おおかみと赤ずきん

@kanzakiyato

おおかみと赤ずきん

これは、偶然ぐうぜんからはじまる必然ひつぜんのワンシーン。


ぼくかげからこっそりていた。

いつもとおくにえるのは、低木ていぼくからすこしだけはみていて、

一歩いっぽあるくたびにれる赤色あかいろ


不思議ふしぎもりおくで、いつも視線しせんかんじていた。

わたし低木ていぼく隙間すきまからこっそりのぞいていた。

いつもとおくにえるのは、かげからすこしだけはみていて、

すこし、うごくたびにれるくろかげ


出会であいは』

わりに」

つづく』

「シナリオ」

だから、わざと遠回とおまわりをした。


いたい、なんて、

れたい、なんて、

はなしたい、なんて思わない。


だって、この物語ものがたりはシナリオどおりにすすむから。

かよわいきみとずるいぼく出会であってしまえば、そこで物語ものがたりまくじる。

もし、ぼくたちの出会であいに賛成派さんせいはがいて、

「そんな運命うんめい残酷ざんこくだ」

ののしったって、このシナリオの運命うんめいわることなんてない。


あぁ、どうしてぼくが。

あぁ、どうしてわたしが。

おおかみと

あかずきん、なんだ。


きっときみ今日きょうもこのみちおとずれる。それをっていてもぼくは、

きみうことができなくて、はなしかけることができなくて。

ずっと見守みまもることしかできなくて。


きっと貴方あなた今日きょうもあのさきかくれてる。それをっていてもわたしは、

貴方あなたうことができなくて、はなしかけることもできなくて。

づかぬふりをすることしかできなくて。


視線しせんは』

からまない」

こえは』

とどかない」

二人ふたりのためいきだけが、不思議ふしぎもりおくむなしくかさなる。


えなくたって、

れなくたって、

はなせなくたって、いいから。


たよりないきみとぎこちないぼくが、出会であえなくても、はなせなくても。

其処そこにいるだけでいいんだ。

もし、

「これがこいだ」

なんてわないのならば、言葉ことばなんてなくていい。

あぁ。ぼくきみかんがえて、試行錯誤しこうさくごして、何度なんどなやみ、何度なんどくるしもうと、

ぼくがおおかみで、きみあかずきんだという確固かっこたる証拠しょうこがあるかぎり、

この物語ものがたりのエンディングがわることなんてない。


いたかったんだ、

れたかったんだ、

はなしたかったんだ、本当ほんとうは。


すこしだけきみかおた。とても可愛かわいかおをしていた。

すこしだけ貴方あなた性格せいかくた。とてもやさしい性格せいかくをしていた。

そんな二人ふたり出会であい、むすばれるエンド。


そんなハッピーエンドを、何回なんかいだって、何回なんかいだって、神様かみさまねがったよ。

でも、かなしいくらい、かなしいくらい、ぼくはおおかみで、きみあかずきんなんだ。


きみれたくてばす。

そのとき

自分じぶんからだいたみがはしった。

うしろをかえれば、血相けっそうえた村人むらびと自分じぶん背中せなかけんしている。


ドサっ、というおととともに、貴方あなたたおれた。

まえてみれば、背中せなかからながしている貴方あなたと、

がついたけんにぎった村人むらびとっていた。


いてるきみなぐさめたくてばしたうでふるえる。

あいしているよ、そうってきしめたいよ。

だけど、できないんだよ。


どう足掻あがいたって、どうねがったって、

この世界せかいはシナリオどおりにすすみ、ぼくがおおかみだという

確固かっこたる証拠しょうこである、つめも、きばえない。

だから、ただってるよ。

きみなみだむまであのさきで。ずっと。

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