【孤児3】菊蔵
1546年1月上旬
華蔵寺工業集落
菊蔵
(何をやっても駄目だと思い込んでダークサイドに落ちそうになっている14歳。そんなことないんだよと言ってあげたい)
「なにやってやがるっ!
この薄のろめ!!
もう来るな。出ていきやがれ!!!」
親方の罵声が工房に響く。出来上がったばかりの陶器を、手が滑って落としてしまった。これでもう3度目だ。やはりおいらは出来損ないなのか。
折角、賢祥様に救われたこの命。何かでお役に立てないか色々と試してみた。
親衛隊訓練生と同じ訓練をしようとしたら、1刻もしないうちに足腰が立たなくなり、いいからやめろと言われた。
まつ達がやっている帳簿付けも全くわからず、計算の間違えばかりで迷惑かけてあきらめた。
ここ陶器工房で働き始め、まき割から初めてようやっと工房内の仕事に付いたらこのざまだ……
もう大胡に来てから4年もたつ。同期の皆はそれぞれ生きる道を見つけたようだ。まだ何も決まらないのは、おいらだけ。
ぼ~っと、黄昏の粕川の土手で座っていると益々落ち込んでくる。
「よいかな? 隣に座っても」
急に声を掛けられ、びくっとするも頷くだけの元気しかない。
「何に悩んでいるかは知らぬが、そなたの年齢では皆、心に色々な不安と夢と鬱憤が渦巻いているのが普通じゃ。だからそなただけではない。
気にせぬことじゃ」
むっ、となった。
おいらたちの大胡への思い。
それを知らず何を言うか!!
そう叫んでいた。
「その思いがそなたを苦しめているのじゃな? それを大胡の殿さまはご存じなのかな?」
そんなこと知るはずもない。あのお方は、松風丸様は「友達」として遇してくださる。この孤児たちを。そんな殿さまの為になりたいというのは、当たり前の人の思いではないのか?
そう絞り出すように、声を掛けてきた30過ぎのふくよかな男に答えた。
「ふむ。これは益々、松風丸様にお会いしたいの。もしよければ連れて行ってもらえんかの?」
普通の領主様ならおいらのような、元浮浪児が案内などできないが、ここではお城の門番のおじさんに話せば、大抵お会いしてくださる。
「おじさんは、なんという名前なんじゃ?」
連れていくにはどこから来た誰なのかくらいは聞かないといけないくらいは、抜け作のおいらでもわかる。
「儂かな? 甲斐の国から来た永田徳本というもので、医者をやっておるのよ」
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こんな子にも光を当てる作品です。
この世界線では科学が超進歩していそう。
https://kakuyomu.jp/works/16816927860630530111/episodes/16816927860633109515
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