第58話
2人は前回途中で攻略を断念したダンジョンの12層にいた。前回12層はクリアしているが身体を慣らす意味もあり、12層から攻略を開始する。そうしてあっさりと12層をクリアして13層に降りる階段を見つけた。
「前回は13層がランクSだったから断念したが」
「ああ。今回は余裕っぽいな」
デイブとダンはそう言うと休んでから13層に踏み出す。ランクSのフロアで前回苦労したとは思えな程サクサクと倒しながらフロアを攻略する2人。隠し部屋か宝箱でもあるかと13層を隅々まで探したが結局何もなくそのまま14層に降りてきた。
14層はランクSが複数体固まっていた。とはいえ今の2人に取っては脅威でも何でもなく2体、3体と固まって襲いかかってくるランクSを次々と倒してはフロアを隅々まで見ていく2人。
「前回苦労したのが嘘みたいだったな」
15層、ボス層に降りたところでデイブが言う。
「剣が装備がよくなっているってのもあるけどさ、俺達の力もそれなりについてきたってことだよな」
「その通りだ。そしてだ」
と前を見るデイブ。
「この感じだとボスはせいぜいランクSSクラスだろう。ドロップは期待できないってことだ」
「そう言うことだな」
そうしていつもの通りダンが扉の前、デイブがレバーの前に立ってレバーを下げると扉が音を立てて左右に開いていった。
「黒虎だ。デカくて早いだけだな」
2人が中に入ると扉が閉まり、部屋の中央にいた黒い虎が咆哮を上げてダンに襲いかかってきた。それを交わしながら両手にもった片手剣を一閃すると黒虎の首と胴体が綺麗に2つに分かれる。そうしてすぐにボスは消えていき中央に宝箱が現れた。
「俺、レバーの操作しかしてないぞ」
笑いながらデイブが言い宝箱を開ける。中には魔石と金貨、そして腕輪が入っていた。
「想像以上に弱かったよ。それにしても剣の威力がすごい。ダンジョンボスの首もほとんど抵抗なくスパッと切れる」
そう言ってデイブが宝箱の金貨やアイテムを魔法袋に収納するのを見ていた。
「また一段と動きが早くなってないか?俺でも見えなかったぞ」
「スキルがまた上がったかな。身体の避け方というか交わし方も以前よりもずっと楽というか余裕を持って見切れる様になってるよ」
デイブはいつも背後からダンの剣や動きを見ている。いつも見ているからこそ分かる。この男は常に成長している。普通ならランクSSクラスの虎の動きを見切れる奴はいない。元々素早さが秀でている虎。それがボスでSSクラスとなると普通のランクAの冒険者ならまず交わせないだろう。それが余裕を持って見切れていると言う。
そして剣の動きだ。虎を交わしたと思ったら首を刎ねていた。両手の剣が動いたのはデイブにも見えたがその細かい動きまでは目で追えなかった。
デイブが宝箱を空にすると部屋の隅に地上に戻る転送板が現れた。2人で地上に戻るとそのままラウンロイドの街に戻っていった。
ギルドに顔を出すと受付嬢にダンジョンクリアを話する。すぐに奥に案内される2人。小会議の様な部屋でテーブルの上に魔石や腕輪を置いているとギルマスのリードが部屋に入ってきた。
「ダンジョンをクリアしたんだって?」
「クリアしてきた。これが魔石と戦利品。あと金貨も出たけどそれはこちらで貰う」
デイブの説明に頷き、
「魔石だけギルドでの買取かな?あとは装備の鑑定か」
そう言うと受付嬢に腕輪の鑑定を頼むギルマス。そうして鑑定を待っている間にクリアしたダンジョンについて話をする2人。と言ってもいつもの様にデイブが主にギルマスとやりとりをしてダンは隣で聞いていた。
「13層でランクS、それが14層では複数体、そしてボスはランクSSレベルの黒虎。こいうことだな?」
「その通り。もう一つ付け加えるとボスの黒虎はダンが両手に持ってる片手剣を一閃して倒した。俺はボス部屋の扉をレバーで開けただけでボス戦は何もしてない」
デイブがそう言うとリードがダンに顔を向ける。その通りだと頷くダン。
「ランクSSの黒虎を一撃で倒したのか」
「吠えながら真っ直ぐ突っ込んでくるだけだったしな、交わし際に両手で剣を振って首をはね飛ばしただけだよ。それと一応ランクSSって言ってるが対戦した感じだとランクS以上SS未満ってところかな。強くなかったし」
あっさり言うダン。そこには何の気負いもない。隣でデイブもそうだなSSは言い過ぎだなと言っている。
2人がクリアしたダンジョンは過去にもクリアされたことがあり決して難易度が高いという訳ではないかそれでもランクAなら誰でもクリアできると程の易しさでもない。そんなダンジョンを2人であっさりと攻略し、しかもボス戦は1人で倒し切って強くなかったと言い切っている。
リードが目の前の2人を見ながらこいつらは普通のランクAじゃないなと思っていると受付嬢が鑑定が終わった腕輪を持って部屋に入ってきた。
「魔石はランクSSの黒虎の魔石でした。そしてこの腕輪は怪力の腕です」
「それは2人とも持ってるな」
デイブが言うと受付嬢がギルドの買取なら金貨8枚になるという。どうする?と聞いてきてデイブにとりあえず持っとくかと言うダン。
「悪いがダンが持っておきたいと言っている」
そう言って受付から腕輪を受け取ったダンはそれを魔法袋にしまうとソファから立ち上がる。
「またダンジョンをクリアしたら来てくれ、それとリッチモンドに出向く前にも声をかけてくれよ」
ギルマスにわかったと言った2人、部屋を出てカウンターを通ってそのままギルドの外に出た。
「どうして腕輪を持っておこうって言ったんだい?」
ギルドを出て通りを歩き出すとデイブが聞いてきた。
「この街の商人のサムってのを覚えてるかい?彼に鑑定してもらおうと思ってさ。ひょっとしたら同じ怪力の腕輪でも効果が違うかもしれないだろう?」
ダンの言葉になるほどと頷くデイブ。ギルドの鑑定を疑うというか念のためにダブルチェックしようという事だ。
「それで鑑定結果が同じだったらサムの店でもギルドでも買い取って貰ったらいい」
そうして2人は一度行ったことがあるサムの商会のビルの前に来た。すると扉が開いて中から番頭格の社員が出てくると2人と見て
「ヴェルスから来られたダン様とデイブ様ですかな?」
2人はいきなり名前を呼ばれてびっくりしていると
「私共はお客様相手の商売をしております。一度会った方の顔と名前を覚えるのは当然でございます。さぁこちらに」
そう言って番頭格の男について店に入ると以前案内された同じ部屋に通された。
「すぐにサムが参りますので」
そう言って部屋を出ていった店員。入れ違いに女性がジュースを3つ持ってきて2人の前とその向いに置いて部屋を出ていった。
「いきなり出身地と名前を言われてびっくりしたよ」
「流石に大きな店を構えるだけはあるな、いや大したものだ」
びっくりしているダンと感心しているデイブ。そうして待っていると扉が開いて2人も知っているこの商会の社長であるサムが部屋に入ってきた。
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