第9話 I was born.


『 I was born.』



―――――


---- I was born さ。受身形だよ。正しく言うと人間は 生まれさせられるんだ。自分の意志ではないんだね----


(吉野 弘 「現代詩文庫」思潮社 より引用)


―――――


僕はこれを読んだ時ハッとした


いや、させられた


否が応でも気づかされたのだ


子供を1人作る、そこに愛も何も必要ないことに


不要ならば何時でも『堕ろす』としょうし、あやめることさえも出来る


そしてその代価はほとんどない


人が1人孕み、そして産む


その一連の流れの中の何処に子供の意思があろうか


いや、あるはずもない


意志を伝える手段さえ持たぬのだから


だが身勝手にも親は産んでおきながらも自らの都合を押し付ける


自らが辛い思いをしてまでも出来た大事な「モノ」なのだから


自分の思うように行かなければ傷つけることも出来る


逆に自分以外が傷つければ容赦なく追い詰める


子供は自分の所有する「モノ」では無いのにね


何様なんだろ


本人の幸せなんて考えてないくせに


自分の思い描く「幸せ」と子供の思い描く「幸せ」の違いさえ分からないような人に何がわかるのか


本当の意味で幸せになんてできないくせに


でも、そんな僕もいずれ親になるのだろうか


僕は親の事なんて「血の繋がった他人」以上のことは考えれなかった


価値観も違えば家族に対する繋がりの重さも違う


なのに自分の価値観を絶対視する親


僕の大嫌いな親


僕もいつかは自分の子供に自分の都合を押しつける親になるのだろうか


産まれることにその子の意思は存在しない


けど僕に子ができたなら


「幸せ」だと思わせれるようになるのか


その子の価値観を大切にできるのか


それとも僕の価値観で染め上げてしまって無為にしてしまうのか


その答えを求めることは僕には難しすぎる


いや、答えは見つけているのだろう


けれどその答えは僕には苦しすぎるようだ


だが苦しい、辛いからと言って顔を逸らし続けれるほど僕は強い人間ではないことなんて自覚している


だから…死ぬまでには答えと向き合えるようになりたいものだ

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