第6話

 ダンジョンからヴェルスの街に戻ってきたダンとデイブはギルドでカードを見せて始まりのダンジョンをクリアした事を確認してもらうとそのまま街の中にあるレストランで2人で夕食兼ダンジョンクリアのお祝いをしていた。


 ある程度食事も酒もすすんできたところでデイブが


「それでダン、これからどうするんだ?ずっとソロでやっていくつもりなのか?」


「決めてないんだよな。ソロは気楽でいいんだけど何かあった時のフォローが無いという不安はいつも感じてたんだよ。かと言ってジョブの性格上普通のパーティに入るってこともできないだろうし」


「じゃあ俺と組まないか?」


 デイブが提案してきた。


「中衛2人なら問題ないだろう。それにお前は前衛よりの中衛、俺は後衛よりの中衛。お互いに補完できてると思わないか?」


「なるほどな。それに2人なら揉めることもなさそうだ」


 通常のパーティは4、5人で組んでいるがパーティ仲間で喧嘩をしたり女性を取り合ったりして解散しているパーティがあるという話はギルドでも聞いていたダン。


 いつまでもソロでやるには限界があるだろうと思っていたところにデイブからの誘いはダンにとっても渡に船の話だった。


 ダンがテーブル越しに手を伸ばすとそれをしっかりと握って握手するデイブ


「よろしくな」


「こっちこそ」




 翌日ギルドに顔を出した2人はパーティ登録をした。ギルドからは2人組でいいんですねと何度も念を押されたがデイブとダンはそれでいいんだと説明をする。


 パーティの登録を終えると2人はギルドに併設してある酒場に移動してそこで今後の打ち合わせをする。


「とりあえずランクCの間はヴェルスから動かない方がいいだろう。街の周辺はまだしも離れるとそこらじゅうにランクBがいるからな」


「なるほど。この街でランクBまで上げるんだな。わかった。それでBになったらどうするんだ?」


 デイブの提案に対してダンが逆に質問をすると、


「それについてはお前と相談しながら進めたい。個人的にはヴェルスの街から出て他の街にも行ってみたいと思ってるけどな。ただそうなっても俺たちのベースはこの街だ。よその街に行くのは修行で基本この街をベースにしたいと思っている」


 デイブの言葉に頷くダン。2年以上住んでいてこの街に愛着もある。


 デイブはテーブルの上に簡単な地図を広げた。見るとヴェルスを中心にその周辺の地図が描かれている。もっとも地図といっても空白の方が多いが、街と街とを結ぶ道や山らしきものがいくつか描かれていた。デイブの手書きの地図らしい。


「この街は?」


 ヴェルスの北にある街を指差すダン。


「ラウンロイドだ。ヴェルスから一番近い街だがそれでもここから徒歩で30日程度かかる」


「30日か、俺達が野営をしながら30日進める実力がないと厳しいってことだよな」


 そう言ってデイブの顔を見るとその通りだと頷いて、


「だからランクBまで上げるのを最優先にして、それと同時に金策をして武器や防具をいいものに買い替える、野営用の設備や食料もいるだろうから金策は必須になるな」


 そう言ってからダンを見ると、


「一気に難しいことをすると必ず無理が出て危険な目に遭う。まずはこことラウンロイドを普通に移動できる位に俺達の実力を上げることが大事だ」


 確かにその通りだ。デイブの話を聞きながら頷くダン。


「もちろんずっと安全重視でやるつもりはない。それってつまらないからな。だが低レベルでは安全を第一に考えたい。そこでしっかりと経験を積んでからいろんなことにチャレンジしたいと思ってる」


「デイブはしっかりと考えてるんだな。俺はほとんど行き当たりばったりだったよ」

 

 感心してダンが言うとまぁこれは俺の性格だからなと笑いながら答えるデイブ。


「で、具体的にどうやってランクをBに上げていくんだ?」


「ダンジョンと外での活動。まぁ冒険者の基本だな。ダンジョンでは戦闘の腕を上げてフィールドでは金策。もちろん地上の戦闘でも腕も上がるがダンジョンは階段という安全地帯があるだろう?戦闘の腕があがりやすんだ」


「安全地帯でしっかり休みながら同格や格上と対戦できるからなだ。そしてフィールドではクエストを受けて金策をすると」


 ダンの言葉にその通りだと頷くデイブ。方針が決まってじゃあ早速地上のクエストを受けようと受付横にある掲示板を見る二人。金策をしてしっかりと装備を整えようという方針だ。


「定番のがあるぞ」


 ダンがちぎった用紙はランクCの魔獣退治だ。魔石を持って金と変えてくれる。いわゆる乱獲クエストだ。


「ついでにこれもやるか」


 デイブがちぎった用紙はキキル草の採取だった。キキル草とは薬草と違って森の奥に生えている草でこれを加工すると痛み止めの薬として使えることから需要は多い。大抵の冒険者は山の中で見つけるとついでに採ってきて小遣いを稼ぐことが多い。冒険者が片手間に採ってくることができるキキル草だが、最初からクエストとして受けると報酬がずっと良くなる。


 二人は2枚のクエスト容姿を受付に出すとそのままギルドを出て街の外に出る。


 デイブは事前に下調べをしていた様で街の外に出るとこっちだと手を伸ばす。その方向に歩き出して小1時間ほど歩くと森が見えてきた


「この森がランクCの森だ。そして奥に行くとキキル草も生えている」


「そんな情報どこで調べてくるんだ?」


 聞かれたデイブは森に向かいながら


「ギルドの酒場、ギルドの資料室、そして冒険者達からかな。それぞれは断片的な情報が多いが、それらをまとめると形になるんだよ」


 大したもんだと言いながら森の中に入っていくと早速ランクCのゴブリンが2体唸り声を上げて向かってきた。左右に離れるとお互いに1体をターゲットにする。デイブは魔法を撃ち、ダンは剣でそれぞれ一撃でゴブリンを倒した。


「こいつらランクCでも下の方だから弱いな」


「でも魔石はランクCだ。この調子でガンガンやろう」


 デイブの言葉にダン言うとその通りと魔石を袋にしまうと奥に進んでいく。ゴブリンやオークらと出会うが次々と倒しては魔石を集める二人。


 ダンは剣が主体だが時折精霊魔法も撃ち、デイブも剣を使いスキルを磨きながらランクCの森で乱獲を続けた。


「キキル草があったぞ」


 オークを倒して魔石を取り出したダンがその周辺を見るとキキル草が固まって生えているのを見つけた。すぐにデイブが近づいてきて


「そうそう、これこれ」


 剣で地上から出ている草の部分だけを切り取って袋にしまう。その後もランクCを倒し、別の場所でキキル草を見つけて採取した二人は夕刻にカバンをパンパンに膨らませて街に戻ってきた。


 ギルドに顔を出して査定を頼む。


「1日でこれですか?結構ありますね」


 そう言って袋から取り出した魔石とキキル草を鑑定していくギルド職員。待っていると


「お待たせしました。2つのクエストの完了を確認しました。報酬ですが乱獲で金貨3枚と銀貨40枚。キキル草で金貨1枚と銀貨10枚になります」


 受付嬢が渡したお金を受け取ると隣の酒場に移動する。ビールで乾杯しながら今日の出来に二人とも満足していた。


「悪くないな」


 とダン。デイブも


「ああ、全く悪くない。この調子で明日もやろうぜ」

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