第10話

 二人は8層でしっかりと安全マージンを取りながらランクBの魔獣を倒してスキル上げをする。最初は時間がかかっていた討伐も慣れてくると時間が短くなっていった。


 上位の魔獣に対してスキル上げをする二人。時にはデイブが前に出てダンが後ろから魔法を撃ったりとお互いの剣と魔法のスキルを高めながら3日間階段を8層に降りたところに居座って鍛錬を続けた二人はようやく8層の攻略を開始する。


「俺が最初に魔法を撃つからダン、前衛で対処を頼む」


「任せとけ」


 そうしていろんな戦闘スタイルで敵を倒しながら8層を攻略していく二人。単体のランクBも全く問題なく倒せる様になると9層に降りて石板に記録する。


「今度は9層でスキル上げだな」


 宿の食堂で打ち合わせをしながらの夕食の時にデイブが言う。そうだなとダンは頷いてからデイブを見て、


「ところでダンジョンの中で倒した魔獣はカウントされてるって話だけど地上の魔獣と同じ扱いになってるのかい?」


 ダンが言うとデイブがダンの顔を見ながら


「ダンジョンと地上はちょっと違うんだ。こうなっているんだよ」


と言い、続けて


「フィールドでは魔獣討伐のクエストを受けておくとそのクエストの消化に対してポイントと討伐数に応じた報酬が貰える。これはわかるだろう?」


 ダンが頷くと、


「ダンジョンは特殊でね。中にいる魔獣を倒した場合に得られるポイントや報酬は地上の魔獣よりも低い。なので倒してるだけではギルドポイントは多く貯まらない。だから討伐ポイント以外に攻略したダンジョンのランクとそのダンジョンで攻略したフロアによって貢献度を出してポイントに加算するシステムになってるんだ」


 ダンジョンのランクによってポイントが異なり、それぞれのダンジョンでの攻略しているフロアによってもポイントが異なる。これらを掛け合わせてギルドポイントとしているらしい。


「もちろんギルドが具体的にどう言うポイントを設定しているかなんて秘密中の秘密だからわからないが、難易度の高いダンジョンで深く潜ったり、自分達のランクより格上の敵を倒すとギルドポイントが高いってのはわかる。討伐の報酬は深く潜れば勝手についてくるからな」


 そりゃそうだとダンも同意する。


「そしてダンジョンにはごく稀に宝箱がある。そしてダンジョンの最深部にいるボスと倒すとアイテムが出る。ということでこれらを狙って金策しながらダンジョンに潜ってギルドポイントを稼ぐ奴らは多い」


 つまりダンジョンに潜る奴らは金策とポイント対策を兼ねてるってことかとダンが言うと


「その通りなんだが、宝箱は1度開けるともう取れない。そして大抵のボスのダンジョンは強い。ということでダンジョンでしっかりと金策できるのはランクA以上だろう。それ以下の連中は魔獣からまれに落ちるのドロップ品狙いとギルドポイントを貯めるためにやってるのさ」

 

 仕組みを理解したところでダンがデイブに聞いた。


「それで俺達はどうすりゃいいんだ?」


「基本はこの前言ったやり方を続けようと思ってる。フィールドで金策とクエストでポイント稼ぎつつダンジョンでスキルを上げる。潜っていけば結果的にギルドポイントも貯まるが目的はあくまでスキル上げだ」


 言ってからどうだ?という表情でダンを見るデイブ。その視線に頷くと、


「いいんじゃないか?俺たちは2人組だしダンジョン攻略のスピードを上げて危険度をアップさせることもないだろう」


「ダンがそう言ってくれて助かるぜ。じゃあ俺達は今まで通りだ。まずは9層でスキル上げをしながら地上のクエストもこなして金策とポイントを貯めよう」


 デイブも言っているが普通の冒険者は4、5名でパーティを組むで活動をしランクがCになるとこぞってダンジョンに潜るのが一般的だ。


 一刻も早くランクを上げるためには地上でクエストをこなしてポイントを貯めるよりダンジョンに潜るのが一番早いからだ。地上クエストは移動の時間や獲物を探す時間が発生してその間はポイントも金策もできない。


 一方ダンジョンは1層深く潜るだけでポイントが稼げしかも獲物を探す必要がない。スキル上げも容易だ。ということで皆ダンジョンに潜るが中には勘違いをしたり無理をしたりして命を落としたり大怪我をして引退を余儀なくされる冒険者もいる。


 ダンとデイブは2人組ということや二人とも慎重な性格だったので周囲には流されずにマイペースで生活を続けていた。


 定期的に地上のクエストもこなし金策をしつつダンジョンでスキル上げをして腕を磨いていく。9層も階段を降りたところに居座って複数体いるランクBを相手に魔法と剣のスキルをあげていった。


