シーン3-1/破滅の未来

 腕を組んで深い溜め息を吐く俺と、地面に正座して小刻みに震えつつ、転生までの経緯を語るダイスの女神ディーチェ。なんだこの光景。


「なるほど……? まあ色々と言いたいんだけどさ」

「……はい」

「転生自体は成功したんだよな? なんかさっきファンブル振ってたけど」

「…………」


 俺の問いかけに、引きつった笑顔で露骨に視線を逸らすディーチェ。なんでそこで黙る?


「えーっとぉ……どう言えばいいのか……遊真、随分イメチェンしたわね?」

「は?」

「髪と肌は転生前と大して変わらないけど……こう、他の部分の見た目がちょっぴりだいぶ鋭い感じに変わったと言いましょうか……」

「え? 鋭い感じって何? 俺、今どんな見た目になってんの?」

「……こんな感じ……です……」


 今にも泣き出しそうな顔と声で鞄から手鏡を取り出し、ディーチェは俺の顔に鏡面を向けてくる。

 そこに映り込んでいたのは……黒髪に、吊り上がった両目。黄色い瞳の瞳孔は縦に長く、ナイフの如き印象を与えてくる。およそ生前の大須遊真とは似ても似つかない顔だった。


「……誰これ……いや待てよ? こんな雰囲気のキャラ、ルルブのどこかで……」


 ブレイズ&マジックのルールブックには、公式が用意したNPCが複数人、イラストと共に紹介されている。その中で現在の見た目に該当するキャラクターといえば……候補は、1人しか思い浮かばなかった。


「……嘘だろ……」


 掠れた声で呟く。他にそれっぽいキャラクターはいなかったか、何度ルールブックの掲載キャラクターを思い返しても結果は変わらない。


「このキャラ……魔剣聖まけんせいゼノじゃねぇか!?」


 ゼノ・オルフェンロード。

 凄腕のソロ冒険者だった公式NPC。しかし彼がブレイズ&マジックのセッションに登場する事は極めてまれだろう。

 なぜなら彼は、歴史に語られる大事件「ゼノの厄災」を引き起こし、とある冒険者の一団によって"討伐された"最強の悪役「魔剣聖」その人だから。

 つまり……俺が転生したのは、公式設定で死亡しているはずのキャラクターだったのだ。

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