【囮隊】残酷な命令。だったらそれ相応の
1546年4月中旬夕刻河越城西方半里。山内上杉勢陣内
長野正影
(いつも主人公を心配しているおかん)
公方様にご拝謁した後、大胡勢が陣を張る場所までの道すがら、殿はずっと無口であられた。なにか真剣に考えられているためか、もう髷が完全にほどけている。
いつもより大分大きな独り言を呟いている。
「……あいつのやりそうなことだ……」
「……いつか……様に……してやる……」
「……今は……ここを切り抜け……」
最近は、考えの邪魔をしないように髷のことは考えが途切れた時にだけ言うようにしている。
早い松明と篝火が炊かれ、皆が殿の帰りを待っていた。飯も用意されており、食いながら先の拝謁の様子を聞く気満々だ。
代表として後藤殿が切り出した。
「して首尾はどうでござるか? 殿」
「ん~。扇ケ谷の朝定ちゃんに助けられちった」
どういうことなのだろう?
何か無体なことを言われて、それに助け舟を出されたということか?
「結論だけ言うね。近々予定されている合戦に出る事になっちゃいました。
テヘッ」
一同顔を見合わせたのち、後藤殿が獣のような歓喜の声を上げた。
殆どの者が
「これぞ武士の誉れ」
「よくぞ合戦参加をもぎ取ってこられましたな、殿」
などと言っている。
ただ伊勢守殿と某だけは浮かれずに殿のその次の言葉を待っている。
「でね。大胡勢は【囮】だって~♪」
一同、真っ青になる。
相手は精強な北条の軍勢8000。
河越の城にも3000余りの兵が詰めている。
それも
どこに投入されても大胡勢200余りは鎧袖一触で吹っ飛ばされるだろう。
「……金山崩れの二の舞は避けねばならぬ」
悲壮なセリフを口にするのは殿の本陣を守る上泉伊勢守殿。
伊勢守殿は、金山崩れの際、
此度はなんとしてでも、殿を守りたいと決意を新たにしているらしい。
その言葉に皆が頷き合い腹を決める。
「して、殿に置かれてはいかなる対策をお立てに?」
「まだ何処に配置されるかわかんないけどね。前に言ったことと方針は同じ~」
皆を代表して某がそれを口にする。
「では、逃げる! と」
「そうそのと~り! 無益な戦はしないのです。死ぬのは本当に必要な時だけでいいんです。だって命は一つ。大事に使えば一生使えます!」
よくわからない理屈をこねるのは、いつもの殿だ。
安心した。
これくらいで困る殿ではない。
「だから、今度の戦はね……」
「まらそんのじかんだぁ~~~~~!」
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勿論主人公はマラソンしませぬww
決して某国とは言わない。異なる世界線での残酷な史実
https://kakuyomu.jp/works/16816927860630530111/episodes/16816927860632123532
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