 自分たちのランクより上のランクBが複数体でるフロアは一つ間違えると大怪我につながる。ダンとデイブは時間をかけてじっくりと9層のフロアで鍛錬を続けていった。そしてその合間にクエストを受けて地上でのランクCとランクBの魔獣討伐もこなしていた。


「あのダンジョンのボスは下位とはいえランクAだ。ランクBの複数体をさっくりと倒せるくらいにならないとボス攻略は難しいだろう」


「そうだな。9層に降りた頃に比べるとかなり討伐が早くなってはいるがそれでもまだまだか」


「もう少し9層で鍛錬しようぜ。ボス部屋に行かなくても俺達のスキル上げにはいいし」


「デイブの言う通りだな。焦る必要はないな」


 ダンジョンの9層で複数のランクBを相手にスキル上げと戦闘訓練をしながらクエストをこなしていた2人。9層の複数体の攻略も全く問題なくなったと判断して明日10層のボスに挑戦することにする。


「ボス戦は死んだら終わりだ。勝たないと地上に上がれない」


 デイブの言葉に頷き2人で薬品などの確認をしてダンジョンに出向くと石板にカードをかざして9層に飛んでいった。そして9層のランクBを倒しまくってフロアを攻略し、10層に降りた。


 ボス部屋の前には扉がありその横にレバーがある。


「始まりのダンジョンと同じだ。レバーをあげると扉が開いて中に入る。そうすると扉が閉まって勝たない限り地上に出られない」


 2人は背中のリュックから薬や薬草を取り出すと防具のポケットに移す。ボス部屋に入ると背中のリュックが邪魔になるだろうから中に入るとリュックはすぐにボス部屋に置いて身軽になって戦う作戦だ。


「いつか魔法袋かアイテムボックスが欲しいな」


 リュックから薬品をポケットに入れながらダンが言う。


「アイテムボックスは別にして魔法袋なら金策したら買えるからな。欲しいよな」


 準備をすると最後に水を飲む2人。そしてお互いに顔を見合わせて行くかと言いデイブがレバーを上にあげると目の前の扉が開いて中が見えてきた。


「でかいオークだ」


「でかいだけだぞ。魔法は使わない。だからランクAの下位なんだ」


 2人が中に入ると勝手に扉が閉まった。そしてオークがこちらを睨みつけてくる。リュックをその場に置いた2人、デイブが強化魔法をダンにかけるとダンが一歩踏み出した。すぐにオークが持っている石器の鈍器を振り回しながら叫び声をあげてダンに近づいてきた。


 鈍器とはいえ身体にくらうと大怪我をするのは間違いない。オークは見た目からは想像がつかない素早さで鈍器を振り回している。ランクAは下位でもこうなのかとその振り回している姿を見てダンはびっくりする。


 ダンは最初の攻撃を交わすと相手の背後に移動しながらすれ違いざまに片手剣でオークの横腹に斬りつけるとぱっくり避けた切り口から血の様などろどろとした液体が出てきた。さっきよりもさらに大きな声をあげてダンに襲いかかろうとしたオーグの頭の後ろにデイブの精霊魔法が命中する。そうしてオークを挟む様にポジションを取った2人は剣と魔法でオークに攻撃を始めた。


 背中に剣を振るうとこちらを向くがその時にはデイブの魔法が首の後ろに当たりまたそちらを向く。そうするとダンが再び今度は魔法をオークの首の後ろにぶつけ、ダンの方を向くとデイブが剣で背中を斬りつける。お互いに魔力を切らさない様に剣と魔法の両方を浸かって少しずつオークの体力を削っていった。時間はかかるが安全をみてゆっくりと削っていく2人。


 ダンはジョブの特性で与えたダメージの幾ばくかを自分の体力に取り込むことができるが最近のダンジョン攻略と地上での乱獲でスキルが上がっており、以前よりも多くの体力を取り込むことができる様になっていた。


「ボスがかなりバテてるぞ。もう少しだ」


 デイブが声をかけてくる。ダンが見ていてもオークの動きが最初に比べると落ちているのがわかった。2人でギアを一段とあげてオークの前後から剣と魔法を繰り出してオークの体力を削っていった。そうしてオークが一段と大きな声をあげるとその場で倒れてきていった。そうして消えたオークがいた場所に宝箱が現れた。


「やったぜ」


 そう言いながら近づいてきたデイブとハイタッチをするダン。デイブが宝箱を開けるとそこには腕輪と指輪が入っていた。


「ギルドで鑑定してもらおうぜ」


 そうして2人リュックを拾い上げて背中に背負うとボス部屋に入った時にはなかった石板が部屋の奥に現れていてそれにカードをかざして地上に戻っていった。

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