人を護衛している冒険者とすれ違い、その都度お互いの情報を交換しながら街道を進む。


 数度魔獣と遭遇したものの問題なく倒した2人はヴェルスを出て20日後の昼過ぎに久しぶりにラウンロイドの堅牢な城門を潜った。そうしてそのままギルドに顔を出す。前回はギルドには寄ったがギルマスとの面談は申し込まなかった。


 今回は自分たちもランクAでもあり挨拶はしておいた方が良いだろうと2人で話をし、ギルドの扉を開けるとそのままカウンターに向かいカードを見せてギルマスとの面談を依頼する。中途半端な時間帯であったこともありギルドの中は閑散としていた。


 奥に行っていた受付嬢が戻ってくるとどうぞこちらにと2人をカウンターの奥に案内する。女性が廊下の突き当たりの部屋をノックして中からの声を聞くと扉を開けてくれた。


 ダンとデイブが中に入ると机から立ち上がって大柄な男が近づいてきた。


「ラウンロイドにようこそ。この街のギルドマスターをしているリードだ」


 そう言って手を伸ばしていくるギルマス。デイブが握手をしながら


「初めまして。ヴェルスからきたデイブとこちらがダン。よろしく」


 デイブに紹介されたダンもギルマスと握手をする。

 ソファに座ると手に持っていたギルドカードを2人に返し


「暗黒剣士と赤魔道士の2人組。ランクはA。この組み合わせは珍しいな」


 カードを返し2人を交互に見てギルマスが言った。


「どちらも中衛ジョブでパーティには席がない。たまたまヴェルスで2人いたから組むかとパーティを組んでるんだ」


 デイブの説明になるほどと頷きながらリードは2人を見ていた。赤いローブと黒いローブ。2人とも左右の腰に片手剣をさしている二刀流。2人組でランクAになっていることから見てこの2人は相当できると見ていた。


「ラウンロイドは初めてかい?」


「いや、1年以上前に1度来ているんだよ、その時は2人ともランクがBだったんで挨拶はせずにギルドでクエストを受けて地上やダンジョンで鍛錬してそのままヴェルスに戻っていったんだ。今回はランクが上がったこともあるので挨拶しておこうと思って」


「わかった。ランクAなら行動に制限はない。フィールドでもダンジョンでも好きに活動してくれ。ただし無理はするなよ」


 ギルドマスターの部屋を出ると以前泊まった宿に出向いて部屋を抑えるとその宿の食堂で遅めの昼食をとりながら打ち合わせをする。


「とりあえず前回未クリアのダンジョンをクリアしよう。その後はあのダンジョンより難易度の高いダンジョンがあれば挑戦する。そしてリッチモンドを目指す」


 毎回の事だがデイブの立てる計画は理にかなっていると思うダン。今の提案にも二つ返事でOKする。


「ここからリッチモンドへは徒歩で20日程だったっけ」


「それくらいだと聞いている。リッチモンドに行ったらまた新しい街の情報が聞けるかも知れないな」



 翌朝ギルドで地上の乱獲クエストを受けた2人はその日はラウンロイド周辺でランクA、Bを討伐し夕刻に戻ってきた。カウンターで魔石の買取を済ませたタイミングで


「デイブ、ダン」


 と酒場から声が掛かる。2人が顔を向けるとそこには以前知り合ったリチャードとそのパーティメンバーが座っていた。


「久しぶり」


 と言いながら彼らに近づく2人。そうして隣に座ると早速リチャードが


「また武者修行かい?」


 と聞いたきた。


「そう。今回はここラウンロイドからリッチモンドまで足を伸ばそうかと思ってさ。前回クリアできなかったダンジョンをクリアしてからリッチモンドに行く予定」


 そうしてお互いにランクAに昇格していることが分かる。


「俺達は護衛クエストを中心にポイントを稼いできたが護衛クエをせずにランクAに昇格したって凄いな」


 リチャードのパーティ所属のロンとケビンが異口同音に言う。


「気がついたら貯まってたみたいでさ、ヴェルスのギルマスがポイントが貯まってるから昇格だって言われるまで俺達は気づかなかったよ」


「格上と戦闘しまくってたんだろ?」


「鍛錬にもなるしね」


 ダンが否定せずにあっさりと言う。リチャードは以前ヴェルスの街でこの2人の評判を聞いていたので早晩2人はランクAに上がってくるだろうとは思っていたがそれでも自分たちが護衛クエストというポイントを貯めやすいクエストをこなしてランクAに上がってきたのとは全く別の方法、つまり格上との戦闘でポイントを貯めて昇格した2人について内心で驚いていた。


 相当数の格上と戦闘をこなさないと貯まらないポイント、つまり実践経験が半端なく多くそして強いということになる。


「それでずっとヴェルスで鍛錬してたのかい?」


「いや、1年弱程の期間レーゲンスに行ってたんだよ。そこで地上やダンジョンに潜ったりして鍛錬していたからその時にポイントを稼いだんじゃないかと思ってる。まぁ俺もダンもポイントにはこだわりがなくてね。強い敵と対峙してみたい。その思いの方が強いんだよ」


「それで結果的にポイントを貯めて昇格か、すごいわね」


 デイブの話を聞いて精霊士のリリィが感心した声を出す。他のメンバーも護衛なしで昇格するなんてと言う。


 そうしてしばらく旧交を温めてからリチャードが2人を見て


「ラウンロイドにいる時で何か困ったことができたらいつでも言ってくれよ。俺達は当分この街にいるから」


 リーダーのリチャードの言葉にわかったと礼を言ってじゃあお先と2人はギルドを出ていった。


「街道でランクA4体を倒した時から実力があるのはわかっていたけど、それにしても早いな」


「相当な数の格上と戦闘してるわよ。でないと無理だもの」


 ケビンとリリィが話をしているのを聞きながらリチャードも皆と同じことを思っていた。そしてあの2人はおそらく俺達よりもずっと強い冒険者だろうという事も。


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