【訓練】猛将・知将・鉄壁武将、色々育つね

 1546年5月中旬

 上野国大胡城西練兵場

 東雲尚政

(斜に構えているが実は……)



「放てぇえええええ!!」


「次の列。構え。放てぇええええ!!」


 後藤のおっさんが大声で自分の率いる備えに弩弓の訓練をしている。この備えは領民の中から志願した体躯の良い者どもを訓練して精兵にしている。大胡勢の中の主力備えだ。


 ちなみに俺が指揮する備えは銭で雇った足軽だよ、悪かったな期待されてなくて。


 そんなことを考えていると城の方角から「みんな、頑張ってるね~~~♪」と、素っ頓狂な叫びが聞こえてきた。


 殿の声は相変わらずでかいな。

 それに気の抜ける声色。

 小走りに歩いて俺に近づいてきた殿。


「しのちゃん。その顔は自分のへーたいさんに不満がありそうだね~」


 目ざといな。

 気が抜けん。


「いえ、銭で集めた足軽は逃げ足が早くて困り……」


「いいねいいね~。

 足が速いのはいいことだよ。これまでもたくさん走って体力つけたじゃないの。

 これは使えるよ。特にしのちゃんが一番よく使えるよ♪」


 何を言っているのだろう? 

 早いと速いを混同しているのか? 

 大体逃げ足が速いのが役に立つのかよ??


「しのちゃんは策を練るのが上手だよね。きっとうまく使えると思うんだよね~。

 これは戦の原理原則だけどね、戦力の三大要素は攻防走。

 走は機動力と呼ぶね。

 機動することで相手を弱くすることができるよ~」


 なるほど。

 喧嘩でいえば逃げ回っていれば、相手の体力気力が落ちるな。

 そこを突くか。


「だからね。

 お仁王さまの真似はしなくていいの。敵の分断と遊兵化を狙い、ついでに奇襲・伏兵、横槍その他色々をしてほしいんだ。

 だからしのちゃんにお願いするのが一番だと思いますっ!」


 あんぶ~~~しゅ、

 とか片手を振り下ろしながら叫んでいるが、気にせず思索に耽っておこう。


 確かに長弓では伏せながら射ることはできないが、弩弓ならば草むらに隠れて射ることができる。数は頭数の数倍あるから矢の雨を降らせることができよう。


 まあ、鋼の鏃で直接狙ってもいいかな。そして混乱している敵から一目散に逃げる。なるほど、これも使えるな。


 他の使い方も考えよう。

 これは面白くなるな。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 大胡是政

(こいつ、肝が据わっているなぁ)



 親父の名代として、二の備えを任せられた。銭で雇った足軽はお味方不利と見るとすぐ腰砕けになる。だから不利に見えないようにすることだ。長柄で対峙した際には目の前で敵が倒れる姿を見させる。


 これに尽きる。

 と、殿が言っていた。


 童の仕草と、あの気の抜けた声で言われると疑いたくなるが、実際の手順を説明してもらうと、なるほどと合点がいく。

 現在はその練習をしている。


 我が家宰大胡家の家臣4名が、殿曰く「分隊長」として、それぞれ10名をまとめ上げ、俺は残りの荷駄係10名を必要な時、矢などを運ばせる。


 そして突貫、後退の差配の訓練。反射的に体が動くようになるまで兵を練る。それの繰り返しが戦の真っただ中で、逃げずに戦い続ける力となるのを期待する。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 佐竹義厚

(いつもびくびくアッちゃん)


 流れもんのおいらを侍分に取り立てて、一つの備え?を指揮させるなんて正気じゃねぇよ。

 

 まあ、兵も流れもん中心の集団だがね。特に馬子や船頭が多いのは荷駄隊だからさ。結構ガタイがいいやつが多いぜ。


 あとは人足頭をしていた奴なども幾人かいる。その中の一人なんざ、土木作業の専門家だったらしい。陣を急ごしらえするときに、おいらの代わりに指揮するんだ。


 で、おいらは何をするって? 


 実はな。

 この備えは「重装歩兵」というんだそうだ。

 殿さまが

「ふぁらんくすで斜行陣!!」

 とか喜んでいたっけ。


 頑丈でも軽い「大胡胴」のしっかりした奴に「大胡笠」を元にして改良した兜みたいな奴を被り、藤蔦で編んだ盾を持って前進する号令をかけるだけ。


 今日はその後の行動を殿さんが直接教えてくれるらしい。

 ああ、噂をすれば来た来た。

 大声でようわかるわ。


 さて、いっちょやったるか!


 🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸


 今後、どんどん個性がはみ出ていく個性派武将たち。


 なんか変な国防軍

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860630530111/episodes/16816927860631597043


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