【饅頭】信ちゃん口の周りが汚れてます
第218話:【饅頭】の前説です。
違う世界線でWeb小説書いている人のエッセイ。
https://kakuyomu.jp/works/16816927860513975333/episodes/16816927860527163919
◇ ◇ ◇ ◇
1559年3月下旬
尾張国那古野城
織田信長
(ちょっとADHD気味の天才!)
「お市様より。それは山椒の粉をかけると、更に信長様好みになる筈、との事にて」
猿が差し出してきた薬方を近習が受け取り俺に寄こした。
少々かけてみる。
成程、今までの甘じょっぱさのくどさが和らぎ清々しくなったわ。
「食うたか?」
「はっ。1串。大胡の城下にて。匂いで釣られて気づいたら茶屋に入って居り申した。上手いですな、この商売。匂いを売っているようなもので」
猿が儂の意図を汲んで先を読んで自分の評価を述べる。
家臣の中には俺の言葉を理解できる奴が殆どおらぬ。
こ奴と五郎座(丹羽長秀)、吉兵衛(村井貞勝)位なもの。
どうしてこのくらいのことが分からぬ、と癪に障る。
大胡は人材豊富じゃな。
あの素っ頓狂な男の周りに続々と自分の意志を持ちつつ松風の意図を汲んで独自に行動する奴が育っていく。
悔しいわ。
せめて、こ奴だけは手元に置いておこう。
今度折を見て炭奉行にでも任命してみるか。
こ奴ならこの大胡特産の
『焼きまんじゅう』
を超える炭焼きの特産品を作るに違いない。
炭を節約するだけではいかん。
炭を使って得をする方策の方が良い。
「信長様。某、大胡より戻ってくる道すがら思いついたのですが、饅頭ではなく鰻などをその様に甘じょっぱくしたタレにて炭火焼すれば、香りで東海道を行き交う者共が銭を落としていくのではないかと夢想してしまいました。
ははは」
やはりこ奴はキレる。
儂の着想を先取りして発案してくる。
大事に育てなければならんな。
右衛門(佐久間信盛)や権六(柴田勝家)とはまた違う使い方がある。
大胡製の焜炉に練炭を使い、火力を調節して焼きまんじゅうを焼く。なんでも焼きまんじゅう専用の仕組みだとか。
上野の者は粉物を良く食するというがここまでしても食いたいものか(注)?
甘党の儂でも食いきれぬ。口の中が麻痺して来たわ。
またもや猿が差し出した懐紙を近習が受け取り、甘味噌で汚れた口元を拭う。
「して。松風は?」
「はっ。佐治水軍は出来るだけ使わずに大胡の水軍のみにて駿河まで援軍をと。無理なき兵数にて、無理なき期間お願いいたしたいと。
先行きは分かりませぬが、長くなるやもしれぬので防備ではなく伊那谷を通り諏訪を目指していただき武田の戦力を分散させていただくだけで構わぬとの事」
未だ今川の掛川城が落とせぬ。臣従した松平の兵が逡巡している。
もうこれ以上の武者を無くしたくないのであろう。
今年中に儂の手で一気に落とそうと思っていたが、今度は大胡が危険か。
厄介なものよ。
同盟や不可侵の約定など、あまり当てにせぬ方が良い。
力で抑え込むしかあるまい。
だから今は力を溜める。
そのために無理はせぬ。
「伊那谷へ向かうと伝えよ。それから硝石の礼として何が良いか聞いてこい」
「はっ。礼の件は大胡様より既に。貝について詳しい漁師を欲しいとの事。できれば沢山と」
……いつも何を考えているのか分からぬ奴じゃ。
銭で1000貫文を超える火薬の礼が漁師だと?
松風がびっくりする程送ってやるわ。
🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸
注)仕方ないのです。水田が少なく米が取れない。だから麦を食う。正史では耕地面積の6割が畑です。焼きまんじゅうは群馬のソウルフード! あと味噌パンも。ちなみに「砂糖がないんじゃね?」と突っ込まないように! ネタエピソードです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます