【上洛】赤面するドラゴン
1553年十月中旬
摂津国堺
長尾景虎
(上洛してショックを受ける越後の龍)
ここ1カ月濃密な日々であった。
現在も日ノ本一二を争うと言われる商都、堺にいる。
この堺を実質的に取り仕切っていると噂されている今井宗久の納屋への道を歩いている。
先月は信濃の善光寺平で武田の軍勢と戦っていた。
……無様な戦いだった。
絶対に忘れぬ。
結果は痛み分けであろうが、この儂が落馬だと?
天下の物笑いの種だ!!
酒を飲んでいて乗馬が疎かになっていたとは誰にも言えぬ。
今後戦場では一切酒は飲まぬ。
折角の念願だった将軍家との拝謁も、下を向き顔が赤くなるのを抑えるので精一杯であった。足利義藤様は三好に京を追われ、山一つ越えた朽木谷に閉塞させられていた。そのせいであろうが、ぜひ上洛を果たせるよう東国を平定してくれとおっしゃって下さった。
儂は必ずや関東管領の上杉憲当様が、坂東の足利家鎌倉公方の補佐する大任を果たせるよう助力いたしたいと申し上げた。
感激した。
不覚にも落馬するような儂に
「未だ負けなしと
とおっしゃっていただき、坂東・甲斐・信濃にて逆賊を打ち払うようにとお言葉をいただいた。
よほど三好の暴虐に対し腹に据えかねているのであろう。
その対抗策として少しでも多くの大小名へ支援要請を送っているに違いないが、これで大義名分ができると共に、己が天下の乱れを正し在るべき様に戻していくという生き甲斐、死に甲斐を見い出せたと思った。
その後、拝謁の栄誉を賜った
上杉様・村上殿・高梨殿の旧領回復と共に武田・北条との戦に正当性が出来た。
奴らは朝敵だ。
撃ち滅ぼさねばならぬ。
しかし……
義藤殿もそうであったが、右府様(右大臣)、近衛晴嗣(後の前久)様に置かれても、1つ違いの親近感もあるのであろうが、大胡政賢殿の話を聞きたいとせがんで来られた。
「心涼やかなる」
「仁将」
「勇将」
「知将」
とお伝えしておいたが、もっと詳しくと問われ、騎馬による鉄砲隊の機動運用についてお話した。
鉄砲について話すときはまたもや赤面を堪えることになったが……
殊に右府様は鉄砲と焼酎
干し椎茸
歯ブラシ
石鹸
絹織物
と、様々な大胡特産の品について尋ねてきた。
相当に興味を持たれているのであろう。
儂が詳しくは存じ上げぬと申し上げたところ、非常に残念がられていた。
大胡は都でもこれほど有名になっているのかと驚いた。東国にいると全く分からなんだ。
「殿。納屋に着きましてござる」
供の小島貞興が声を掛けてきた。
いかぬ。
折角の堺遊覧にも関わらず、殆ど街並みを見ておらなんだ。宿までの帰路に確と見学せねば。
そう思い納屋の上がり
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何事も程々に……
https://kakuyomu.jp/works/16816927860630530111/episodes/16816927860636974373
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