【高炉】鉄鉱石と瀝青炭が揃えば!

 1553年7月中旬

 上野国華蔵寺公園西工業町

 冬木元頼

(建設担当もするようになった大繁盛の科学技術省長官:草)



「親方。あと2万ほどでとりあえず完了だな」


 工業局の鶴太郎に注文の確認をしに来た。当初の予定である4里(16km)のはいうえいハイウェイ


 大胡を中心とした那波までの南道、厩橋までの西道を、ここで焼いた煉瓦で敷き詰めている。煉瓦の隙間にはコークスを作るときに出るタールを詰めている。


 街道の幅は2間半(5m)。現在使用している大胡車が余裕をもってすれ違える幅だ。


 大胡車はようやっと改良が施され、不整地でもバランスを取りガタゴトする上下の動きを、鉄製の車軸と制動装置で荷崩れを防止できるようになってきた。


 それを馬や牛で引く。


 この道なら1刻で1里は引けるので単純計算で4刻(8時間)で、朝に八斗島にて荷下ろしした物を夕方には大胡まで輸送できる。ここ華蔵寺で作った鉄なども2刻あれば八斗島の集積所に届けられる。


 兵の移動も横に4人並び1間ごとに縦隊を作ると、1000人の移動は5町(500m)の長さで済む。


 これは大変重要だ。


 大胡から後詰が1000人到着するとして、普通なら布陣するまでに1刻程度は掛かってしまうが、これなら横隊を作り展開するまでの時間はその10分の1くらいで済む。


 ましてや常備軍の行軍速度は、この道なら1刻で3里(6km/h)は進める。


 他の大名の行軍の2倍は速い。苦労した甲斐があるというものだ。


「じゃあ、そろそろ高炉がつぶれるこわれると思うんで、そっちの煉瓦作ってもいいですかね。俺もそろそろ磁器を作らないと。殿さんを待たせちまう」


 ??


 殿が何かまた始めるのか?


「へえ。今度は殿さんが絵付けをしたいとか言い出して。都からお師匠さんを連れてきたとか」


 また新しいことを始めたのか。殿は本当にいろいろと手を出される。人生を楽しまれているとつくづく思った。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 次の日

 鶴太郎

(天才的製鉄関連技術員!)



「昨日、言い忘れていました。重要なこと!」


 工業局で執務している冬木様の所に急いで飛び込んだ。


「どうした? 親方。炉でも壊れたのか?」



「違います。もっと大変で。石炭が足りません。あと少しでも増産すれば限界です。すでに輸送が追いついてねえし」


 あまりにも高炉や反射炉、煉瓦を焼く炉が増え、高崎の観音山丘陵の露頭から掻き出してくる量では間に合わなくなってきている。


 利根川を使用した九州の石炭の搬入も限度がある。高崎の本格的な採掘をせねば、そのうち生産が頭打ちになる。


 砂鉄に代わって鉄鉱石を使えるようになったことは喜ばしいが、それに付随してコークスも大量に必要になってしまった。


 まだまだ鉄や煉瓦の需要は多いだろう。最近は建物にも使用するという案も出ている。


「高崎というと和田殿の領地か。大々的に掘るとなると北条などの目が気になる。

 今しばし我慢してもらうしかないが……金堀衆の手配はしておくか。承知した。よう教えてくれた」


 大胡のお侍は何かを自分で考えて仕事をしてくれる。

 丸投げはしない。


 無理なことはたまに言うが、それは無理と言うと数にして説明しろと言う。

 こちらも我を通すためには見通しをしっかり作り、数でもって目標や成果を報告せねば、納得させられぬ。


 これもすべて殿さまの真似しているだけだと言う。どれだけのことを殿さまはしているのだろうか?


 せめて趣味であるらしい磁器の絵付けぐらいは楽しんでもらうように、色々な物を作って差し上げよう。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 赤城西側山麓

 飛猿



 ここ赤城西側山麓は北風が強い。


 赤城と榛名に囲まれた地域よりも弱いが、それでも吹きさらしの峰筋は里者では立っていられぬほどになる時もある。


 その強風にも倒されぬことを確認した後、実際の動作確認をする。真田の殿の指示にて作った「腕木うでぎ式信号機」。狼煙では風の強い時や雨の時は使えぬ。


 だが、これならば視界が悪い夜や霧の時以外は半里先まで見える。


 我ら素ッ破のように目が良い者がここに配置されれば、沼田や岩櫃に異常が起きた際には我らが走るよりも素早く伝えることができる。


 この信号機は柱に取り付けてある上下に回転する腕木を、どの角度にするかで信号を送る。見やすいように赤白の縞模様に塗られている。


 また、手旗によるものも考案された。

 こちらは移動できるので戦場などで使用される予定だ。


 定期的な信号以外にも緊急な報せも繋げるように常駐する者を置きたいが、まだ人が足りぬ。


 必要な時は大筒による音で知らせることも考えているそうだ。山間なので音が籠り遠くまで聞こえる。


 これでも十分危急の時は伝わるであろう。


 とりあえず北への伝達設備は整った。

 殿に報告しよう。



 🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸


 技術があってもモノがないとです

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860630530111/episodes/16816927860636802301


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