【煉瓦】これないと大胡の未来はない!
1542年12月中旬
上野国大胡東新設登り窯
鶴太郎
(陶工の鬼才。この人いなかったら今後の大胡はない!)
やっと出来上がった。
松風の殿に誘われて、
窯内の温度も遥かに高いはずだ。温度はたたらに近いはず。
こういう変わり物を作りたいから殿の誘いに乗った。
「もっと改良してね」とも言われている。
「つるちゃ~~ん。木炭作ってきたよ~♪」
殿だ。
自ら持ってくるのが殿らしい。
顔に面白いほど炭がついている。隣の大きい体の小姓が拭こうとして、なかなかうまくいかない。
逃げて回ってでもいるのだろうか。
「前に言っていた石炭ね。やっと使えそうな質と量、入手できたんだ~。
これを木炭で蒸しあげてね。あ、でもまだ耐熱煉瓦できてないか~」
そうなのだ。
俺がここに来たのも「鉄をも溶かす高炉」を作り、鉄製の様々な器具を大量に作りたいからだ。
勿論、瓦や陶器も面白いが、だれもやったことのないものに挑戦したいのだ。これができれば天下が動くと言われ、その気になっちまった。
親父と俺以外の家族親族は先の享徳の戦で殺された。
もう戦はこりごりだ。戦のない世の中にしたい。そのための礎になるなら、この技使ってくれ。
「耐熱煉瓦、できたかな~?
この前の鹿沼土使えたかな?」
「はい。薬研で粉にして粘土に混ぜましたところ高温に強い煉瓦ができました。しかし、まだまだ鉄が溶けるには至りませぬ」
銅や青銅なら作れる。
だが、たたらよりも高温にして大量の銑鉄を、砂鉄からではなく鉄鉱石から作り出し鋳型に流し込むためには、もっと頑丈なものが必要だ。
使い捨ての野たたらの炉とは違い、鉄を流れるまでに熱する炉を作るにはまだまだだ。
さらに親父の炉やたたらのようなものは木炭だから木を大量に使うので量が作れん。砂鉄が必要だから量も作れん。
目標は鉄鉱石を使える高炉だ。
「……とりあえずアルミナ入れれば
何とかなるはずなんだけど……」
また殿は、何かを呟いている。
「殿。
こういったものは、混ぜる割合を色々ためすのが当たり前です。まだしばしお待ちください。それとふいごの力が足りませぬ。これを何とかできればあるいは……」
「わかった~。それはこっちで何とかする~。煉瓦は任せたよ~。じゃあ、その合間でいいから、2つ試してみてほしい事があるんだ」
うっ、2つも……
3つを同時に作業するのか。
「一つはね。磁器作れないかなと。カオリン……じゃなかった、磁器用の粘土集めてきたから、気が向いたらやってみてね~。
お弟子さんもできたんでしょ?」
それはそうであるが、手数が足りない。というか、磁器ならば俺が作りたい!
「あとはね。
木炭使っていると粉々になるのがあるじゃない。あれ糊かなんかで塊にできない? きっと売れると思う~」
良いモノなのは想像できるが……頭がついていかない!
頭が3つほしいぞ!!
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出来上がった世界線
https://kakuyomu.jp/works/16816927860630530111/episodes/16816927860631460440
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